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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第93話「松風(先行量産型)」

月曜日なので第93話


前田慶次と言えばアレ、なアレが登場します。

 角の生えた馬、というとユニコーンのような一本角だとお思いの方は多いと思うが、慶次を引っ張ってる魔馬の角は5本ある。

 こう、何ていうんだろう、真ん中にでっかい一本があってその周りに対象に2本ずつ……というわけではなく、たてがみに沿って5本バラバラの長さが生えている。

 端的に言って邪悪な印象を受ける。

 それ以外は頭の高さが3mほどあるクソデカくて立派なお馬さんなんだけども。

 ともかく、その魔馬に縄をかけたらしい慶次がそのまま引きづられている。

 西部劇で見たことあるなアレ。

 周囲を遠巻きに囲む兵たちはなんだか楽しそうな人もいればドン引きしてる人もいるし、反応は様々だ。

 楽しそうなのは多分信長(ノッブ)の友人……なんだっけ、母衣衆(ほろしゅう)か。要はうつけ信長(ノッブ)大好きなヒャッハー集団な愚連隊なんだけども。信長(ノッブ)の直接指揮下でガチンコの殴り合いができる高レベル集団である。

 彼らは魔馬が一般の兵士や冒険者たちの方へ向かうと何やら大声を出して方向転換させて被害が出ないようにしている。

 いやほんと、何してんのアレ。

 どっか未開地域の部族の奇祭みたいな光景である。

 あれ?ここ戦国時代の熱田だったはずだけども。

 久々の太陽光の眩しさに目を細めるまもなく現れた異様な光景に私が言葉を失っていると、彼らの親玉である信長(ノッブ)が一歩踏み出して大声を出す。


 「てめぇら何してやがる!こりゃどういう事だ!?」


 喧騒がピタリと止み、魔馬すらビクリとして止まった。

 魔馬が急に止まったので引きずられていた慶次はすぽーんと飛んで織田家の募兵事務所に突っ込んでいった。

 盛大な破壊音と悲鳴が聞こえる。

 けが人いないと良いけど。

 唖然として事務所を見ているとボロボロの慶次が何事もなかったかのように出てきた。

 事務所の中の人に「すまんすまん」とばかりににこやかに手を振りつつ。

 自由すぎんかコイツ。

 慶次は魔馬の側に立ち、縄をしっかり掴むとそのまま引いて私たちの前にやってきた。


 「これは濃姫様!無事のお目覚め誠にめでたく!」


 「ええと、おはよう?」


 「そうじゃねえだろ帰蝶。おい慶次、何の真似だこりゃ?俺は迷宮の魔物を外に出すなといったはずだぞ」


 ギロリと睨む信長(ノッブ)。さすがに命令違反は見逃せないのだ。

 ふうむ。ここは私がとりなす場面であろうか。

 しかし慶次は飄々とした様子でニヤリとして


 「殿のお言葉とも思えませんな。みなされこの名馬っぷり!こいつを乗りこなせれば疾風の如く戰場(いくさば)を駆けられること間違いなし!」


 「……ほう」


 信長(ノッブ)の目が輝いた気がする。

 まさか、魔馬で騎馬隊でも作るつもりなの?


 「それがし、元より此奴らの背に乗って外を駆けたく思っておりましてな!

 以前はあまりの巨躯ゆえ2層から1層にあがる階段を通れず諦めておりもうしたが、此度の異変で1層に此奴らが現れるようになったので、これは是非とも外に連れ出したくなってしもうたのです!」


 「なるほど……確かに魔馬を外で飼い慣らせれば戦力になるかもしれんが……

 しかし俺の出した禁を破るとは関心せんな?」


 「あまりに立派な魔馬の威容に惚れたそれがしの愚かさにござる。処分は如何様にでも」


 素直に頭を下げる慶次。

 好き勝手しているように見えて案外こういう所であっさり頭を下げられる潔さは慶次の良いところだ。

 その様子を眺める信長(ノッブ)もなんだかニヤリとしてる。

 こういう奴が好きなんだよね信長(ノッブ)って。

 彼はしばらく慶次の頭を眺め、なぜだか大人しくしてる魔馬を睨みつけた後、声を発した。


 「ふむ。よかろう。前田慶次郎利益!貴様、魔馬を外で飼いならしてみせよ。その手法を編み出したならば此度の事は不問とする!

