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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第78話「大抵のことは言ったもん勝ち」

日曜日なので第78話。


だいぶ間が空きましたが更新再開です。

 ばたばたどたどたとなんだか揉めながら大広間へと何かが近づいてくる。

 論功行賞の途中なのであんまり無礼なことだからか、集った皆様(当然戦国武士)の眉根が上がり、剣呑な雰囲気が広がる。

 またトラブルかい。しかも聞こえてくる内容が「仏罰が~」「我らが仏の化身~」などと聞こえるのでどうもお寺関係っぽい。

 そう言えば信秀パパノッブが本願寺の使者が来てるとかなんとか言ってたね。

 とはいえ、一体なんのつもりだろう。

 さすがにあちこちに多数の信者を抱えてテロまがいの一揆を起こしまくる本願寺とは言え、ここで無礼を働いたらずんばらりとされても文句は言えないんだけども。

 信秀パパノッブを見るとなんだかニヤリとしている。

 まさかこの状況もこのたぬき親父の陰謀なんだろうか。さすが今川義元や太原雪斎、ついでに父ちゃんマムシと謀略合戦を続けた尾張の虎。おっかない。

 果たしてどやどやと騒がしく現れたのはなんだか立派な僧衣に身を包んだ小太りのおじさんであった。坊主頭である。

 イナリちゃんが嫌そうな顔をしている。なんかあったんだろうか。


 「おお、こちらにおられましたかイナリ様!急にお姿が見えなくなったので心配いたしましたぞ!」


 ニチャア、とかいう擬音が聞こえそうなキモ……ゲフンゲフン!いや、なんだその、鳥肌が立つ……ゲフンゲフン!まあ端的に言ってお近づきになるのを躊躇するような笑みを浮かべた坊様が広間に響く声を上げる。

 

 「わらわはそなたに用はないのじゃが」


 「いいえ、あなた様は御仏の化身!ぜひ本願寺においでくださり、混迷極まる信徒にそのお声をお聞かせください!」


 「だからわらわは仏様の化身ではないと言っておろうに」


 イナリちゃんと本願寺の僧が話しているのを唖然と見守る私たち。

 流石に無礼が過ぎるので信長ノッブ平手政秀じいに目線をやる。

 穏便に咎めて追っ払えってところだろうか。

 微かに頷いた政秀じいが動こうとした時、信勝カッツが動いちゃった。


 「聞き捨てならん!イナリ様は尾張を救うために伏見の宇迦之御魂神うかのみたまのかみ様が送ってくださった我らが女神!御仏とは別系統の日ノ本の神である!

 何処の僧かは知らんが無礼千万!そこへなおれ!叩き切ってくれる!」


 要は解釈違いなんでおととい来やがれ、ってことなんだけども。

 目がぐるぐるしていて怖い。狂信者だからね。

 

 「仏様と無関係というわけでも無いのじゃがの。宇迦さまの茶飲み友達じゃし」


 イナリちゃんがつぶやいている。

 神様仏様は茶飲み友達なんかい。さらっと新事実をぶち込んでくるなこの子。

 ただでさえ戦国時代の人間関係の把握でいっぱいいっぱいなので、複雑な神様関係まで持ち込まないでほしい。

 激昂する信勝カッツを羽交い締めで抑えている勝家主従を横目にちと面食らった様子の坊様は慇懃無礼に挨拶をし、間違った教えを広められては困るとか言ってる。

 

 「というわけで、このような危険な尾張にイナリ様はふさわしくない。

 よって我らが本願寺へお越しいただき、汚れた魔物を滅す神威を示していただきたいと、憚りながらこの承和しょうわがまいった次第でしてな」


 いちいちニチャアとか擬音がなりそうな顔で言ってのける。

 うーん、どうしてこの状況で本願寺の言う事聞くものと思うのかしら。

 以前ならともかく、御仏の加護は疑問視されてる状況なのだけど。

 ああ、だからこそか。権威を維持するためのツールにイナリちゃんを使おうと。

 なんだか猛烈に腹が立ってきた。

 ここはマムシの血を解放する時か!

 すまん父ちゃんマムシ!あなたから受け継いだ血の力、今こそ解放する時!

 ……とか思い怒鳴りつけようとしたら、イナリちゃんがそっと私の袖を掴む。

 見ると、「良い」とだけつぶやいて一歩前に出た。


 「本願寺の承和とやら。先から何度も言っておるようにわらわは仏様の化身などではない。伏見は宇迦之御魂神さまの眷属である。それ以外の何者でもないのじゃ」


 「おお、それであればなおのこと!日ノ本では神と仏は同一のものでございます。ならば御仏の化身と言っても過言ではございますまい!

 それに、伏見は魔の者の手に落ち、もはや行く宛もございませぬでしょう?

