第82話「見た目で判断してはいけないとは言うけれど」
月曜日なので第82話。
ドワーフかな?ドワーフじゃないかな?みたいな話。
ぬわあああんドワーフもいるなんて聞いてない!
ここは地球の戦国時代だと思ってたけどガチ目の異世界なんだ!
あああもうどうしたら!エルフとかもいるの!?
もふもふ系獣人もだ!
アレだ、よくわからん番制度とかあって「お前が番など認めん」とか言って番解除の儀式してざまぁする展開もアリなのか!?
そうだ。イナリちゃんは獣人と言えば獣人じゃないか!神だけど!
もふもふおしっぽの狐耳幼女とかモロ獣人!
考えてみればもともと異世界みたいなもんか。
ゴブリンとかオーガとかバカでかい鬼とか猪とかもいるしドワーフがいても今更か。
いや待て。見た目がそれっぽく見えるだけの人かもしれない。この時代平均身長低いし。外見で妙な偏見を持ってはいけない。
そう考えるとなんか落ち着いてきた。
ので、ぽかんとしている信長と軍土に向き直って改めて礼儀正しく姫ムーブ。
「まあ、飛騨からはるばる?大変な状況の中よくおいでくださいました」
「あ、いや。これはどうもご丁寧に」
「帰ってきたか帰蝶。もういいのか?」
「帰ってきたのはノッブの方でしょ?私は落ち着いているよ。いいね?」
「ああ、はい」
見なかったことにすれば何もなかったことにするのは容易いのだよ。
私の驚きの理由は後ほどお話します。
みたいな意志を込めて信長を見つめると彼も頷く。
アイコンタクトは成功したんだと思おう。
「それで、三河童子を斬った刀でしたか?あれは朝廷の方で保管されてるんじゃ?」
「いやそれがな。魔物追討使就任の勅に合わせて下賜されたんだ。山科様が持ってきてくれた」
「あれ、そうでしたか?」
そういえばそんな事言ってたな。直して使えとか。あの時はその後が濃すぎてすっかり忘れてた。偉いお公家様なのに。山科様ゴメン。
「それよ奥方!帝が童子切信長と名付けた斬魔の太刀を是非見たいと思ってな!道三の婿殿が持ち主だってんで、紹介してもらったんだ」
「そんで尾張に置いてあるって言ったら付いてくることになってな」
「えーと、どこにあるの?」
「帝が御自ら名付けてくれたがありゃあなまくらだ。刀鍛冶には兵の武器を鍛える事を優先させてたから、まだ修理してなくてよ。
俺の部屋に仕舞ってあるんだ」
「えー……全然知らなかったよ」
「帰蝶は武器のことわからんって言ってたからな」
「いいから早く見せてくれ!童子切の名が付いた刀をみるのは久しぶりなんだ!」
安綱の方は見たことあるのかな。酒呑童子を斬ったほう。
今は足利の将軍様が持ってるんだったっけアレ。
私の知ってる史実だと足利義輝が三好に暗殺される時周囲の畳に名刀を突き立てておいて切れなくなったら交換して兵士を斬りまくった中の一振りだったとか。
江戸時代の試し切りでは何人かの死体を重ねてどんだけ切れるかやったら確か5~6人分真っ二つにできたとか。
いや罪人の死体とはいえずいぶん野蛮だねと思った事を覚えてる。
現代では国宝。ヤバい刀の代名詞として一部界隈では有名なんだよね。
そんな国宝と並んで「童子切信長」の異名を付けられた信長の大太刀。
迷宮のドロップ品だからまあ特別な一振りとは言えばそうなんだけど。
ちなみに、刀の名前って作った人の名前が付くんだけど、ドロップ品なせいで作った人がわからないので使用者の「信長」を付けたんだってさ。
御大層な名前が付いたけど、童子切信長は初めて私が迷宮に入った時に慶次を切りつけた大鬼がドロップしたものだ。
