第39章 悠助と俊洋の新生活 1010話
1999年1月1日(金曜日)
「ウオッ⁉ え? え? 何だ? 顎が、痛いんだけど……?」
雄太が目を開けると近くにあったのは美理愛の足の裏だった。
「み……み……美理愛……。女の子の蹴りとは思えない良い蹴りだな……。年に一度の確定の休みの日の目覚ましが愛娘の蹴りとか……」
雄太は蹴られた顎を撫でながら苦笑いを浮かべた。
春香と一緒のベッドで眠っていたはずの美理愛が、いつの間にか隣の雄太と俊洋のベッドに移って来ていたのだ。
しかも、上下逆さま状態だ。
(目を覚ました時に春香がいなくてこっちのベッドに来て二度寝してたのかな)
雄太は美理愛の脹ら脛を指でつまんでフニフニとしてみた。
(良い筋肉ついてるんだよな。手押し車とか三輪車で暴走したりしてるのって筋トレになってるんだな)
雄太は起き上がり、美理愛の上下を戻してから部屋を出るとキッチンで春香が雑煮の準備をしていた。
「春香、良い匂いだな」
「あ、雄太くん。おめでとう」
「ははは。二回目のおめでとうだな」
「うん」
雄太はキッチンから漂う白味噌の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
「普段の味噌汁の香りと違って感じるのは正月だからかな?」
「そうかも」
春香はニコニコと笑顔を浮かべていた。
「とりあえず顔洗ってくるよ」
「うん」
雄太が洗面所へ向かうと二階から凱央と悠助が下りて来た。
「あ、パパ。明けましておめでとう」
「パーパ、オメデトウ」
「お、二人共起きたか。おめでとう」
三人で並んで洗面台に向かっていると、雄太は凱央の頭が近くなったなと思った。
(ん〜。凱央も大きくなったよなぁ〜)
雄太は騎手としては背が高いほうだが、それでも年々凱央の背が伸びてきた事を感じた。
朝食の雑煮や洋風御節を食べてから、雄太はジャケットとスラックに着替えた。
春香はシンプルなワンピース、子供達はお揃いのスポーツブランドのオフホワイトのトレーナーに着替えた。
「美理愛。髪結ぶよ」
「アイ、マー」
美理愛は春香の前にちょこんと座り、ツインテールに結んでもらいお気に入りのトマト色のボンボンをつけてもらった。
「マー。コレチガウ」
「ん? 今日はトマト色のじゃないの?」
「ン」
どうやらボンボンの色はその日の気分らしく、春香はボンボンの入った籠を美理愛の前に差し出した。
「今日はどの色が良い?」
「ン〜。コエ」
美理愛が迷ってから手にしたのは淡いピンクのボンボンだ。
「はいはい。じゃあ、これにするね」
「アイ」
その姿を見ていた雄太は小さくても女の子なんだなぁ〜と感心していた。
美理愛のボンボンは高い物ではない。理保や里美がおもに100円ショップで買った物だ。
美理愛をツインテールにしたいというのは理保と里美の意見が一致していて、お互いが買った色を電話で伝えあっていると聞いた時は雄太も春香も驚きつつ笑ってしまった。
「はい。可愛く出来ました」
「マー。アリアト」
美理愛のヘアセットが終わるのを待って、慎一郎宅へと向かった。
「父さん、母さん。明けましておめでとう」
「明けましておめでとうございます」
雄太と春香が挨拶をすると、子供達も順番に挨拶をする。
「ジィジ、バァバ。明けましておめでとうございます」
「アケマシテオメデトウゴザイマス」
「オメデトウゴザイマス」
「オメレトゴライマチュ」
慎一郎も理保も目尻を下げまくりながら可愛い孫達の挨拶を見ている。
慎一郎が順番に頭を撫でながらお年玉を手渡していくと、凱央達は礼を述べてから春香のエプロンのポケットに預けていった。
その時、インターホンが鳴り正月の挨拶に来客が訪れたようだ。
雄太と慎一郎が応接間に向かい、春香が玄関に向かった。
「バァバ。ぼく、おてつだいするからね」
「あら。凱央、お手伝いしてくれるのね。お願いするわ」
「ボクモ、オテツダイスルネ」
「バァバ。ボクモスルヨ」
「悠助も俊洋もお手伝いしてくれるのね。ありがとう」
正月早々、お手伝いを申し出てくれる三兄弟に理保は満面の笑みを浮かべた。




