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ロイヴェリクの本懐  作者: ゆーとぴあ
第一章 外街編
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第16話 新技開発

 俺は朝から自室で考えていた。俺には『根源』が使える。そして『根源』には様々な力があるようだった。


 生命に関連するものとしては、使い魔。空間に関するものとして、瞬間移動。生命に関するものとして、存在を希薄にする術が例に挙がっていた。


 存在を希薄にする術……もしかしてそれならジョエルの家に潜り込めるのでは?


 先日、シャロンさんに内街の基本的な情報は聞いたけど、どうやって内街に入り込めるかはわからなかった。

 あんな重要な話をされた後だし、母さんに聞くわけにもいかないだろう。


 ここで懲りずに「ジョエルさんちに、バレずに入りたいんです!」なんて言ったらめちゃくちゃ怒られそうだ。


 そういうわけで、内街の情報を持っているかもしれないジョエル宅に、無断で侵入し、いろいろ頂いてしまうのが現状良さそうというわけだ。


 俺は身体の周りに『光舞』を出す。ひらひらと舞う綺麗な光の輪を見ながら俺は考える。


 存在を希薄にするというのは、生命を薄くするのか? つまり、死んだように見せる? それとも、根本的にそこに人がいるとは思わせないようにする?


 まあとにかくやってみるしかないか。


 そうして、存在を希薄にしようと試みて三十分後。


「ん? なんか身体薄くね……?」


 俺の身体が透けていた。触れば実体があるのだが、何故か透けている。

 え、これが存在を希薄にするってこと? え、物理的な感じなの?


 本当にこれでいいのか……? しかし、人から見れば結構消えてるのかも……。そうか、人に見せりゃいいんだ。


 俺は困惑しながらも、部屋を出た。試しにあの二人に試してみよう。


*


 まだ二人との集合時間には早いが、俺は先に路地裏広場に来ていた。アリサとルトリシアが来る前に術を使ったまま待機しておいて、気づくかどうかで試すのだ。


 二人が来たら背後から驚かしてやろう……。


 ふふふ、と俺がニヤついていたら足音が聞こえてきた。俺は広場の壁沿いに張り付いてスタンバイする。完全に見える位置だから、術で隠れていないのなら気づくはずだ。


 そのまま少し待つとルトリシアが現われた。ルトリシアは、最初にベンチを見てその後周りを見た。


「なんだ。まだ来てないのね」


 ルトリシアは不思議そうに首を傾げると、ベンチに近づいて座った。

 暖かそうな服を着込んだルトリシアが、空中に向かって白い息を吐く。


「っ~! 寒いわね……!」


 ルトリシアは身体を両手で抱きながら、そう独りごちた。

 ……って、キターー! あいつ、気づいてない! 術の効果が出てる! 凄いぞ、全く気づいてない!


 俺は試しにゆっくりと近づき、ルトリシアの視界にあえて入るようにする。それでもルトリシアは気づかないようで、「遅い……」と唇を尖らせていた。


 これは……凄いな。凄いが……かなり危ない術だ。これだけ見えるとこにいても気づかないってのは、いくらでも犯罪に使える可能性がある……。

 まあ、俺もそういう使い方をしようとしているんだが……まあ俺はノーカンで。


 しっかし、ここまで凄いといたずら心が騒ぐ。俺はどんないたずらをルトリシアにしようか考えたあげく、普通に驚かせることにした。

 俺はルトリシアの背後に移動し、そーっと肩に手を合わせた。


 そして術を解いた途端肩に手を置き「わあっ!!」と言って、大声を出した。


「ひゃあっっ!」


 ルトリシアは飛び上がって後ろに振り向いた。胸元に手を当てて、驚いた表情をしている。

 ははは、驚いてやがる。


「だ、だ、だ、だれっ!? えっ、クルトっ!? な、なんで後ろに」

「ドッキリ大成功~」


 俺が調子に乗って両手を広げて笑ってそう言うと、ルトリシアはむっとしたようで、無言で俺の首をヘッドロックしてきた。かなり強い力で腕を回される。


 こ、こいつ、魔法で身体強化してるなっ!?


「いたたたたっっ!! 痛い痛いっ!」

「もうっ! ほんと何なのよ! びっくりさせるんじゃないわよ!」


 ルトリシアはそうとう頭に来ているようでしばらく頭を掴まれていた。俺がギブギブと言っていると、少しして「反省しなさいっ!」と言って腕が放された。


 痛みで首をさする俺だったが、お構いなしに腕を組んだルトリシアは口を開いた。


「何なの? なんで後ろにいたのよ。隠れてたの?」

「いや、まあ、その」

「なに?」


 俺はなんとも言えない威圧感を受けて、口ごもる。


「実はですね……」


 俺が存在に気づかれない術を試していると言うと、ルトリシアは驚いたようだった。


「さっき目の前にいたの!? ええ!? 全然気づかなかった!」

「なら成功してるっぽいな。こういうのを確かめたかったんだよ。決してルトリシアを怒らせようとしたわけでは」

「したわよね?」

「え、いや」

「したわよね?」

「え、あ……はい」

「反省しなさい」


 まだ根に持っているようだった。


「ああ、そうだ。アリサにも試したいんだよ」

「なんで?」

「いや、アリサって根源が使えるらしいから、それでもバレないのかなと思って」

「ああ……どうなのかしら」


 結局アリサにも試すことにした俺は、ルトリシアの要望で彼女にも術を掛けることになった。ルトリシアに掛けた術は時間経過で消えてしまうが、一応掛かるようだった。


 実際に俺の目の前でルトリシアの存在が希薄になったのには驚いた……が、この術の欠点を見つけてしまった。


 足下が砂とかだと足跡が見えてしまうのだ。だからかなり場所を選ぶ術だ。便利だが、気をつけるべき点が多いので『透明化くんベータ』と名付けておこう。要研究だな。


 二人で見えない状態になり、先ほど俺のいた壁際でアリサを待っていると足音が聞こえてきた。


「来るわよ……」


 ルトリシアが声を潜めて言った。顔を見ると、足音が聞こえる方をガン見している。君、俺より本気になってない?