 我ら本願寺ならば、伏見稲荷の再建もなりましょうぞ!

 しばし伏見から離れるでしょうが、宇迦之御魂神さまもこのような辺鄙な地よりもお近くにイナリ様がおられたほうがご安心召されるでしょう!」


 いやー何を必死になってるのか知らないけど、大勢の前でずいぶん尾張を馬鹿にしてくれんじゃんこのおっさん。

 温厚な私もブチギレ寸前ですよ?

 家臣たちも額に青筋浮かべて斬りかからんばかりの表情だ。

 信長ノッブが声を発すれば一気にこの場は処刑場になるだろう。

 戦国時代人は野蛮だからね。

 でもそうなったら本願寺と全面戦争になる。

 魔物と戦いながら本願寺とも争う羽目になるのはちょっと困る。

 イナリちゃんを挟んで佇む信長ノッブを見上げると。無表情で口を固く引き結んでいる。

 彼もかなりキてるねこれ。


 ……ただ、イナリちゃんが少しでも伏見に近いところで住みたいと言うなら、悪くない考えなのかもしれないのだ。

 今のイナリちゃんは伏見に帰りたいというのを私が無理言って押し留めているような状態だ。

 本来、彼女が出ていくと言うなら止める権利は私たちには無い。

 私と信長ノッブの半歩前で汚いおっさんと対峙するイナリちゃんの小さな背中とりっぱなおしっぽを見る。

 ……震えていた。

 怒りか、恐怖かは知らないけども、イナリちゃんが震えている。

 神様だけど基本はポンコツ幼女な彼女を前面に出して何をしているのだ私たちは。

 だから、私はマムシの血ではなく、前世から通算60年近く生きてきた大人として冷静に話すことにしたんだ。


 「承和和尚。イナリ様が御仏の化身であるとかは関係ございませぬ。大事なのは彼女がどうしたいか。

 ……神を我ら人の道理で操ろうなど、不敬が過ぎますよ?」


 「何だ女!小娘が口出しすることではないわ!」


 「わたくしは魔物追討使織田三郎信長の室、帰蝶にございます。

 恐れ多くもイナリ様の巫女としてそのお知恵を授かり、皆にお伝えする役目を賜っております。

 ……全てはイナリ様のご意思次第。本願寺がどうおっしゃろうと、わたくしはイナリ様のご意見こそが至上のものと存じまする。

 それをこのような形で押し付けようなどと……畿内とはずいぶんと進んだ作法がございますのねぇ」


 私の心に棲む京都人を無理やり動員して嫌味を混ぜる。

 我ながら拙いとは思うので、今度本場の京都人に指導を仰ぎたい。

 ちょうど山科さま来てるし。

 ともかく、拙いながらも嫌味は通じたのか承和は顔を赤くして怒りを顔に出して、なにか思いついたのかニチャアと笑った。


 「……ほうほう、貴女が巫女ですか。よろしいでしょう。貴女も本願寺に来られれば良い。イナリ様のお知恵を本願寺にもたらし、そうですな……そうしたお仕事もされれば、そのような田舎臭い着物でなくもっと美しい着物も着られましょうぞ」


 こいつ……!!

 私も本願寺に連れてって、いやらしいお仕事もしろってか!?

