1008話
12月26日(月曜日)
毎年恒例の凱央と純也の誕生日、クリスマス会と忘年会が雄太宅のリビングで開催されていた。
「凱央、純也誕生日おめでとう」
「メリークリスマスぅ〜」
「一年間、お疲れっす〜」
雄太と梅野と純也が順に乾杯の音頭を取る。
春香と子供達はオレンジジュースの入ったグラスを上げてニッコリと笑った。
「ありがとう」
「ありがとうっす」
誕生日の凱央と純也は礼を述べた後、二人でグラスを合わせた。
「じゅんや兄ちゃん、たんじょう日おめでとう」
「凱央、誕生日おめでとう」
23日が誕生日の凱央と22日に誕生日の純也のケーキは二人のリクエストを合わせてフルーツがたくさん乗ったレアチーズケーキだ。
チョコプレートは凱央の分と純也の分があり、そして『メリークリスマス』のプレートが乗っている。
「ケーキは後からだぞ」
雄太の言葉に悠助達は目をキラキラさせながらも深く頷き、食事を始めた。
「マーマ。コノハンバーグオイシイヨ」
「チーズハイッテル〜」
「マー、オーチーネ。オタワリ〜」
春香は子供達の『美味しい』の言葉にニコニコと笑っていて、パクパクと食べる子供達の皿におかわりを入れてやっている。
雄太達も春香が早朝から腕によりをかけて作ったご馳走を口にしている。
「春さんの料理って年々レベルアップしてるよな」
「あ〜。俺もそう思うぜぇ〜」
純也も梅野も満足気に食べている。雄太は春香と子供達をチラリと見た後に、純也と梅野にニヤリと笑った。
「俺、春香と結婚して良かったなってつくづく思うんだよな」
「あぁ〜。俺はつくづく羨ましいって思うぞ」
「俺もだなぁ〜」
雄太が言っているのは料理の事だけではない。
メイゲイルの事はかなり雄太には堪えていた。だが、春香は雄太の気持ちを察してくれて温かく見守ってくれていた。
共にメイゲイルを思い、ただ寄り添ってくれた事に感謝していたのだ。
「『ゲイルにありがとうって言わなきゃ
』って言ってくれて、正直泣きそうになったよ」
「春香さん、本当に騎手の妻になるべくしてなったって感じだよなぁ〜」
「俺も、春さんみたいな嫁さんが欲しい。マジで」
純也はまだ『この女性なら』と思える恋人と出会えていないと愚痴っている。
先輩達からは『焦るとロクでもない女しかあたらないぞ』と言われたと言っていた。
「梅野さんより早く結婚するんだって思ってるんだけどな」
「純也より後でも俺は気にしないぞぉ〜」
梅野にニマニマと笑ったが、雄太がグイッと身を乗り出した。
「うちの美理愛は駄目ですからね?」
「俺は何も言ってないじゃないかぁ〜」
「目が言ってました」
雄太と梅野のじゃれ合いに純也はゲラゲラと笑った。
「梅野さん、懲りないっすね」
「俺は真剣なんだぞぉ〜」
「年の差考えたら無理っすよ」
「ヒデェ〜」
実際、美理愛は梅野にも懐いてはいるが、『優しいおじさん』としか思われていないのではないかと皆が言う。
「とは思うけど、実際にマイスイートエンジェルから『おじちゃん』って言われたら、俺……泣くかもぉ……」
「『まさきおじちゃん』って?」
「うぉ〜っ! 純也、やめろぉ〜」
純也が突如として可愛い女の子っぽい声で言うと梅野は床に突っ伏した。
驚いたのは雄太だ。ヤンチャな見た目の純也からあり得ないぐらいの可愛い声だったからだ。
「ソル。よくそんな女の子っぽい声出せるな?」
「この前、健人とカラオケ行った時に女の子の歌手の真似しようとしてやってみたら、意外と女の子の声出せたんだよな」
純也はコホンと咳払いをした。
「私、塩崎純子」
「じゅんや兄ちゃん、女の子みたい〜」
純也の声に気づいた凱央は目を丸くしながら手を叩いて喜んでいる。凱央に褒められた純也はニヤリと笑うと、床に突っ伏している梅野にスススと近寄った。
そして耳元に口を寄せて、背中に手を乗せた。
「梅野さん。今度、一緒にお食事でも」
「の゙ぉ〜。やめてくれぇ〜。脳が……脳がバグるぅ〜」
雄太は我慢出来ずに腹を抱えて笑い転げていた。




