表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りの中年冒険者、日本に戻ってもやる事が変わらない  作者: くまき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/19

第6話

 無事、冒険者免許を取得したサイは、新宿タワーにやってきた。

 改めて新宿タワーを眺めると、タワーの周囲は大きな壁に囲まれていて、更に塔を囲うようにネットがひろげられている。


 講習で学んだことだ。

 壁はモンスターが溢れた場合の防壁であり、ネットはタワーから落下時の衝撃吸収用として作られたものらしい。

 この防壁にくっつくように冒険者ギルドは建てられている。

 緊急時、即座にギルドの担当者が動ける仕組みがあるらしい。

 また、その防壁の一部が新宿タワーに入るための受付として開放されている。


 新宿タワーに入る冒険者たちが、冒険者ギルドで最初にやることは着替えだ。

 銃刀法違反全開の武器にゴツい鎧なんかを着て、新宿タワーへ電車で通勤というわけにはいかない。

 ギルド内にある大きな更衣室で着替えることになるのだ。


 ちなみに着替えた私服は自分で所持する事になる。

 更衣室と銘打たれているがロッカーはないのだ。だだっぴろい空間に机が配置され、ロッカーの代わりに洗面台や銭湯がついているという風変わりな更衣室だ。


 何千という冒険者が新宿タワーにいるのだ。

 ロッカーを配置していたらキリがない。

 戦闘で汗と血に汚れたまま私服を着るわけにもいかない。

 そういった要望を受け、今のような形式になったのだろう。

 とはいえ、中には私服の上に防具を着けるだけの冒険者もいるようだ。


 若い冒険者が着てきた私服の上から胸当てだけつけて、新宿タワーに向かう姿を見て、サイはギョッとした。サイからすると汚れた時にどうするんだという思いに駆られるが、気にしてもキリがない。


 サイにとって初めての新宿タワー攻略であるが、サイはベテランの冒険者だ。

 異世界で使っていた高性能な武器と防具を所有している。


 が、これらはしばらく封印する事に決めた。

 異世界産の防具は悪目立ちする可能性がある。向こうの世界でも高性能と評される防具を着て、初心者の多い一、二階層あたりで戦っていたら確実に目立つだろう。


 そんなわけで日本製の防具を購入する事にした。

 タワーに現れるモンスターの革で作られたレザーアーマーに、ごく普通の鋼で作られた胸当て。

 冒険者の防具として、また初心者の装備としてナシではない。それでも少々お高い値段だったから初心者のくせに豪勢だと思われるかもしれない。だが、サイからすると、異世界で使用していた防具が仮に防御力五百だとして、今回購入したレザーアーマーは防御力十にも満たない印象である。


 耐性が何も付与されていないのだ。

 亜竜のブレス一発で、燃え尽きてしまうのではないだろうか。

 そんな風に考えてしまう。


 代わりにアクセサリー類は充実させる事にする。

 各種耐性を向上させる腕輪に、矢避けのネックレス、魔力によるシールド展開をサポートする指輪。

 ベルトも筋力向上系のベルトにしている。

 これなら周囲にバレないだろう。

 

 武器は迷ったが徒手でいく事にした。

 サイはブン殴る事が得意なのだ。

 そのため盾も外した。殴る時に不便だからだ。


 一応、こちらの冒険者ギルドで購入した安いショートソードも腰につけるようにした。これは周りへの配慮からだ。

 ある種のドレスコードのようなもので、何も武器を持たずダンジョンアタックするような初心者がいたら、サイだったら確実にツッコミを入れる。

 ダンジョンしかり、レストランしかり、相応の恰好をしなければ窘められる。

 それが世の中というものだ。


 一通り準備を終え、新宿タワーの入場口に向かう。

 受付のカウンターに冒険者免許をかざす。

 電車の自動改札のようなものだ。

 更に受付にいる係員にも冒険者免許を見せる。

 二重でチェックする事で、不正防止をしているのだとか。

 また装備が危ない場合は、この受付で指摘を受けるらしい。


 そんな入場口から少し歩いて、新宿タワーへ向かう道すがら。

「あれ、講習にいたおっさんだよな」

 ふと声のした方を見ると、先日の初心者講習で一緒だった若者たちがいた。

「えっと、ひとりで行くんすか?」

「うん。今日は様子見だからね」

「気をつけろよ~」

「ああ。お互いケガのないように」

 気軽に声をかけられた事に、少し嬉しく思う。

 若者からフレンドリーに声をかけられると少し嬉しいおっさん(四十代)である。

 

