幸せな人生02
書けるときは書きます。
死とはつまり【無に返る】
ある時期を境にそう考えるようになった。
主人の死だ。
主人も老衰だった。私よりも10年早くこの世界と決別をした。
それでも90歳。
私と主人は学生の頃に出会い、卒業と同時に結婚をした。
決して祝福された結婚とは言えないが、とても幸せだった。
時には、つらい日々も経験をしたが、
それでも私はその日々を苦痛だと感じたことはない。
子供が生まれてからそれは、さらに実感する事になった。
長年子供が恵まれず最悪二人だけでの生活も考えた時期もある。
主人とは軽い軽食を提供する小さな店を
経営していた。
職業の都合上、そのまま二人で生活するのも悪くないと感じていた。
それでも子供が無事に生まれ、二人だけの世界に小さな命が加わり
親の大変さを実感するとともに毎日が幸せだった。
そんな小さな子がいつの間にか大人になり、彼女を連れて
そして結婚。
正直寂しかった。でも私も主人も優しい家族に囲まれこの世を去ることができた。
これ以上どのような幸せがあるというのだろうか?
少なくとも私はこの幸せで満足している。
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家族に最後の言葉を伝え、
私は私だった「モノ」に変わった。
だけど家族はその「モノ」に泣きついている。
「あれ?」
彼女は今まさに息を引き取り、この世から去った。
それは間違いない。しかし、彼女はその姿を今自分の目で見ている。
「私、死んだのよね?」
彼女の目の前で彼女の亡骸とその親族が悲しみを隠せずにいる。
そして彼女も自分が目の当たりにしている光景に困惑を隠せずにいる。
「これって幽霊ってやつかな?」
彼女は知らず知らずのうちに独り言を話しているがその声は誰にも届いていない。
だが彼女はそっと家族に近づき、一人ひとりに感謝を伝える。
触れることも抱きしめることも撫でてあげることもできないが、
彼女なりにしてあげたい行動をとった。
「私の可愛い子供たち、どうか幸せに…末永く幸せに暮らしてね。」
本心からの愛の言葉だ。
そっと家族を見つめ、微笑んでいると、
どこからか声が聞こえる。
『ヒナ、迎えに来たよ』
「え!?」
彼女は後ろから聞こえた声に驚き振り返ると、真っ白な光に包まれた。
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