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邂逅列車  作者: MITT
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邂逅列車⑮

「……まったく、お前もよくやるよな。……確かに、俺の車相模ナンバーだから、平塚あたりで裏道ウロウロしてても怪しまれないだろうし、俺はお前と違って、警察にマークなんてされてないしな」


「そんな所。つか、公麿ちゃんにも期待してんのよ? お前、なんか加護持ちらしいからな」


「らしいねぇ……俺、全然自覚ないんだけど」


 まぁ、そう言う事。

 なお、コイツと一緒に心霊スポットめぐりなんかもやったけど、ものの見事に外ればかり。


 あのスーパー心霊スポットの旭興荘ですらも、コイツが来たら、大人しくなってたらしい。

 灰峰姉さんいわく、地味に最強……そんな風に評すほどのあっち側からしたら歩く爆弾ってところなんだとか。


「だろうね。まぁ、とにかく助かったよ。しっかし、こんな話……良く信じてくれたよ」


「俺も、灰峰姉さんの高校以来のダチだからな……。訳の解らん現象のひとつやふたつ、垣間見た経験くらいはあるからな。けど、ホントに行くだけでなんとかなるのかね」


「そこら辺は賭けだけどね。まったく、警察が付き纏ってたから、まともに身動きも取れなかったからな。道とか大丈夫かい? ちなみに俺は盛大に迷ってタイムオーバーになった」


「そこら辺は、任せとけ……ちゃんと道は頭に入れてきたし、目的地も一回行ってるからな。まぁ、お前も思いっきり容疑者扱いなんだから、さっさと乗ってくれ。ここはうちの土地だが、長居は無用だと思うぞ……念の為に後ろにでも乗っとけよ」


「だな……。まったく、犯人なんて始めから居ないんだから、思いっきり見当違いなのに……。邪魔しかしないって、どう言う事? 俺、神奈川県警嫌いになりそうだわ」


「俺も嫌いだから、安心しろ。まったく、町田の警察はのんびりしてるのに……なんで、県警はこうもギスギスしてるんだかね」


 ちなみに、コイツは交番の前でタバコの投げ捨てやって、警官にカンチョー食らった挙げ句に説教されたと言う恥ずかしい前科がある……。


 公麿の愛車はVWゴルフ。

 何気にコイツ、外車乗りだったりする。

 

 ドイツ車は高速道路で真価を発揮するとか言う話で、運転させてもらった感じだと、パワーもなくてもっさりしてるんだけど、なんかやたらカッチリしてるって印象だった。

 

 いつぞやかは、代車と称して、ジャガーなんぞに乗ってきたこともあったけど、雨漏りする年代物の代物で、助手席乗ったらエライ目にあった。


 ……運転は公麿に任せて、俺は周囲を警戒しつつ、一路寒川へ……。


 新幹線の高架下を抜けて、しばらく走って左方向。

 公麿も迷いなく現地へと進んでいく。


 下見までやってたってのは、凝り性の公麿らしいっちゃらしい。


「……そろそろのはずだ。と言うか、霧が凄いな……相模川が近いとは言え、なんだこれ?」


 住宅街の外れ……道を挟んで向かいは、工場地帯になっていて、夜間ともなると人気もなく静かだった。

 

 ……そんな中に、なにもなく細長い公園のような施設があった。

 付近には、照明も少なく薄暗い。

 

 公園に一応照明があるのだけど、やけに薄暗い。

 辺りにももやがかかっていて、なんとも幻想的な雰囲気を醸し出していた。


 歩夢もここに来れば、会えると太鼓判を押していた。

 アイツが言うには、予知夢見たとか何とか言ってたけど……。

 

 ……俺もある種の確信があった。


「ああ、ここだな。この八角広場にかつて西寒川駅があったらしい……。とりあえず、降りてみようぜ」


 公麿がゴルフのエンジンを切ると静寂に包まれる……。

 目を閉じると微かにキキーッと言う電車のブレーキ音のようなものが遠くから聞こえてきたような気がした。


「……おい、今。なんか聞こえたぞ」


 少なくとも、この近くに電車なんて走ってない。

 ここにあるのは、とっくに役目を終えた過去の残滓に過ぎないのだけど……。


「静かに……それとまだ動くなよ。多分、当たりだと思うが……」


「俺達も何かしないといけないんじゃないのか? 具体的には何すりゃいいんだ?」


「……多分、何もしなくていい……ほら、見てみろ」


 霧に包まれた薄暗い公園に微かに人影が見えたと思ったら、それがゆっくりと近づいてくる。

 ショートカットに黒のトレンチコートの見慣れた姿。


「……やぁ、出迎えご苦労……っと、公麿じゃないか。お前まで来たんだ……お久しぶり」


「よぉ、灰峰姉さん。ご無沙汰……つか、二週間も行方不明になってたんだ。心配くらいさせろよ」


 公麿の言葉に、姉さんがぎょっとしたような表情を見せる。


「マジ? 向こうに居た時間なんて、半日程度だったんだがなぁ……。いやはや、寒川駅までは辿り着いたんだけど、西寒川行きってのが来なくてね……。色々と大変だった」


「まぁ、立ち話も何だし……あと、ちょっといい?」


 言いながら、姉さんの肩とか腕をポンポンと叩く。

 うん、ちゃんと実体もあるな。


「……問題なさそうだね。じゃあ、ひとまずファミレスでも行くか……ジョナサンあったろ、途中に」


「そうするか……。つか、俺……何もしなかったんだが。ちょっと今回は、期待してたんだがな。つか、姉御……どこにいたんだ? 霧の中からいきなり出てきたように見えたんだが」