 塔と防壁の間、快晴の空が見える。

「ふふ。さあ行こうか」


 異世界帰りの冒険者サイが、日本のダンジョンこと新宿タワーに入っていった。



 新宿タワー 一階層。

 ありふれた石材の壁で囲われ、講習で曰く一階層には大ネズミやプチゴブリンなどが出てくる。だいたいどの階層も八~十種類のモンスターがいるらしい。

 異世界でもさんざ見たようなオーソドックスなダンジョンだ。

 どんな細工なのか、電灯もろうそくの火もないのに明るい。

 石材自体が、かすかな光源になっていた。

 そんなところを確認しつつ、入ってすぐにある一階層の大広間に向かう。

 冒険者のパーティーたちが作戦会議なのか、アレコレと話しあっていたりして、かなりの混雑だった。

 

 トコトコと何も気負いなく大広間を抜け歩いていく。

 道すがらモンスターを見かけるが、総じて初心者のパーティーが戦っている状況だ。戦闘で道が塞がっている場合は倒すのを見てから、横を通りすぎる。


 新宿タワーが発現した最初期に制圧されたというだけあって、共有されたマップどおりの道であったし、特に見るべきもなく、宝箱があるという部屋も気にせず二階層へ向かう。


 二階層もなかなか盛況で、一階層と同じぐらいの人の数がいるようだった。

 こちらも共有されたマップを確認しつつ進んでいく。

 ジャイアントラットやダンジョンウサギはブン殴って倒していった。


 ここでサイはひとつ疑問点が浮かんだ。

 異世界にいるモンスターと、新宿タワーにいるモンスターが同種に見えたのだ。

 ダンジョンウサギの毛の模様が異世界のダンジョンウサギと同一だったのだ。

 これまで見た冒険者の配信でたくさんのモンスターを見てきたが、いずれもサイが異世界で見たモンスターと同じだった。


 仮定の話だが、どの世界でもモンスターの進化というのは同じなのかもしれない。

 地球の神話上の存在であるキマイラが、なぜか異世界にもキマイラとして存在したし、何がしかの因果関係があるのかもしれない。

 

 ただ、大きく違う点がある。

 モンスターを倒した後の話だ。

 新宿タワーでは、モンスターが倒された後、しばらくしたら消失する。


 この際にモンスターは魔石という小さな石を落とす。

 魔石は魔力の塊だから、モンスターなら確実に体内に宿しているものだ。

 それと一緒に敵によっては、確率で他のものも一緒に落とすらしい。


 なんだかゲーム的で、サイからすると気持ち悪い感じだ。

 なぜなら異世界ではモンスターの死骸は処理が必須だからだ。


 例えばゴブリンの巣穴があって、ゴブリンを全て倒したとしよう。

 そうした場合、何十ともあるゴブリンの死体を巣穴から外に出して、地面に穴を掘ってそこでゴブリンたちを焼くのだ。

 焼き終わったら、洗浄用の魔法かアイテムを使って土を埋める。

 面倒な作業だが、死体を野放しにしておくと病気が蔓延したり、他のモンスターの食事になったりするから必須の作業であり、怠らないよう規則まで存在している。


 だが、この新宿タワーではそういった死体処理の苦労がないのだ。

 ありがたい話かもしれないが、それは利用価値の低いモンスターに対してだけだ。

 

 マズいのは冒険者の大きな収入源となる大型モンスターの死体も消失してしまう事だ。肉はまあいいとしても、角に牙、皮に骨とさまざまな部位が強力な武器や防具の素材になる。内臓の一部がポーションなどの材料になる場合もある。

 結果、大型モンスターを一匹倒すだけでも、良い収入源となるため、異世界の冒険者たちは奮闘するのだが、新宿タワーでは頑張って倒しても丸々一匹分の素材を入手する事が叶わないのだ。


 異世界であれば、かなり勿体ない状況だ。

 どの部位がどれぐらいドロップされるのか。

 塔を攻略する上で、その辺りも確認が必要だろう。


 そんな事を考えていたら、三階層へ向かう階段が見つかった。

 気づけば、サイはパンチとキックのみで二階層も踏破していた。



お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