1013話
1月も半ばになり、俊洋の部屋を造るにあたり雄太と春香は色々と準備をしていた。
雄太は仕事終わりに世話になっている業者から壁紙などのサンプル帳を借りて来た。リビングのソファーに座り春香と一緒に眺める。
「壁紙の色は何色が良いって言うだろね?」
「トウモロコシ色って言うかもな」
「そんな鮮やかな黄色ってあったっけ?」
春香はパラパラとサンプル帳を捲っていく。
子供部屋という事でカラフルなのもあるし、子供が喜びそうな柄物もある。
「とりあえず俊洋の希望を訊くか」
「そうだね」
雄太は二階で遊んでいる俊洋に声をかけにリビングを出た。
俊洋にリビングに来るように言ったのだが、凱央達も下りてきた。
「俊洋。俊洋の部屋の壁はどんなのが良いんだ? ここに見本があるから見てみてくれ」
「ン〜」
俊洋はサンプル帳を捲っていく。凱央達も興味津々で覗き込んでいる。
「パパ。ぼくの部屋のかべの色も変えてほしいんだけど。後、てんじょうも。良い?」
「ん? 凱央は、どんなのにしたいんだ?」
「んとね、てんじょうが青空が良いんだ。かべはね、ソーダバーみたいな水色が良い。ナオくんの部屋がそんな感じなんだ」
凱央が楽しそうに話す。仲良しの尚道の部屋のようにしたいと思っていたようだ。
「そうか。凱央が過ごしやすい部屋にしたいって言うんだからそうしよう」
「ありがとう、パパ」
雄太は嬉しそうに笑う凱央の頭を撫でた。
「パーパ。ボクモ、オソラガイイ」
「悠助もか?」
「ウン」
「壁は? 今のままで良いか?」
悠助は少し悩んで、チラリと俊洋が眺めているサンプル帳を見た。
「ア、トシヒロ」
「ナァニ、ユースケニイチャン」
「チョット、ソレミセテ」
悠助は俊洋の隣に座ってサンプル帳を覗き込んだ。
そこにあったのは、緑の草原に数本の木が立っている壁紙の写真だった。
「パーパ。ボク、コレガイイ」
「へぇ〜。草原に木か」
雄太は青空の天井に木の生えた草原の部屋を想像してみた。
「分かった。じゃあ、悠助の部屋も天井と壁紙を悠助の好きなようにしてもらおう」
「ワーイ。アリガトウ、パーパ」
雄太宅の二階は最初はワンフロアにしていて、子供が幼稚園に入る時に部屋として壁を作り個室にしていっている。
階段を登り切った所は子供達の遊び場になるようにしてあるし、まだフロアに空きスペースがあるから、施工が終わるまで凱央と悠助の荷物を置く場所に心配はない。
「パッパ」
「ん? 俊洋の好きなのはあったか?」
「ウン。ボクモ、オソラガイイ」
雄太は俊洋も空のような天井が良いと言うとは思っていなかった。
「そうか。じゃああ、天井は青空だな。壁はどんなのが良いんだ?」
「エットネ、コレガイイ」
俊洋が指差したのは、悠助が選んだ物より木が多く林のような雰囲気の壁紙の写真だ。
「分かった」
雄太は注文用紙にサラサラと書いていった。
「皆、青空が良いんだな」
「真っ青な空にわたがしみたいな雲がポコポコういてるのが好きなんだよ」
「夏の空か。パパも夏の真っ青な空にモコモコの入道雲っての好きだぞ。ただ、入道雲が湧いてきたら雷雨を警戒しなきゃならないけどな」
凱央にとって夏は尚道とのお庭キャンプのイメージが一番強いのだろう。
二人で並んで入道雲を眺めながらスイカに齧り付いたりした思い出が心に残っているようだ。
春香の部屋で昼寝をしていた美理愛が目をクシクシとしながらリビングにやってきた。
「マー」
「美理愛、起きたのね」
「ン」
美理愛はテッテッテとリビングテーブルに近づき、凱央の前に体を押し込もうとした。
凱央は小さく笑いながら、体を少し後ろにずらして美理愛を体とテーブルの間に入れてやった。
「ニーニ、コエキレェ〜」
「キレイだね。これはとしひろのへやになるんだよ」
「オヘヤナル?」
「そうだよ。みりあも大きくなったら、自分のおへや作るんだよ」
「ン。チュクル」
恐らく半分も意味は分かってはいたいだろうが、美理愛の部屋を作るのはあっという間だろうなと雄太は思っていた。




