1019話
3月3日はひな祭りであり、鷹羽雄太家の長女の美理愛の誕生日だ。
淡いピンクのワンピースを来て、髪をいつものツインテールにしてもらい梅野からもらったトマトの髪飾りを着けてご機嫌だった。
「美理愛は可愛いなぁ〜」
「本当、可愛いわ」
慎一郎と理保に猫っ可愛がりされ、野菜を切るオモチャをもらっていた。
「ジィ、バァ。アリカトゴライマス」
慎一郎は『仕事があるでしょう』と理保に言われるまで、美理愛とオモチャの包丁で切って遊んでいた。
雄太が俊洋を連れて悠助を幼稚園に迎えに行き、凱央が学校から帰って来てから、美理愛にプレゼントを渡した。
「パーティーは後日になっちゃうけど、プレゼントは今日渡すね」
雄太と春香からは美理愛と同じぐらいの大きさのウサギのぬいぐるみだ。
「オォ〜。ウタギタン、ウタギタン」
美理愛は目をキラキラと輝かせてフカフカのぬいぐるみに抱きついた。
「パー。マー。アリアト」
「美理愛はウサギさん好きだもんね」
「一緒に寝るんだもんな」
「アイ」
凱央達は可愛い妹をギュッと抱き締めた。
「みりあ。おたん生日、おめでとう」
「オメデトウ、ミリア」
「ミリア、オメデト〜」
大好きな三人のお兄ちゃん達にギュッと抱き締められ、美理愛はパヤッと笑う。
凱央は折り紙で作った花冠をかぶせてやり、悠助と俊洋は折り紙のチューリップの花束を手渡した。
「ニイタン、ユーニイタン、ヒヨニイタン。アリアト〜」
雄太は笑顔の兄妹の写真を撮ってやる。
(何か……感慨深いなぁ……。美理愛も大きくなって……)
しみじみとする雄太の顔を見て春香は口元を押さえてクスクスと笑っている。
「何……?」
「プッ。うふふ。何でもないよ」
春香が何を言いたいのか分かっているが、訊いてみたくなるのは人の常なのかも知れない。
「えっと……。皆ソファーの所に来て」
春香は子供達に声を掛けて、凱央の右に悠助、左に俊洋を座らせて、凱央の足の間に美理愛を座らせた。
雄太は春香の意図している事を察して、雄太はカメラを構えた。
春香は美理愛の髪を整えて雄太の隣に立った。
「ほら笑ってぇ〜」
「撮るぞぉ〜」
四人の笑顔をカメラに収めて雄太は胸がいっぱいになった。
(嬉しいな。俺と春香の子供達が四人揃って笑ってるなんてさ)
きっとこの写真は慎一郎達も直樹達も喜ぶだろうと思う。
(焼き増ししておこう)
雄太はニコニコと笑っている子供達の頭を順番に撫でた。
「さぁ、晩ご飯にしようね。手洗って来てね」
子供達は笑って洗面所に向かった。雄太はカメラをリビングボードに置いた。
「良い笑顔だったな」
「うん」
「さっさと雛人形片付けなきゃ駄目だよな」
雄太の言葉に春香が思いっきり吹き出した。
「何だよぉ〜」
「だ……だって……。雄太くん、お父さんと同じ事を言うんだもん」
春香は涙を流して笑っている。雄太は直樹なら言いそうだなと思った。
「お義父さんなら言うってのは想像出来まくるってか、今までも言ってたからなぁ〜」
「うん。この前、お買い物のついでに寄った時も仕事そっちのけで美理愛と俊洋を構ってたしね」
直樹は孫達を溺愛しているから、孫が来ると仕事をしなくなるのを里美は呆れ顔をしながらも許している。
直樹が孫達と遊びたいのが分かっているから、その間は春香が直樹の仕事を替わってやっているから、店には影響ないのが救いだ。
「その時に雛人形を一年中飾っておいてくれって言ってたんだよね」
「ははは……。本当に雛人形を遅くまで飾ってたら婚期が遅くなるなら飾ってて欲しい……」
モゴモゴと言う雄太を春香は見上げた。
「私は子供自身が幸せになるチャンスを見つけたら、迷わず背中を押すかな」
「え゙」
「雄太くんには、その時にお相手とかの見極めをして欲しいな」
「そうだな。親としての役目だもんな」
「うん」
上手く話を切り替えた春香に一瞬『上手く誤魔化された』と思いながら、いつか子供達の幸せな未来を応援する事になるんだなと思った。
(美理愛が結婚……。俺、泣くだろな……)
色々想像しながら美理愛の誕生日を祝った。