レアドロップではあるんだけど、同じものが兵の迷宮鍛錬中に何本か出てきてる。
重いしなまくらだしで、あんまり使い勝手が良くないんで信長以外は持て余すのでドロップしても溶かして兵の武器に姿を変えている。
迷宮鉄の塊だからね。そっちの方が使えるんだ。
概ね月に1本は出てたらしいし、イナリ教徒が入るようになってもっとたくさん出るようになるかも。
とまあ、そんな事を考えながら応接間で犬千代くんが童子切信長を持ってくるのを待つ。
軍土は小さいけれど筋肉ダルマでぱっと見おっかない。
腕とか私の胴くらいあるんじゃないアレ。
いくらレベルアップした私でも殴られたら痛そうだ。
気難しそうな職人っぽいのであまり怒らせないようにしよう。
ちなみに、軍土は飛騨山鍛冶衆という飛騨の山奥に住んで鍛冶を生業にしている一族の棟梁で、飛騨が魔境化してしばらくしてから美濃に避難してきたそうな。
非常に優秀な武器職人なので斎藤家の庇護下で武器を量産してたんだとか。
全然知らんかった。私美濃出身なのに。
「斎藤を頼って落ち延びられたのに私は全然知りませんでした。これは申し訳ございません」
「いや、ワシらが美濃に着いたのは奥方の輿入れ後だ。知らんのも無理はない」
「あー、そうだったのですね?……んー?」
「どうした帰蝶」
「あの、軍土殿。つかぬことをお聞きしますが」
「殿なんて付けられるような上等なもんじゃない。棟梁なんて言われてるが唯の鉄打ちよ。気楽にしてくれや奥方」
「は、はぁ。では軍土。……あなたがたは飛騨の山奥に住んでいたと聞きましたが、そこを出たのはいつぐらいなんです?」
「あん?集落を出てから1月程で美濃についたんだったか?」
「……飛騨は魔境となって久しかったはずです。どうやって美濃まで?」
「ああ、その事か。儂らは山の中に穴掘ってその中に住んでる。
魔物どもが現れて外に出るのはあぶねえからな。
美濃の側に穴掘って抜けてきたのよ。もともと途中まで掘ってた坑道があったからな」
やっぱりドワーフじゃないかな?
「それに美濃にはたまに降りて野鍛冶として仕事もしてたしな。
まあ、奥方の親父さんにも伝手があったし、美濃に行ったのよ」
うーん。いわゆるサンカといわれる人みたいな山岳民族にも聞こえる。
ほなドワーフじゃないか。
「そんなものが……飛騨の魔境討伐には良い通路になるかも。
ところで、軍土。すごく立派なおヒゲですね」
「奥方もわかるか!ワシらはヒゲが誇りよ!褒められるのはうれしいな」
やっぱりドワーフだ!
軍土のおヒゲを褒めたらちょっとムッとした顔の信長が顎を触りながら
「……俺もヒゲはやしたほうがいいか帰蝶?」
とか言う。
信長はあんまりヒゲ生える感じじゃないし伸ばさなくていいと思う。
史実に残ってる肖像画のおヒゲ、あんまり似合ってない気がするんだよね。
「ノッブのおヒゲはともかく」
「帰蝶!?」
「ともかく!飛騨の状況は詳しくお聞かせ願いたいですね」
「ああ、そりゃ気になるか。だがそんなことよりワシは童子切を見たい!話はそれからだ!」
うーん、興味が先に立ってるし、飛騨の状況についてはまた今度かなぁ。
……ちょうど犬千代くんが刀を持って来たようだし。
「との!姫様!持ってきました!」
抜き身で頭の上に掲げて持ってくるなよ危ないなこの小学生男子。
犬千代くんはガッツリレベルアップしてるので結構無茶をするやんちゃ坊主です。
というわけで今回はここまで。
また次回をお楽しみに。