 おいてめぇら!慶次が魔馬の飼いならし方を固めるまで勝手に魔物を外に出すんじゃねえぞ!わかったか!!」


 おうっ!と皆の声が響く。慶次は頭を上げてニカッと笑い、手綱の先の魔馬を眺めて


 「おお、殿のお許しが出たぞ良かったな松風!さて早速遠乗りと行くか!!」


 とか言い出す。

 松風!?歴史上でも前田慶次の愛馬とされてた名馬の名前だ。

 史実ではだいぶ後の時期に前田利家から強奪したとかなんとか言われたたらしいけど。

 というか、魔馬って全部似たようなもんだから迷宮には松風がいっぱいいるようなもんだけど、良いのかなコレ。

 あーまあ、もうどうでもいいか。

 後の前田利家たる犬千代くんは


 「でけえ!すげえ!慶次!おれものせてくれよ!」

 

 と大はしゃぎだし。


 「待って待って!慶次!いきなり外を走ったらみんなびっくりするでしょ!」


 「濃姫様、馬とは走らねば具合が悪くなるものでしてな。松風は魔馬ではあるが馬は馬です。走らさねばなりますまいよ」


 「えー?こんなデカい馬入る厩舎が無いと思うし……」


 「帰蝶、その辺も慶次が考えるべきことだ。ほっとけ」


 「良いのかなぁ……?」


 ぶるる、と松風が唸る。どうやら走りたいらしい。

 しょうがないので好きにさせることにした。

 松風にまたがった慶次が走らせると、慶次の「行ってまいる!」という声を残してあっという間に走り去っていった。

 さすが魔馬。とても早い。

 

 「帰蝶、図らずも外で魔物を飼えるかの試しができるな?」


 「そうだけどさぁ。慶次で大丈夫かなぁ?」


 「アイツは案外目端が利くし頭もいい。捻くれた傾奇者ではあるが、悪いようにはしねえさ」


 「そうかなぁ?そうかも。上手いこと魔馬が飼えるなら魔牛とかもいけるかもね。目指せ畜産王国尾張!」


 「農民もれべるあっぷさせねえとな。イナリ教にも頑張ってもらわにゃならん」


 「うん。私は美味しい献立を開発してみる。ドロップしたお肉、私に届くようにしてもらえる?」


 「ああわかった。とにかく屋敷に帰ろう。皆心配してるぞ」


 「あーそうだった……お義母様のお説教が待ってるんだった……」


 「ま、しょうがねえ。諦めて叱られろ」


 ぽん、と頭に手を乗せてくる信長(ノッブ)。

 この温もりだけが唯一の癒しだよぉ……




 兎にも角にも、色々あった迷宮拡大事件の後、3ヶ月が過ぎた。

 私はあのあと土田御前(ノブマッマ)に三日三晩のお説教を受けた後、余計なことをしないように監視を強化されて、主に各地にお手紙を送りながら魔物のドロップ品を使った新たな料理を開発したりしている。

 女子大学寮に通いながらな!放課後はずっとお仕事で気分はブラック社畜だ。

 まあ料理開発は大学寮のみんなとのクラブ活動みたいで楽しいのだけれど。


 迷宮はとりあえず第1層の地図ができた所で再度冒険者に開放された。

 どうも、元の第1層部分に分布する魔物は以前と同じく子鬼と大鬼くらいで、拡大した先にこれまでの2層にいた魔物動物シリーズが現れるようになったそうだ。

 というわけで、これまでと同じく初心者は元1層部分でレベル上げして、第2層に降りる階段のある広間に屯する大鬼コンビを倒せるようになったら第1層の拡大先に侵入できるという暫定的な資格制が取られている。

