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幼児体型の好きな変態にお仕置きされました

えっと、今の状況をよく考えてみよう。


今のミナの位置。それは人の上。

というか肩の上と言えば良いのだろうか。

正しくは荷物運びされている状況で間違いはないと思う。

肩にお腹が当たって少しぐえってなるし、頭は下がって辛い。足は二本とも纏めて抱えられている。


で、問題は誰がそんなことをしているかってことよね!


考え付くのは誘拐目的とか暗殺者の類いの犯罪者。

ミナは伯爵令嬢であるので誘拐はなくはないかもしれないけれど、暗殺は恐らくない、と思う。

恨みを買った覚えもこれといってないし。

と思ったけど一つだけある。

女なんてものは男女関係の取った取られたにとても煩い。勿論、ミナは誰かを奪ったことはないけれど、自身を奪われた覚えなら相応にある。

相手はあの忌々しいカイル・テイラー。幼女好きの変態野郎に夜会で公開プロポーズをされてしまった。カイルを狙っていた令嬢であればミナに報復をすることも十分に考えられる。


そうよ!ミナの今の状況はまさしくソレ!

嫉妬に駆られたどこかのご令嬢がミナを亡き者にしようと画策しての状況。もしくは亡き者としなくとも傷つけようとしての行動に違いない。


なんて、ある筈も無いことを考えて現実逃避をしてみたけれど、ミナを今現在抱えているのは諸悪の根源であるカイル本人であることは疑いようもない事実。

思い出したくも無いけれど「お仕置きの時間です」なんて変態鬼畜発言をされて、逃げ出す暇さえ貰えずにこの状況。


何故暴れないかって?当然、暴れましたよ!

持ち上げられた瞬間に!


でも、ゾッとするような猫なで声で「暴れるなら、この可愛らしい小さなおしりを叩いてしまいますよ」なんて言うのよ!

ついでに言ってしまえば、言いながらおしりを撫でられたわ!

もう、鳥肌通り越して鮫肌になってしまいそうな気分よ。


結局、まんまと言いくるめられる形で大人しくしてるしかないじゃない。

本当に忌々しいったら無いわ。


眼前にあるカイルの背中を睨んでみるけれど現状変わらず、もうすぐミナの部屋についてしまう。

こんな男と部屋で二人きりなんて死んでも嫌なんですけど!

大体、お仕置きって何するつもりよ!

も、もしかして………わたし、今貞操の危機なのかしら?

まさか、婚前交渉するつもりだったらどうしましょう。

勿論全力で逃げるに決まっているけれど、相手は立派な成人男性。小さなミナが逃げ切れる確率はほぼ無いと言ってもいい。


ならば、どうする?

適当な事を言って先延ばしにする………うーん、適当な事が思い当たらないから却下。

じゃあ、月のものがきてるって言えばいいわね。でも………変態の考えることだから、そんなものは関係ないとばかりに無視かしら?流石にそれは無い………とは言い切れないところが嫌だわ!やっぱり却下!


ああ、もう!わたしの部屋に着いちゃったじゃない!

まだ、何にも解決策が見つかってないのに!


すたすたと我が物顔でミナの部屋に入るカイルは一度、部屋をくるりと見渡しているようだ。

ミナの位置からはカイルの顔は見えないが腰の辺りで顔が動いた気がしたからそう思っただけで、実際は何か別の事をしているかもしれないけれど。

変な事を考えていないのなら何をしてくれてもいいけど、きっとカイルのことだから良からぬことを考えているに違いない。

絶対そうだ!そうに違いない!

脳内で勝手に興奮するミナは勢い余ってカイルの背中をばしばしと叩く。

おっと、いけない!っと思った時にはミナの体は担がれた荷物から縦抱っこの状態へと変わってカイルとバッチリ目が合ってしまった。


「私の背を叩いていたようですが、どうかされました?」


悪魔も吃驚な微笑みを浮かべるカイルにそう言われて、ふるふると頭を振るミナ。

私にそんなことをしている状況ですか?

貴女は私にお仕置きされる為に連れてこられたんですよ。

解らないのなら、体に解らせてやらないといけませんね。

なんて、カイルの心の声が今にも聞こえてきそうで、漏れでそうになる悲鳴を歯を噛み締めて必死に逃した。

そんなミナを見ながらカイルは恍惚の表情を浮かべる。


「さて、どうして差し上げましょうか。ミナのお好みは何でしょう?」


お好みって、そんなもの無いわよ!

何もせず、さっさと下ろして貴方が帰ってくれたらそれが一番良いに決まってる!

って言ってもいいかしら………や、やっぱり駄目よね。

というか、まだ何をするか決まってないのね。

現段階ではまだ貞操の危機ではないけれど、これからのミナの言動によっては傾く可能性もある。

ならば、今はしおらしくしとくべきということよね。


「えっと………カイル様のお好みは?」

「私ですか?」


言うに事欠いてなんて事をきいてしまったんだ自分!

