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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第88話「とても迷惑なリニューアルオープン」

金曜日なので第88話。


諸々ありましてかなり間が空きました。更新再開していきます。

 「え、ええと、ここどこ……?」


 急に起こった地震にまだ震えが止まらない。

 でもそんなことより大問題がある。


 「わからん。迷宮にはずいぶん潜ったが……見たことねえ場所だ」


 「私も見たことない。……こんな長い通路あったんだね……」


 「姫様、奥が見えません……」


 私たちは、異様に長い通路に3(・)名(・)でいる。

 幅はいつもの迷宮の通路の倍くらい広い。見上げると真っ暗で天井も見えない。

 迷宮はほの明るくて見通しが良いものなんだけど、おさきが言うとおり前も後ろも通路の先が見えない。

 ……ダクソを作った会社が設立初期に出したゲームでエリア間移動にやたらと長い通路があったけど、あんな感じ。壁を調べたら槍が飛び出てきたりスケルトンが居て一撃で殺されたりするんだ。壁には近づかないようにしよう。


 「イナリも、軍土も……慶次たちも居ねえな。一体どういうことだ?地面が崩れて下に落ちたわけじゃねえようだが」


 「私は目をつぶってしゃがんでたからわかんないけど、何かわかるノッブ?」


 「……地震が起きて、しゃがめって言ったらやたらと眩しく光ってな。俺も目を閉じて、開けたらここに居た。何かに運ばれたような感じは全く無かったが……」


 地震が起きて、光って、気づいたらここに?

 転移の罠でも発動したんだろうか。壁の中に飛ばされないでよかった。

 いや待て、あそこは迷宮地下2層への入口で、多くの人が毎日通る場所だ。

 いまさら転移罠が発生するとも思えない。

 転移罠ならみんなが驚くレベルの地震が起きたことも良くわからない。

 まさか、天照大神さまが言ってた「迷宮に注意しろ」って……


 「姫様、三郎様!なにか来ます!」


 信長(ノッブ)の話を聞いて考え込んでいるとおさきが叫んだ声で現実に引き戻される。

 確かに何かが近づいてくる音が聞こえる。

 石畳を蹄が叩くような音だ。

 でも、重くて早い。

 そうしてレベルアップした私の強化された視力が通路の奥から猛烈な勢いで走ってくる牛の存在を捉えた。

 目が赤くランランと輝いていて鋭利で長い角が生えてる。ただ、多分すごく大きいなあれ。牛追い祭りにだしたら大惨事になるレベル。


 「う、牛!?」


 「ありゃあ魔牛か?なんでこんなとこに?」


 信長(ノッブ)がのんびりと言う。

 私は初めて見る魔牛にビビり散らかしているが、日々2層で魔牛を殴り倒しているらしいおさきはどこかホッとした様子だ。

 

 「なんだ、安心しました。でも姫様は下がっていてください。危のうございます」


 「ええと、おさきさん?あんなのどうやってやっつけるの?」


 「見た目ほど強くないんですよあれ。まっすぐ突っ込んでくるしか脳がありませんので」


 すり抜けざまに首を落とすだけなのだから別に大した相手では無いとあっさり言うおさき。いやレベルアップしたと言っても私にはそんな事できないと思うんですけど。


 「ま、俺やおさきにゃ大した相手じゃない。帰蝶、壁に寄っておけ。おさき、頼んだぞ」


 「はっ」


 そう言って信長(ノッブ)は通路の真ん中に仁王立ちし、突進してくる魔牛を待ち構える。

 そして少しも経たずに信長(ノッブ)を跳ね飛ばす勢いで突っ込んできた魔牛を片手で止めた信長(ノッブ)は「ンモォ……」となんだか残念そうな声を上げた魔牛の角を両手で掴んでそのままぐりんとひねって首を折る。

 

 「さすがの私もあれはまだできないんですよねえ」


 まあ、いずれできるようになってみせますと宣うおさきさん。

 いや女の子がやっていいことじゃないと思う。もっとこう、華麗に戦う事を覚えてほしい。一体どこを目指しているんだろうかこの子は。

 ともかく、首をひねられた勢いで回転して倒れた魔牛はそのままふっと消える。

 私の旦那が強すぎる。

 

 「お、2つでたな珍しい」


 信長(ノッブ)がきれいに折りたたまれた革と竹革の包みを持ってきた。

 2層以降の魔物はたまにドロップ品が2つ以上出ることもあるのだとか。

 そういうのは私にも教えておいてもらえませんかねえ?


 「言ったら突撃するだろお前」


 ぐぬぬ。反論できないのが悔しいし、おさきもうんうん頷かないでほしい。

 ともかく、今回ドロップしたのは魔牛の革と魔牛の肉だ。

 魔牛の革は何故かなめされた状態でドロップするらしく、甲冑の材料として重宝しているのだとか。まだ一般に売買されていないそうだけど。

 異様に丈夫で、兵士の防具に使われていて、そのうちこれと迷宮鉄を使った信長(ノッブ)用の甲冑を作る予定なのだとか。

 

 「そのへんの魔物に殴られても別に痛くもなんともねえが、三河童子みたいのがまた出たら危ういからな」


 とのんびり言う信長(ノッブ)。レベルアップすると「防御力が上がる」って意味で

やたらと体が丈夫になるけれど、それを貫いてくる敵もいるだろうから備えは必要だ。

 ただ、迷宮鉄と魔牛の革で防げるのかはちっともわかんないけども。


 そして、魔牛の肉。

 1kgぐらいのブロック肉だ。

 これは、牛肩ロースだろうか。サシが入ってとても美味しそうである。

 じゅるりと口を鳴らした私を「マジかよこいつ」という顔で見るおさき。

 対象的に信長(ノッブ)はため息をついている。

 