 これは私が「冒険者のランク制を取り入れよう」と言ったのが端緒で、無闇矢鱈と奥に進んでいたずらに人死を出さないために取り決めたのだ。

 現状、大鬼コンビを退治できるという指標しか無いんだけども、これは運用していくうちに様々な観点からランク付けできるようになるだろう。

 なってほしいな。なるよね?多分、きっと。

 迷宮の2層以下はずいぶんと広大になったようで、あまりの広さにすべての探索が終わっていない。

 しょうがないので地下に向かう階段を見つけ次第降りて偵察を繰り返しているそうな。

 2層以降は地下への階段があちこちにあるのだとか。


 先日、信長(ノッブ)が「迷宮の奥がどうなっているか見てくる」と言って迷宮に入っていった。

 遅くとも7日で戻ると言っていたのでそろそろ戻るだろうけど、心配だ。

 久助とやたらと強いドワーフ……飛騨山鍛冶衆が一緒なので大丈夫だろうけど……


 飛騨山鍛冶衆と言えば、彼らの住む長屋が鍛冶場近くにできたのは1ヶ月ほど前だ。

 何やらこれまでとは全然違う炉を作ったとか尾張の職人が言ってたけど、その辺は全然詳しくないので「そうなんだすごいね」としか言いようが無い。

 ドワーフなのでなんか物凄い秘術とかあるんだろうね。知らんけど。

 

 とまあ、そんな事をつらつらと考えながら久しぶりの休暇をイナリちゃんのとても立派なおしっぽをいじりながら過ごしている私である。

 季節は夏である。

 私は部屋に置かれた魔導冷蔵庫から冷やしておいた瓜を出してイナリちゃんとお市ちゃんに振る舞う。


 「つめたくておいしいね、おねえさま!」


 「わらわは少し塩を振るのが好きなのじゃ」


 「なかなか通だねえ、イナリちゃん」


 涼風箱と名付けられた陰陽術仕様の魔導冷蔵庫はちょこちょこやってきた陰陽師や陰陽術の講義を受け始めた生徒たちのバイトで少しずつ生産体制が整っている。

 魔導冷蔵庫を始動して術を維持するにはまだ側にレベルアップした陰陽師がいないとならないのがちと不便なんだけども。

 何やら空気中の魔力が増えてるので、それを取り込む術式とかできないの?と土御門様と涼風様に言ったら研究室にこもって5日出てこなかったので乗り込んで引きずり出したのも良い思い出だ。

 ……いや良く考えたら良い思い出でもなんでも無いなこれ。

 あの研究バカどもの手綱を取るのは実に大変だ。


 迷宮から戻ってしばらくは土御門様の結界術に魔力を込めることばっかりさせられたし。拡大事件の時変質させた結界術を再現したかったんだってさ。

 私のダダ漏れ魔力のおかげか異様な強度と何故か移動も可能だってんで、常時使用可能になれば迷宮探索や魔物退治にも非常に役立つのは理解できるのでしっかり協力したよ。

 お仕事の後、睡眠時間を削ってね!!

 まだ成長期なんですけどね私!

 戦国時代に成長期なんて概念無いってのは知ってるけどさ!!


 思い出したらなんだかムカついてきたので、イナリちゃんのほっぺをムニムニしたりしていたら、信長(ノッブ)が迷宮から戻ったって言うんで喜んでお出迎えしたものさ。


 そしたらなんだい。

 信長(ノッブ)ったら、迷宮で「レベル鑑定魔道具」なんてもんを見つけてきたんだよ。

 びっくりした、なんてもんじゃないねこりゃあ。


飼い慣らせたなら織田騎馬隊はとんでもないことになりますけど、一体どうなることやら。


というわけで今回はここまで。

また次回をお楽しみに。


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