「私から見たら、古臭い無人駅で降りて、霧の中に入ったら、君等が居た……そんな感じだったんだがね……。まぁ、こう言うのは初めてでもないし、その様子だとなんだか、こっちでは大騒ぎになってたみたいだね。と言うか、てっきり見延くんが一人だとばかり思ってたよ」


「俺がむしろ、勝手に首突っ込んだんだよ……。つか、姉御のせいでコイツ、警察に張り込まれたりとかしてたからな。だから、俺の所に来たようにみせかけて、俺が乗せて来てやったんだよ。けど、本気で来て帰るだけだったとはなぁ……納得行かねぇな」


「ははっ、公麿……お前は多分、この先未来永劫、向こう側とは縁がないと思うよ」


「またそれかよ……。俺からしたら、どこ行こうが何しようが、全部外れなんだぜ? 見延や姉御の話聞いてる分には、さすがに俺も信じざるを得ないんだがね……。俺自身は徹底して何もねぇからな」


「俺も似たようなもんだ……。つか、こんな住宅街でダベってたら、またぞろ通報とかされるぞ。それとタバコ投げ捨てもするんじゃないぞ」


「だねぇ……また、カンチョーとお説教セットで食らうっちゃうよ?」


「はははっ! あれは勘弁してほしかったよ……」


 そんな風に気楽な調子で話していると、唐突にキューなんて音がして、姉さんがお腹を押さえる。


「……今頃になって、やたらとお腹が空いてきたよ。喉もカラカラだ……。どうせ行くんだったら、ジョナサンよりも、ガストとかドリンクバーとかある所が良いな。アンバサをがぶ飲みしたい気分だ」


「まぁ、話は色々あるけど、とりあえず乗った乗った!」


 かくして、姉さんと無事に合流して、俺達は帰路についた。

 姉さんのリクエスト通り、ガストに寄って、軽い夜食。


「……うわぁ、本当にこっちでは二週間も経ってたのか。ヤバいな……それ。なんて、言い訳すりゃいいかなぁ?」


「うん、姉さんとこの親が捜索願とか出しちゃったから、大騒ぎになってたよ。俺は一番最後に接触したって事で、重要参考人と称する容疑者扱いで、県警の刑事に見張られるとか面倒なことになってたよ」


「……ほんっとうにすまないっ! まさか、今も尾行とかされてないだろうね? と言うか、神奈川県警なのに町田まで出張ってたのか……よく問題起きなかったね」


「まぁ、そこはそれ。市民病院の近くに夜な夜な不審車両が止まってるって、110番通報してやったんだ。町田警察と揉めてたみたいだから、今日は張り込みどころじゃなくなってたみたいでな。まんまと出し抜いてやったぜ」


「……おまけに、わざわざ車を変える周到さか。君、やってることは犯罪者と変わんないよね」


「別に法に触れるような犯罪はやってないからなぁ……。ダチのとこに行って、車乗り換えて、深夜ドライブ行ってたってだけだしな……まぁ、助かった」


「なにせ、俺んとこまで警察来たからなぁ……。まったく、なんかあったら、遠慮なく巻き込めって言ってたのに。水臭い奴らだな……で、結局何がどうなって戻ってこれたんだ? 俺は半信半疑だが、二週間も消えてて、ひょっこり戻ってくるとか……説明くらいしてもらわないと訳が判らんぞ」


「異世界行って戻ってきた。一言で言えば、そんなところだよ。と言うか、今回のは不親切もいい所だったよ。見延くんのヒントがなかったら、普通に詰んでたよ」


「やれやれ……今回のは、極めつけって感じだったけど。そういや、これまだ言ってなかったな」


「ん? なんだい? 苦情なら謹んで受けよう……」


「いや、おかえり。姉さんの無事を祝って……乾杯」


「そうだな。まぁ、お疲れさんってとこかな」


「ははっ、そういやただいまって言ってなかったね。平凡な日常に……乾杯っ!」


 まぁ、このあと……。

 色々と警察に事情に聞かれたりと、一悶着あったのだけど。

 

 それは大した話じゃない。


 それに……この相模線の怪異も解決したんだか、解決してないんだか良く解らない。

 俺もそもそも、相模線なんて使わないから、その後も似たような事件が起きたかとかも解らない。


 昔だったら、その後の調査とかやってたかもしれないけど。

 あまり意味もなさそうだったから、さっさと忘れるようにした。


 この騒ぎがきっかけで、アーミーこと芝田歩夢と言う北海道の知り合いと縁が出来て、後日そっちのせいで、妙なトラブルに巻き込まれたりもするのだけど、それはまぁ……別の話だ。


 今宵の話はここまで。

 

 それでは、皆様また……気が向いたら、筆を取るとしよう。


 御機嫌宜しく候。

読了お疲れさまでした。


この作品、運営のヘマで準備期間がほとんどなくて、

プロット組んで、資料揃えて、元ネタなしで作ってみたものの……出来としては、微妙な感じです。


次回作は、もうちょっと頑張りたいですね。(笑)

それでは、これにて完結……御機嫌よう。

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