 いくらなんでも無礼すぎる!おさきと慶次が立ち上がりこちらに走ろうとしてる。

 あわわ、止める間も無い!と思ったらいつの間にか信長ノッブが承和の胸ぐらをつかんで片手で持ち上げている。


 「おう坊主。今てめぇなんつった?俺の帰蝶を……なんだって?」


 「ひっ、ひぃ!は、離せ!」


 「なんつったってんだよ。もう一度言ってみろや」


 「ぶ、仏罰が下るぞ!私にこのような真似をしてただで済むと!?」


 「おう下してみろよ。俺がぶっ殺してやるよ。仏だかなんだか知らんが、魔物をどうもできねえもんが俺を殺せるつもりか偉そうに」


 「ノッブ、仏様はとっても偉くて優しいので、悪いのは勝手をする僧なのじゃ。仏様はちょっと寛容すぎるのがアレなんじゃが」


 「おうそうか。じゃあ悪いのはこいつらだな。鬼にでも食わせるか?」


 「魔物に食べさせてもいいこと無いと思うよ」


 「そうだな。煮ても焼いても食えねえ奴らだ。さてどうしたもんか」


 「ひいいい!も、申し訳ございませぬ!お許しくださいいい!」


 涙ながらの謝罪の言葉が出たのでぱっと手を離す信長ノッブ

 どしゃりと崩れ落ちた承和はガタガタと震えてる。

 多分あの脅し魔力がこもった威圧になってた。

 承和の背後にいた家臣が青ざめてるし。

 すげえな魔力。

 信長ノッブはイナリちゃんを見て話し始めた。


 「イナリが行くと言うなら認めるつもりだったが。

 ……そのつもりはないみてえだな?」


 「モチのロンじゃ!わらわはきちょーが大好きだし、ノッブもおいちも、尾張の皆が大好きじゃ!だからしょーわ、お主のところには行かぬよ。すまぬのう」


 「そ、そんな!イナリ様我らをお見捨てになるのですか!」


 「お主らは仏様の信徒であろう。仏様におすがりするのが筋というものじゃ」


 「そんなぁ!どうかお慈悲を!」


 「そんな事言われてものう」


 「めんどくせえからぶっ殺せばいいんじゃねえか?」


 「余計に面倒になりそうだからちょっと待とうよノッブ」


 どうしたもんかと衆人環視のなか物騒めな感想を言いあう私たち。

 そして承和がイナリちゃんに向かって最後の抵抗を試みた。


 「ぐぬぬ……!このような偽の神に惑わされるとは!御仏の加護こそが真の救いである!」


 数珠を高く掲げてそして何かのお経を唱え始める。

 信長ノッブの目が座る。さっきあんだけやり込められたのにすごい度胸だ。

 さすがの私もこれには呆れ顔。

 あーあ、死んだわアイツ、みたいな気分である。


 「やかましいのう」


 次の瞬間、イナリちゃんが指をくいくいと動かし、光る縄が承和の体に巻き付いた。

 数珠が床に落ちる。ついでとばかりに猿轡まで出てきた。


 「んーーー!?」


 あ、これ土御門様にやったやつだ。

 大広間が静まり返……いや一部の陰陽師二人がああでもないこうでもないと歓喜の声を上げてやかましいし一部狂信者も同調するな、うるさいよそこ!

 イナリちゃんが承和の前に歩み寄った。

 幼女がりっぱな僧服の僧侶(ただし光る縄でぐるぐる巻である)の前に立って見上げている。

 誰がどう見ても圧倒的にイナリちゃんの方が格上だった。


 「仏様は宇迦様の茶飲み友達じゃ。その名を汚す真似をするでないぞ」


 「んーー……」


 承和が青ざめながら頷いた。

 

 「よろしい」


 イナリちゃんが術を解き、承和がへなへなとその場に崩れ落ちた。

 これが生臭坊主が「本物を見た」瞬間だった。

 ハッとした承和はイナリちゃんに平伏し、


 「真の神に対し、大変な失礼をいたしました!お許しください!

 そして私に、いや本願寺に御慈悲を!」

 と叫ぶ。なんだか哀れにも思える。

 いや無礼過ぎて尾張を五体満足で出られるかも怪しいけども。

 ヤクザ裸足の野蛮な戦国時代なのでこれはしょうがない。

 さてどう料理しようかとアイコンタクトしている私と信長ノッブだったが、ここで目をぐるぐるさせた狂信者が大声を出す。


 「そういうことならば承和どのも含め、本願寺はイナリ様を祀る事にすれば良ろしい!!」


 余計なこと言うな。

 そして「その手があったか」みたいな顔をするな生臭坊主!

 ニヤリとしているたぬき親父とダンマリを決め込む雪斎が怖いし、ぽかんとしてるけどなんかメモを書いてる山科様も怖い。何このカオス。


 「そ、それは、その……それでよろしいので?」


 「うん?仏様はとても寛容なのでわらわも一緒に祀ったところで何も言うまい。

 あー、わらわが宇迦さまに怒られるかの?でも別にいいような気もするのじゃ」


 どっちだよ。

 ともかく、恐慌状態の承和は平伏して


 「わ、私の一存ではどうにもなりませぬ!一度教主と相談に戻る必要がございます!

 此度は大変失礼いたしました!拙僧はこれにて!」


 「わらわはそっちには行かぬと言っといてのー」


 呑気なイナリちゃんの声を背に慌てて去っていく本願寺の僧。

 えーと、どうしようこれ。


 「ま、そういうわけでイナリの神威を世に広める事も我らの仕事ってわけだ。これから忙しくなるぞお前ら!だが手柄を立てれば褒美は思いのままだ!俺達は大きくなるぞ!いいな!」


 なんかヤケクソっぽい信長ノッブの宣言に、みんな「ははぁっ!」と答えてなんだかグダグダ感が残りつつ論功行賞式は終わったのだった。


 勢いって大事だよね。


帰蝶ちゃんトラブル体質で大変ですね。みたいな話。


人生に悩んだりネット環境がぶっ壊れたりして再構築に時間がかかりましたがまあそれは些事です。

これからもぼちぼちやっていきます。

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