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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第90話「帰蝶ちゃん、無失点1セーブ」

火曜日なので第90話。


たまたまやきうを見たので。

 おさきと一緒に米俵のように信長(ノッブ)に担がれた私は、流れていく景色をのんびり眺める余裕が出てきた。

 道中、魔牛、魔猪、魔狼、魔馬、魔ニワトリ、魔カワウソなど、「なんでも魔ってつければいいってもんじゃねえぞ」と言いたくなるような動物系魔物を尽く轢き潰しながら信長(ノッブ)は進んでいく。子鬼や大鬼もいるけどそんなもん物の数でもない。

 うおおん、私の旦那はまるで人間ダンプカーでござる。

 途中それらの魔物動物シリーズと必死で交戦している冒険者や兵士たちもいたが、見かけるたびに信長(ノッブ)が疾走しながら蹴っ飛ばして血煙に変えているのでとりあえず彼らの急場は助けられたのだろう。

 感謝の声を聞くどころかしっかり顔を見る間もなく走り去っていくのでもう何名助けたのかもわからない。

 ここまで激しく動くと乗り物酔いをするかと思ったけど別にそんなことはない。

 レベルアップしててよかった。

 ……実感するのがなんだかしょっぱい場面ばかりなのがちと気になる。


 そうして5分ほどしたら急に信長(ノッブ)が止まる。

 大事に降ろされて、見ると通路前方に青い薄膜が張られていて、それを数十匹の大鬼や魔物動物達がぶつかっている。

 あかん、あれ結界とか言ってたけどそのうちパリンと割れるやつだ。

 バリアは割れるものと古代から決まっているのだ。

 私が桶狭間以来初めて直面する多数の魔物に慄いてそんな余所事を考えていると、信長(ノッブ)がニヤリとして言った。


 「ちと多いが、問題ねえ。おさきと鬼太郎(おにたろう)はここで帰蝶を守れ。俺が行く」


 返事をする間も無く信長(ノッブ)が飛び出していく。

 その手には迷宮鉄の刀。数打ちで細身な頼りないものだ。

 魔物の群れに飛び込んだ信長(ノッブ)はそれを振り回して数匹切り倒して……面倒くさくなったのか刀を放り捨てて素手で殴り始めた。

 それを眺める私たちは……


 「……ノッブ、刀捨てちゃったね。大丈夫なのかなアレ」


 「三郎様のお力に耐えられる刀が無いそうですよ。三河童子を斬った大太刀が一番マシだったとおっしゃってました」


 「でも折れちゃったしねえ。軍土たちが良い刀を打ってくれないと困るね」


 「怪しげな人たちですが、力は本物ですからね。彼らが持ってた大斧、私も欲しいです」


 「いやそういうことじゃなくて……」


 と、呑気なものである。信長(ノッブ)にどうにもならない魔物なら私たちなんかどうにもならないのでかえって落ち着いているのだ。

 それにしてもおさきさんはどうなりたいんだろう。

 大斧で戦う侍女……なんとも言えないしょっぱい気持ちになる。

 

 しょぼしょぼした気持ちで信長(ノッブ)の戦闘……もう虐殺と言っても良いんじゃなかろうか。ともかく戦いはあっさり終わった。

 ふー、と残心を解いた信長(ノッブ)の周りにはいろいろなドロップ品が転がっているけど、今はそれどころじゃない。

 ドロップ品も早く拾わないと消えちゃうんだけどね。

 ともかく、私たちは急いで青く光る幕の向こうに足を踏み入れる。

 

 「きちょー!きちょー!!よう来てくれた!はようぽーしょんを!!」


 「おまたせイナリちゃん!おさき!」


 すでに懐から数本のポーションを取り出したおさきはすぐさま虫の息の信者に駆け寄り、傷に振りかける。

 人命救助の場面で余計な返事は不要なのだ。

 この流れは信長(ノッブ)に運ばれている間に打ち合わせている。

 横たわった負傷者の傷がじわじわと治り、呼吸が安定しだす。

 信者たちから歓声が上がり、跪いて感謝の言葉が投げかけられる。

 

 「「「「「イナリ様!巫女様!殿様!少佐!殿様!三郎様!代行殿!巫女様!感謝!ありがとうございます!」」」」」


 なんだか某少佐を崇めるような声も混じっているような気もするけどきっと気のせいだ。この中にSSくずれの吸血鬼はいない。いいね?

 ともかく良かったと喜び合う信者たち……めんどくさいから冒険者で統一しようそうしよう。

 ともかく、冒険者たちとイナリちゃん一行を救援できてホッとした私はその場にへたり込んだ。気付いたおさきと何故か鬼太郎(おにたろう)が駆け寄ってくる。


 「姫様!」


 「ああ、ごめんおさき。安心したら力が抜けちゃって……」


 「ギャッ」


 お前あんまり役に立ってねえけどな精進しろよバカ弟子が、じゃねえのよ糞ゴブリン!あ、あんたなんか師匠だなんてこれっぽっちも思ってないんだからね!!(ツンデレ)

