幕間 インタビューのボイスデータより②
「話は聞いてるよ。今日はよろしくね」
「ちょっとひより。インタビュアーさんの様子が……」
「澪ちゃん。それ私のせい。気にしないでインタビュアーさん。今日は『一条の姫』に話じゃなくて、せんせについての話でしょ。……うん。《《あっち》》の話はもちろんNG。その関係の話は、政府の人かうちのパパか爺様に聞いて」
「そういえば、今日のインタビューって……」
「そ。こないだの魔人……《《あっち》》関係のお礼。インタビュアーさんに、いろいろ火消しの手伝いしてもらったからね。そのお礼みたいなもん」
「なるほど。そうだったんですね。……先生の話ですよね。はい。弟子になった経緯は……ああ、ご存知でしたか。そうですよね。『Tower Tube』を見ていたらわかると思います。助けていただいた事がキッカケです。知りたいのは、私達から見た先生の印象ですか」
「せんせについてか~。何を聞きたいかわからないからなんだけど……えっと~、せんせって私たちの事エッチな目で見ないっていうか~。ほら、男子って、す~ぐ胸元に目がいくっていうか~。でも、せんせってケダモノにならないし~、紳士だし~」
「…………」
「…………」
「続きは?」
「なしで。せんせに失礼だわ」
「……少しはそういう目で見てほしい気もしますが」
「え?」
「なんでもありません」
「澪ちゃん、そーいうコト言うなら照れるのはナシだよ……」
「せ、先生について話しましょう! 先生は本当にすごいです。ソロで新宿タワーを十七階層まで行った人なんて、これまでいませんでしたし」
「先生以外だと、これまでのソロ記録って、十四階層だったけ?」
「そうですね。先生はそれを塗り替えました。今も記録更新中です」
「せんせの印象についてかぁ……。うーん、私からすると両親とか家族以外で初めて先生って呼べる人に出会えた感じかな」
「ひよりがそれ言うんですね……。私以上にたくさんの人に鍛えてもらってるのに」
「そうなんだけどね。たくさん鍛えてもらったし、その点は本当に感謝しかないんだけど、なんていうのかな……立場的な話なんだけど、一番鍛えたい部分って魔法に関連する部分なのね。聖属性浄化系の。だけど、そこを鍛えてくれたり教えてくれる人はいなかったから……」
「ああ、それはわかります。私も日常生活の中で魔力を鍛えられるって言われて、すごく嬉しかったです」
「それと、講習とかでもそうだけど、大体がさ『その先が知りたいのに教えてもらえない』って感じだったんだよ。魔法もそうだけどさ、戦い方もそうだし、ダンジョンの歩き方とか細かいノウハウを教えてくれる人がいなかったから」
「以前、ひよりボヤいてましたね」
「うん。本当はさ、講習の説明どおり、もっと人を集めて六人ぐらいのパーティーを作ることなんだけど。職業上、パーティーって作りづらいからね。澪ちゃんに会えなかったら、ソロで新宿タワーに立ち向かう事になってたと思うよ」
「あっちの仕事を考えたら、組みづらいですよね」
「うん。私たちにとって新宿タワーは力をつけるための場所だし。とはいえ、同じ目線、同じレベルで組める人って、どこにもいなかったし。だからって言ったらなんだけど、澪ちゃんが八階層で落とし穴に落ちた時、本当に焦ったよ……」
「あの時は仕方ありません。でも、おかげで先生に出会えましたし。私たちも強くなれました」
「そうそう。インタビュアーさん、せんせが大学の人に魔法とか冒険者について教えてる動画、見たんだよね? ……そそ。分かってるかもしれないけど、言うね。四十代で、現役冒険者で教師もできるって、すんごいやんばいんよ」
「そうなんですか?」