とんでもない答えが来るに決まっている。

首を傾げて思案するカイルは何らかの答えが思い浮かんだのかミナに悪戯っぽい視線を送った。


「そうですね………先程までは正直これ以上ないほど怒っていたので、ドレスを捲り上げて下着も下ろして小さなおしりが真っ赤になるぐらいお尻ペンペンしようかと思っていたんですが………」


なんですって!

そんなのまるっきり幼児じゃない!

わたし、一応十七歳ですけど!

そんなのむり!絶対無理!断固反対します!

そんな気持ちのままにぐわんぐわん頭を振って、やめて下さいと懇願する。

思ってたってことは今は思ってないってことなんだから、お願いすれば他の事にしてくれるわよね!

他の事でも悪い予感しかしないけど………


「そんなに嫌なんですか………困りましたねぇ。では、真っ赤にするのは可哀想なので可愛いく桃色に染まるぐらいにしましょうか?」


お尻を叩くのは決定事項なの!?

誰か答えて!

っていうか誰でもいいから助けて!


そんなミナの願い虚しく縦抱っこ状態からソファの背にお腹を預けるように乗せられてしまってあまりの早業に暴れるのを忘れてしまった。

お尻を突き出すような格好で、頭は荷物運び状態の時と同じで下がっているが、眼前にはカイルの背ではなくミナにとっては親しみのあるソファのファブリック。

枕に顔を埋めるが如くもふっと嵌まっている。

ミナの足側に立つカイルに腰に手を添えられていつの間にか叩かれるのを待つばかりの格好になってしまった。


お尻を叩くだなんてミナを苛める為だけの嘘だと少しながら思っていたのに、これでは本格的にヤバい。

カイルの顔は見えないがもふもふとソファに埋まったまま一心不乱に頼み込む。


「ちょ、ちょっと待って!いや、嫌です………こんなの!」

「でも、ミナが嫌なことじゃないとお仕置きにならないではないですか。だから……これで良いんだと思いますけど」


それは最もです!

こんなにがむしゃらに拝み倒す勢いで頼んでるんですもの。きっと、ミナにとってはこれ以上ないぐらいのお仕置きとなるでしょうけど、嫌なものは嫌!


「いやっ!他の事にしてください!これは絶対嫌!」

「そうですか。可愛らしいミナにはとてもお似合いのお仕置きですけど………」


今、絶対脳内で想像したでしょ!?

勝手にわたしを貶めないでもらいたい。

現実でも脳内でも絶対無理なんです!

話の通じないカイルにイライラが募るが暴言は吐けないので兎にも角にも嫌だと訴えることしかできない。


「こんなこと似合いません!わたしは小さいですが、幼児ではありませんので絶対似合いません!」

「いや、お似合いですよ?試しに叩かれてみては?新たな世界に行けるかもしれませんし………」


駄目だ………話にならない。

新たな世界ってどこの世界だよ!

変態ばっかりが住む世界!?

そんな世界………絶対遠慮したいんですけど。

ドン引くミナではあるけれど了承する訳にもいかず、じたばたとする心と同じように足をバタつかせてしまう。


「お行儀が悪いようですね。ミナの足は」


そんなカイルの低い声が聞こえ、次の瞬間ぺちりと大腿の辺りを叩かれた。

痛くはない。

ぺちりだからね。

でも、なんかすっごく征服された感があって腹が立つ。

ここで怒ってはいけない、とは解っている。解っているけれど、我慢ができないのがミナでもある。


大体、お仕置きされる謂れはないのだ。何も悪いことはしていない。知らない間に婚約を結ばれていて、それが嫌で逃げようとしたことが悪いと言うならば、無理矢理婚約関係を迫ったカイルは悪くないのかと問いたい。


そう!ミナは何も悪くない!

こんな変態野郎に征服されて堪るものですか!

何やらヤル気スイッチの入ったミナはソファを両手で押し上げ首をぐりんと回して、カイルを睨み付ける。

格好がキマないがこの際仕方ない。

キョトンとミナを見詰めるカイルにこれまでの鬱憤をぶつけるが如く猛然と告げる。


「幼児趣味の変態野郎!イタイケな少女捕まえて何しようとしてくれてるのよ!婚約だって了承してないのに逃げ出そうとして何が悪いっていうの!?大体、お尻ペンペンって!そんなこと変態じゃないと考え付かない発想だから!やれるものならやってみなさいよ!社交界中に言い触らしてやるんだから!」


はぁはぁ。ついに言ってやったわ!

やっぱり人間、溜め込むのは良くないわね。少しスッキリしたわ。


ふぅ、息を吐いて又々ソファに埋もれるミナの背に僅かに力がこもる。

ミナの背にはカイルの手がずっと添えられている。

ということは力を込めたのはカイルということになるけれど。


何よ!別に腰は痛くないわよ!