 少ししてアリサが姿を見せると、最初はルトリシアと同じようにベンチを見た。その後、キョロキョロすると、ふと俺たちの居る壁際に目線を向けた。そのままじぃーっとこっちを見てくる。


「……二人とも何してるの?」


 ば、バレてるぅーー!!

 俺は透明化を解いて姿を見せた。

 アリサのジト目が痛い。


「い、いや、新しい技を開発したから試したかったんだ」

「わ、私はクルトがそう言ったから」

「や、やましいことはないんだ」


 俺たちが慌てて弁明していると、アリサは呆れた表情で頷いた。


「わかった。でもそれは魔法?」

「ん? いや、魔法じゃないぞ」

「じゃあなに?」


 俺はシャロンさんから説明を受けた『根源』のことを話した。そしてそれを研究して、この技を使えるようになったことも。


「……すごい」


 アリサは目を丸くしてそう言った。


「いやいや、シャロンさんが色々と教えてくれたからだよ」

「それで再現しちゃうのね……凄いけど、クルトって感じ……」


 ルトリシアがあきれ顔で言った。それどういう意味?

 俺が失礼なルトリシアをくすぐろうと手をわさわさしていると、アリサが俺の肩をちょんちょんと突いた。


「……こういう感じ?」


 俺が振り返ると、アリサが薄くなっていた。一応見えるが、普段とは全然違って気配が薄い。


「おお……他人のを見るとこんな感じなのか……」

「えっ、もう真似したのっ!?」


 俺が感嘆の声を漏らしていると、ルトリシアが驚く。確かにかなり早い。これも黒髪の一族の力だろうか。


「むむ、ほんとに透明になってる」

「こっちからもそう見えてるぞ」

「本当にすごいわね。これ」


 薄くなったアリサが身体を捻って、身体の後ろ側を見たり、各部を確認している。


「これ、あれに使うの?」


 自分の身体を確認していたアリサが顔を上げて言った。


「あれ、というと?」

「あのおじさん」


 そう言うアリサの目は俺が何かを計画していることをわかっているようで、素直に話せと言ってきているようだった。


「……そうだ。これを使えば、恐らくジョエルにバレずにあいつの家に入れる」

「あのおじさんに仕返しするってこと?」

「そんな感じ。あいつの家に内街と繋がっている証拠が何かしらあるはずなんだ。そうなると、母さんの代表の座も取り返せるかもしれない」


 それに、まだよくわかっていない内街の情報も得れるかも。そうすれば、女王に近づける。それは言わないが。


「そっか」


 アリサはそういって少し黙った。視線を下げて何も言わない。

 しばらくすると、顔を上げた。


「なら、私も行く」

「ええ……それはちょっと」


 バレたら不味いどころじゃない。人の家に忍び込んで物を盗む。立派な犯罪だ。しかし、アリサの視線は揺るがない。


「クルトが困ってるなら、手伝う」

「それは、ありがたいが……」


 危険な行いにアリサを巻き込んでいいものか。

 俺は答えが出ず黙ってしまう。

 そんなときにルトリシアが口を開いた。


「要はバレなければいいのよ。お父さんが聞いたら怒りそうだけどね」


 人差し指を立ててルトリシアはそう言った。確かにリカルドが聞いたら怒りそうな台詞だ。


「私が外で待ってて、人が来たら合図するわ。それまでの間に二人でどうにか書類を見つける。これでどう?」


 ルトリシアもそう言って俺を見る。二人を巻き込むことになるのは不味い。しかし、一人でできることにも限界がある。


「こんな時くらいしか手伝えないんだから、手伝わせなさい。普段、勉強を教えてもらってるしね」

「ん」


 ルトリシアの言葉にアリサが頷く。

 そう言われては断れないな……。


「……わかった。二人とも、頼む」


 俺がそう言うと二人とも笑みを浮かべた。


「任せて」「任せなさい!」


 二人の声が揃う。


「それはそうと、忍び込むのにちょうど良い日がもうすぐあるわよ?」

「ん?」

「明後日は祭でしょ? そのときは絶対おじさんも出てくると思うの」

「ああ! 確かに」


 ジョエルが企画したという祭。確かに主催者が祭に出てこないことはないだろう。ということは、その間、ジョエル家が留守になる可能性がある。


「その間に忍び込めば……! さすがルトリシアだな!」

「ふふん。もっと褒めなさい」


 嬉しそうにドヤ顔をするルトリシア。かわいい。


「それと祭は四日間続くらしいわ。これが終わったらみんなで絶対行くわよ!」

「だな!」


 意気揚々と提案するルトリシアに俺は同意すると、アリサを見る。


「アリサも行くだろ?」


 俺の質問に対してアリサは首を傾げた。


「祭って何があるの?」

「おいしいものがたくさん出るらしいわ」

「……! 行く」

「見世物とかもあるだろうな」

「それは剣術?」

「け、剣舞とかならあるかも」

「……! 絶対行く」


 アリサはふんすと両拳を胸の前に上げた。アリサにしては珍しく決意が表情に表れている。相当気になるっぽいな。まあ、あるとは限らないのだが。


「そうと決まれば、作戦会議だ。ジョエル家の下見もするぞ! あと、透明化の実験もだ!」

「「「おー!」」」


 三人で腕を上げた。待ってろジョエル。俺が再びお前を引き摺り降ろしてやるぜ。

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