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その二 意外な一面

 よろずと光我は、あれから日が暮れるまで歩き詰めで歩いて、ようやく天無城へと辿り着いた。


 辺りは薄暗くなり、相変わらずやもうとしない砂嵐の中で、天無城は長く暗い不気味な影を落としている。


「ここが天無城か……」


 よろずは城を見上げた。

 光我も笠を持ち上げて、城に目を凝らす。


「でけぇな」


 二人は砂嵐から逃れるように、城の中へと大きな扉を用心深く開け、足を踏み入れた。

 扉の軋む音が暗い城内へと響き渡る。

 よろずはマッチを取り出して、持っていた燭台に火を灯した。

 光我は扉をきちんと閉めると大きく伸びをした。

 よろずはポツリとつぶやいた。


「例の書物があるのは蔵だから、城の外か……。さっきは見当たらなかったな」


 光我は欠伸をしながらそれに答える。


「オイ、よろず、今日はもうあんだけ歩き回ったんだ。寝床でも見つけてゆっくり休もう。明日でも遅くはねぇだろ?」


 確かに、よろずも歩き疲れてくたくただったので、それに同意した。


「それもそうだな。こんなときにへたに動き回って、アヤカシに出くわすのは御免だしな……」


 二人は暗い城内で、とりあえず一階で休める部屋を探した。

 ちょうど客間のような畳造りの部屋が見つかったので、二人はそこで身体を休めることにした。

 城内は暗くてよくわからないが、思ったより荒れ果てている様子もなく、まるで今も誰かが使用しているようにも見える。


 しかも嬉しいことに、寝床を探しているとき——


「オイ! よろず! こっち来てみろよ」


 光我の興奮した声に呼ばれ、よろずは彼の元へと駆けつけた。


 ——そこには——


「お、温泉?」


 よろずは度肝を抜かれて声を上げた。

 石造りの大きな部屋の隅に、こんこんと温泉が湧き出ていたのだ。

 どうやらここは浴場らしい。


「な! すげぇだろ? こんなところでも温泉が湧き出る場所があんだな! それとも、そのためにわざわざここに城を建てたのか? とにかく、ついてんな!」


 光我はニッと嬉しそうに笑う。


「おめぇも、たまにはいいことすんだな……」


 よろずがそうつぶやくのを、光我は聞いてはいなかった。

 こうして、二人は心ゆくまで湯につかったのだった。


 湯から上がって寝床へ戻ると、光我は部屋の中を探り出した。

 よろずは適当に床に転がった。

 

 すると——


 ——バサッ


「わっ!」


 頭上からボロ布が降ってきた。


「オイ、夜の砂漠は冷えんだからよ、ただの布っ切れしか見つかんなかったけど、一応かけとけ」


 よろずは少し驚いて光我に視線を向ける。

 今までの言動から、彼に人を思いやる心があるのは意外だったのだ。


(意外と気が利くところあんだな)


「あぁ、ありがとな……」


 光我は少し照れくさいのか、なんとも複雑な表情を浮かべて、チラリとよろずを見た。

 光我もよろずの隣に、少し離れて横になった。


 こうして、二人は眠りについた。



 

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