こんな格好してるけどね!

マッサージだったら遠慮しておくわ。

少々力を掛けられたところで考えるのはこんな事ぐらい。

そして告げられたのは………


「ミナの考えはよーく解りました。婚約を急いたことは否定しません。それに、ミナの言うところの変態ですが………まぁ、それも否定しません。ミナのような体型が好みというのは、他の人からすれば頭を捻るようなことのようですし………」


そう、そうなのよ!

なんだ、ちゃんと解ってるじゃない!

少し安心したわ。

うんうん。この調子で婚約も破棄してくれると嬉しいわ。

流石の変態野郎でも見た目が好みだとしても、こんな幼女みたいなミナにこれだけ悪態を付かれたら嫌になるでしょ?

さぁ、どうぞ!婚約破棄どんとこいよ!

ああ、でもちゃんと目を見て聞きたいところだけど首をぐりんは中々疲れるからこのままの状態で失礼しちゃうわね。

どーせ婚約も破棄するんですもの。問題ないわよね。

ソファに埋もれながらるんるん気分でその時を待つミナたけど、何やらドレスの裾がふわふわする。

窓でも開いていたかしら?

又、体を起こして確認しようとするが、そんなミナの耳元に腰を折ったカイルが唇を寄せる。


「お行儀が悪いのは足だけではないようですね。口も相当悪いようだ」

「だから、どうしたっていうんですか?そうだとお分かりになったのですから、さっさと婚約破棄して下さい」

破棄できると疑いもしないミナにカイルは言い聞かせるように、はっきりと告げた。


「婚約は破棄しませんよ」

「え、どうして…………」

「理由は追々。今はそんな事よりもお仕置きの時間です。ああ、それに今から私がすることですが、言い触らして下さって構いませんよ。きっと、恥ずかしいのは私よりもミナですから」


そんな宣言と共にミナのドレスの裾がふわりと舞う。

舞い上がった裾は背を押さえるカイルの手によってくしゅくしゅに纏められる。

そんな行動に、先程ふわふわしたのはどうやらカイルが裾を持って揺らしていたようだと思い当たるが、そんなことは正直今はどうでもいい。

どうして、ドレスを捲るっ!

もしかして、今、絶体絶命大ピンチ?

そうこうしているうちに、ドロワーズの腰ひもがしゅるりと引かれてしまって落とされるのを待つばかり。


で、ミナはどうなったかって!?

どうもこうもないわ!

これでもかってほど叩かれたわ。

泣いても暴言吐いても結果は同じ。

真っ赤か、桃色かって!?そんなもの知らないわよ!

知ってるのはカイルだけなんだから、カイルに聞いてちょうだい!

兎に角、痛みよりも精神的ダメージが大きいことは察してほしい。


叩かれている最中に悲鳴をあげれば「可愛い声で鳴く鳥だ。へんなスイッチが入ってしまいそうです」なんて言われて、そんなスイッチは是非とも入れないでほしいと切実に願ったし、更には「小さいおしりだから片手でも余ってしまいますね」とか「段々可愛らしい色に染まってきましたよ」とか、ずっと言われて耳が腐るかと思ったわ。


おまけに、悪いとも思っていないのにごめんなさいなんて言葉を強要されて言わないと悪魔の時間が終わらないんですもの、仕方無く言ったわ。

一生の不覚ね。


極めつけが、やっと終わったと思って精魂尽き果てていたらカイルがしまった!なんて大きな声で言うものだから何事かと吃驚してみれば「私の膝に乗せてお尻ペンペンすれば良かった」って残念そうに呟くの。

それだけなら、まだソウデスカで済ませることができたけど「ミナのぽっこりお腹が膝で堪能できたのに……」なんて言葉が出てきて卒倒しそうになったわ!

思わず本音をぽろりと呟いてしまったミナは悪くないと思う。


「横暴で鬼畜でおまけに凶暴で極めつけが変態………」

「何か言いましたか?ミナ。あまり良い言葉では無いように思うのですが………」


はい。地獄耳も追加。

この後、ソファでぐったりするミナの横にカイルがちゃっかり座って自分の膝を指し示すの。


「折角だから今度は私の膝で反省しましょうか?」


願いが透けまくった言葉をキッラキラの良い笑顔で言われてミナは絶句する。

まだヤル気か………しなくてもいい反省なんてもうしたくはないんだけど。


斯くして、第二ラウンドの鐘は鳴らされた。

か、どうかは変態鬼畜野郎に聞いてほしい。

もう正直、語る気も起きない。













年齢制限が大丈夫か段々心配になってきました。

一応気にしながら執筆してますが……

この後のカイル視点……大丈夫かなぁ

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