「澪ちゃんが驚くんだ。例えば、格闘家とかスポーツ選手でさ、四十代で現役の選手ってほとんどいないんだよ。『いない』とは言わないけど、多くの人は一線を退くんだよ。大体は、コーチとかサポート側にまわる。軍隊でも四十代って言ったら、前線には立たず指揮にまわるのが一般的だと思う。冒険者でも四十代で現役の人は、『上』を目指さない。十五階層まで行っていた人でも、肉体の限界を感じて十階層、五階層って落とすものなんだよ」
「ああ、そういえば中年の方は低い階層に多い印象ですね」
「そそ。私が調べた限り四十代の冒険者で、今も『上』を目指してるのは、せんせぐらいだよ」
「……そう考えると、私たちの先生は本当にすごいんですね」
「もちろんせんせが自分の実力を測って、まだ行けるって判断した結果なんだけど」
「そうですね……。配信を見てると、まだ実力を出し切ってない予感がします」
「多分だけど本当に出してない。余裕ありすぎだもん……ん、インタビュアーさん。なんと? そうそう。少なくとも私にはそう見える。《《実力はまだ全然見せてない》》。メイジキマイラをさ、単騎で倒すってぶっちゃけありえないでしょ。理屈は聞いてるよ? ブレスにおける射線の取り方とか、多方向から中距離攻撃を受けそうな時の対処法とか」
「ありましたね……。頭が複数あってもブレスを放つための器官はひとつしかない。魔法は同時発射できても連発できない。連発する場合は威力が弱い魔法ばかり。相手の視界を如何に化かすかを考えろ、でしたっけ……」
「そそ。その話を聞いて、せんせがどれだけ戦い慣れてるのか驚いちゃったもん」
「そうですね。先生には驚かされっぱなしです」
「あと、大学生向けの動画でも話してたけど、魔力強化のレクチャーで、一人前の定義を話してたけど、覚えてる?」
「魔法制御や五感強化は寝てる時でもできるようになって、はじめて一人前って発言ですね。大学生の皆さんもドン引きされてました……」
「普通の人はできんのよ、って思ったよね」
「それでも、私はいつか先生の隣に立ちたいです」
「……ジーー」
「どうしましたか?」
「やっぱり澪ちゃん、せんせのこと……」
「……! ち、違いますからね!? あくまで冒険者としての意味です!」
「前々から気になってたけど……そうだ、インタビュアーさん。一応確認なんだけど、せんせが結婚してるかどーかって、そっちで把握してる?」
「な、何を聞いてるんですか、ひより!?」
「婚姻歴はナシ……そうだよねぇ……」
「わかるわけないでしょう」
「向こうの世界は……ああ、インタビュアーさん気にしないで。今のはヒトリゴト。忘れて」
「勝手なイメージですけど、先生がご結婚してるとは思えないです」
「いや~、四十代で冒険者として鍛えあげた肉体で容姿もいいじゃん?」
「……まあそうですね」
「そこに新宿タワー攻略の稼ぎがあって、それに加えて、《《あっち》》関係で協力費っていうのかな、えっぐい報酬渡してるのね」
「え? そうだったんですか」
「うん。そりゃね。『正当な対価だから』って、パパが白い紙渡してたし」
「もしかして小切手的な……」
「そそ。金額までは言わないけどさ、せんせが『こんなに受け取れない』って慌ててたよ」
「大人の世界ですね……」
「そんなわけでかなり稼いでるだろうし、それでほっとかれるとかありえる?」
「そそ、そうでしょうか……?」
「ワケアリの可能性もあるけど、四十代の未婚率ってどれぐらいなんだろ。……なるほど、今は三割が未婚なんだ。ヤッタネミオチャン、チャンスアルヨ!」
「ぶっ飛ばすよ、ひより?」
「冗談だって!? ま、まあ結論、せんせはすごいって事で!」
「全く……。ひよりの発言はともかく、先生は私の恩人であり、尊敬し憧れる恩師です! これからも先生の指導を受けてがんばっていきます!」
お読みいただき、ありがとうございます。