 糞ゴブリンとメンチの切り合いをしていると喜ぶ冒険者たちの輪から離れたイナリちゃんがとてとてとやってきて、私に飛びついた。


 「きちょー!さすがわらわのきちょーなのじゃ!よう来てくれた!」


 喜びの涙を浮かべながら私の胸に飛び込むイナリちゃん。

 私は彼女の頭をそっと撫でて無事を喜ぶ。


 「イナリちゃんが無事で良かった。怖かったねぇ。もう大丈夫だよ、私もノッブも来たからね」


 「急に魔力が高まって、迷宮が動いてびっくりしたのじゃ……まるで迷宮ができたときのようだったのじゃ……」


 小さく震えながらか細く言うイナリちゃん。

 ……熱田神宮に迷宮ができた時と同じような感じだったということだろうか。

 考えてみれば、迷宮ができた時に最も近くに居て今も生き残っているのはこの子だけだ。

 今回の拡大?事件を受けて迷宮発生時の状況をもっと詳しく聞く必要があるかもしれない。

 ……それは後にしよう。今はこの幼女神が無事だったことを喜び、その震えを取り除いてあげなければ。

 そうしてしばらくイナリちゃんを撫でていて、ようやっと震えが止まったので声をかける。


 「もう少し休んだら、外に出る道を探そう?他の冒険者……信者たちもあちこちで魔物と戦ってたの。早く助けるためにも一旦外に出ないと」


 「それなのじゃがな、きちょー。わらわの神域……社の位置は動いておらんようなのじゃ。その周辺を見たところ、元の迷宮と変わっておらなんだ」


 「千里眼の術でそこまで見えたんだ。それで慶次や軍土たちの居場所はわかる?」


 「どうも迷宮は広がったようでな。元あったところに足されたような感じなのじゃ。広がった部分はまだわらわにも見えぬ」


 「どうやったら見えるようになるの?」


 「わらわの力では一度見たところや、眷属……鬼太郎(おにたろう)じゃな。あやつが行ったところならば見ることができるのじゃ。新たな部分はまだ行ったことがないゆえ、見えぬのじゃ……もっと真面目に修行しておれば伏見や京も見えたのじゃが、遠くてかなわん」


 「うーん。神様の修行って何をするのかわかんないけど、これからは真面目に修行しようねイナリちゃん?」


 「わらわ、幼女だからちょっと何言ってるのかわかんないのじゃ」


 都合が悪くなると「幼女だから」で通すクセがあるなこのポンコツ神。宇迦さまに今度叱ってもらわんとならん。

 よそを向いてぴゅーぴゅーと下手くそな口笛を吹く駄女神を白い目で眺めていると信勝(カッツ)がこちらにやってきた。


 「義姉上、救援感謝いたします。流石にあの数は僕にもどうにもなりませんでした。同志土御門の護符に義姉上の魔力が届いて結界の術が発動したと聞いております。アレがなかったら信徒はおろか、イナリ様もお守りできたかどうか……」


 イナリちゃんと繋がった時同様のボロボロの姿で語る信勝(カッツ)。ポーションを使ったのかもう血は流れていない。

 というか、大鬼と対峙できるほどレベルアップしているとは聞いていたけどあの数をさばけるとは思ってもみなかった。

 

 「僕だって父上の子で、兄上の弟です。強くならねばイナリ様の教えを広める資格などありません」


 魔物と戦うのが怖いと言っていた義弟がたくましくなったものである。

 ……その原動力がイナリちゃんへの信仰心というのがなんだかモヤモヤしてしまうけれど。まあ何であれやる気が湧くのであればそれでよいのではないだろうか。

 それについていけている土御門様もどうかと思うけど。

 彼も大鬼をぶん殴るほどのレベルアップを果たしており、安倍晴明の残したいろんな陰陽術を駆使して鬼退治を嬉々として行っていたそうな。

 なにそれすごい。独占せずにどんどん広めてほしいのだけれど。

 彼自身は術の探求に貪欲でも普及に関してはあまり興味がない。そっちは涼風様にまかせっきりなのでいまいち進みが遅いのだ。

 その土御門様は今も結界を発動している御札を観察しながらブツブツ何か言いつつメモしている。端的に言ってアブナイ人なので近寄りたくない。

 でも多分後で色々聞かれるんだろうなぁ。まあちょっと覚悟はしておく。


 体を休めて負傷者も動けるようになったので、とりあえずイナリちゃんの神域を目指して歩くことになった。土御門様曰く、結界の術は本来移動しながら貼ることは出来ないはずなのだけれど、私の魔力によって術が変質したのか符を中心に移動が可能なのだそうだ。

 ……これを聞き出すのに30分掛かったのは正直アレだったが。

 何らかの報復を考えざるを得ない。

 ともかく、道中の安全はとりあえずなんとかなりそうなので私たちは出発し、現れた魔物は信長(ノッブ)とおさきが尽く轢き潰し、生き残った冒険者を一行に加えながら体感半日ほど迷いながら歩いて、やっと見慣れた通路にたどり着いた。

 ここからは2時間ほどで外に出られるが……


 「とりあえず社で休憩するのじゃ。皆疲れておるし、きちょーの魔力もそろそろ持たないであろう」


 とイナリちゃんが言うので神域で休むことにした。

 そう言われるとやたらとお腹が空く。魔力を使いすぎるとこうなるらしい。

 いや、結界に魔力を流している実感なんてちっとも無いけども。

 解除するのはイナリちゃんがやってくれるそうだけど、行軍中に解いたら結界が消えて危ないのでそのまま歩いてきたのだ。


 皆、お腹が空いているのでお社に備蓄されていた食料で腹を満たす。

 私?そりゃあもういつになくたくさん食べましたよ?お陰で眠くてしょうがない。

 結界術の件について色々聞きたいのであろう土御門様が爛々と目を輝かせて私を見ている。

 それを信長(ノッブ)が私に近づけないよう牽制しているのを尻目に、私はお社の奥の間で横たわってすこんと眠りに落ちたのであった。



行軍中、土御門様はとてもうるさいので猿轡をされていました。

それなのになぜあんなに嬉しそうだったのでしょうか。byおさき


というわけで今回はここまで。

また次回をお楽しみに。


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