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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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1007/1043

991話


 10月11日(日曜日)


 東京競馬場 11R 第49回毎日王冠G2 15:40発走 芝1800m


「なぁ、雄太」

「ん? なんだよ、ソル」

「ゲイル、調子良さそうだな」

「ああ。バッチリだ」


 騎手控室で雄太と純也は並んでパドックを周回している馬を見ながら話している。


「やっぱ、逃げるんだろ?」

「まぁな。ゲイルが一番気持ち良く走れるからな」

「スゲェ馬だよ。あれだけ走ってスタミナが途切れねぇんだから」

「俺もそう思ってる」


 逃げ馬は他にも多くいるが、メイゲイルのようにスタミナがあり速度が持続する馬は多くない。


「良い馬と巡り合ったよな」

「ああ」


 雄太と純也はそう言った後、またパドックを見詰めた。




「ア、マーマ。ゲイルダヨ」


 悠助はパドックが映ると大はしゃぎだ。


 テレビでパドックが映り解説がされると、黄緑色と白のポンポンをギュッと握り締めながら悠助を見詰める。


「ゲイル、艶々してて綺麗だね」

「ウン」


 中継の合間にレース結果が流れ、雄太は残念ながら一勝もなく、純也が三勝と絶好調だと伝えてられていた。


(塩崎さん、凄いな)


 いつもにこやかで子供達と遊んでくれる純也が頑張って勝ち鞍を上げている事も春香には嬉しい事だ。




 騎乗号令がかかり、雄太と純也は並んでパドックへ出た。


「ゲイル。良い天気だし、お前も絶好調だよな」


 パドックで雄太はメイゲイルに話しかけた。メイゲイルは凛とした顔で雄太を見た。


 馬房で悠助に甘えている姿とは違って、ヤル気に満ち溢れている。


 雄太は首筋を撫でてからメイゲイルの背中に跨った。




「ア、ゲイルダァ〜。ゲイル、ゲイル。ガンバレ、ゲイル〜」


 悠助は定番となった白と黄緑色のポンポンを振って、パドックを周回しているメイゲイルに声援を送っていた。


(悠助……。パパも応援してあげて)


 悠助の後ろ姿を見詰めながら、春香は苦笑いを浮かべている。


「パパ〜。ゲイル〜。がんばれ、がんばれ〜」

「パッパ、ゲイル〜」

「パー、デイユ〜」


 凱央達の応援の声とポンポンのシャカシャカ音がリビングに広がる。


(頑張ってね、雄太くん。頑張ってね、ゲイル。無事に帰ってきてね)


 春香はキリリとした顔の雄太とメイゲイルの無事を祈っていた。




 出走する九頭の馬達が順番にゲートに入っていく。


 メイゲイルは圧倒的な一番人気で最終オッズは1.4倍。そして、一緒にレースに出ている純也は三番人気だ。


 出走馬が少ない事もあってゲート入りは短時間で済み、馬が落ち着いたタイミングでゲートが開いた。


 メイゲイルはスッと先頭に立ち、そのまま後ろを気にする事なく駆けていく。純也はその後をピタリとつけた。




(塩崎さん、雄太くんをマークするんだ。塩崎さんの馬も強いもんね)


 ゲートが開いた瞬間から、悠助のテンションは一気に上がっている。


「ゲイル〜。ゲイル〜」


 メイゲイルのリードはいつもより控え目だ。グングン行っている感じはしない。きっと雄太と江川との間で作戦が練られたのだろうと春香は思った。


 向こう正面を過ぎてから、メイゲイルは後続馬に追いつかれてきた。


「ゲイルっ! ガンバレっ!」


 悠助が目一杯声援を送る。


「パパっ! ゲイルっ!」

「パッパァ〜っ!」

「パー、パー」

「雄太くんっ! ゲイルっ! 負けないでっ!」


 春香と凱央達も懸命に応援をする。


 ふと春香は雄太が鞭を使っていない事に気がついた。


(あれ……? もしかして……余裕があるの……?)


 画面の中、メイゲイルは追いつかれた事が嘘のようにグングンと後続馬との差を広げていた。


 先頭のメイゲイルと二番手を追走している純也の騎乗馬だけが映る。


 競馬場を揺らすように大歓声が上がる。


 メイゲイルは二馬身以上の差をつけて堂々とゴール板を駆け抜けた。


「カッタァ〜! ゲイルガイチバン〜」


 悠助はポンポンを持った両腕を高く上げてピョンピョンとジャンプをしていた。


 凱央達もキャッキャと喜び、春香も雄太とメイゲイルの勝利を心から喜んでいた。







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