 「取引対象にするにゃちとアレだが、美味いんだよなこれ」

 

 信長(ノッブ)や兵たちは肉食忌避の風潮があるので表立って持ち帰って食べたりはしないようだけど、迷宮内では密かに食べているらしい。

 おさきは信じられないという顔で見ているけど。


 「帰蝶が2層に行けるようになったらどう広めるか考えてもらおうと思ってたんだが……ああいや、今はそれどころじゃねえな」


 「いやいやいや、大事なことだよノッブ!お肉食べよう!絶対美味しいよこれ!ステーキは勿論ビーフシチューも作りたい!ああ、骨が無いとフォン・ド・ヴォーが作れない!トマトも玉ねぎも無いかぁ……肉じゃが……ああジャガイモがない!

 クソっ!戦国時代めえ!迷宮で出ないかな!?」


 「ククッ、早速献立が出るくらいか。ま、それは後だな。今はここから出て何がどうなってんのか探るのが先だ。

 ……何かわかるか帰蝶?」


 ああそうだったいかんいかん。魔牛はいくらでもいる。

 今はなんとか迷宮から出ることを考えよう。

 ……魔牛は2層以下の層にしか居ないらしい。それが居るならここは2層以降の地下ということになる。

 ただ、こんな印象的な長い通路を信長(ノッブ)は見たことがないと言う。

 最深部、地下5層まで定期的に潜って、迷宮内の地図を作った信長(ノッブ)がそう言うなら、そうなんだろう。

 なら、見たことのない別迷宮に飛ばされたんだろうか。

 転移罠ではなさそうだってのはさっき考えた。

 そもそも、迷宮は人を殺す気はあんまり無いように思える。

 人を寄せ付けないものならもっと即死級の魔物が第1層から現れるはずなのに、第1層は普通の人でも対処が可能な子鬼だらけで、2層への入口に大鬼が2匹「ボスのように」たむろしている。

 なんだろう、あまりにも。

 あまりにも「ゲーム的」な難易度調整がされている用に思える。

 それがいきなり即死罠級の転移を引き起こすだろうか。

 いや、起こすのかもしれないけど、そうだとしたらこれまでの迷宮の姿と整合性が取れない。

 多くを集めて一網打尽にする意図なら時期的にちと中途半端に思える。

 人類はまだまだ多い。そこでこんな事起こせば誰も入らなくなる。

 ならば、これは難易度調整の一環なのかもしれない。

 だとすると……


 「……拡大?」


 「何かわかったのか?」


 「わかんないけど……もしかしたら、これは迷宮の拡大なのかも」


 「拡大?」


 「迷宮っておかしいと思わない?」


 「そりゃこんなもん出てくるなんざおかしいに決まってるだろ」


 「そうだけど、そうじゃなくて。迷宮って1層はレベルアップして無くても倒せる小鬼ばっかりじゃない。2層に行く前には門番みたいに大鬼がいる」


 「そうだな」


 「これって、力のない人間を下に行かせないようにしてるように思えない?」


 「……たしかに、そう思えますね」


 「そして、アイテムドロップ。無限の物資、一攫千金も狙える」


 「何が言いたい帰蝶?」


 「迷宮は、人に入ってもらいたいのかも」


 「確かにそう思えるな……だとするとこりゃあ何だ」


 「今日、入ってくる時に話したじゃない。「ずいぶん混んでるね」って」


 「……手狭になったから、広くなったって言いてえのか?」


 「そう。天照大神さまは迷宮の魔力が高まってるって言ってた。注意しろって。それはこういうことなんじゃないのかな。迷宮って、入る人間が多くなるとこうやって大きくなるのかも」


 「じゃあ、ここは広くなった1層なのか?だったらなんで魔牛がいるんだ」


 「わからないけど、2層にあまり人が行かないからそっちの魔物を1層にだしてきたのかも。……迷宮は、人間に魔物を倒させようとしてんじゃないかな」


 「なんだってそんな事……」


 それはこっちが聞きたい。でも迷宮の意図なんか知ったこっちゃない。


 「……ともかく、拡大としてもはぐれちゃったみんなを探さないと……」


 「いや、俺らが脱出するのが先だ。奴らなら大丈夫なはずだ」


 「そうだね……あ、でも、今日迷宮に入ってた冒険者……イナリ教の信者たちは……」


 「……今は私たちが生き残るのが先ですよ、姫様」


 「うん、そうだね……行こうか!って、どっちに行ったらいいんだろうね?」


 進むか引くか。どっちに行ったらいいかがさっぱりわかんない。

 先の見えない通路で途方に暮れていると、頭の中に声が響いた。


 『きちょー!ノッブ!たすけてたも!わらわの、わらわの可愛い信者たちが!!』


 「イナリちゃん!?」


 「どうした帰蝶!?」


 これ知ってる。桶狭間でイナリちゃんと繋がった時と同じだ。

 あの時からあのお守りはずっと持ってたけど、今まで繋がったことは無かった。

 なのになぜ今?!



帰蝶ちゃんの推測があたっているとは限りません。



というわけで今回はここまで。

また次回をお楽しみに。

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