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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第76話「正座だからしょうがない」

土曜日なので第76話です。


蒸し暑くなってきましたね。体には気をつけましょう。

 論功行賞式が始まったのは正午だった。

 先ほど家督継承式を行った大広間に、織田家の諸将が序列順にずらりと座り、入りきらない下級武士は庭にまで座ってる。

 流石に地べたに座らせるのもあんまりなんで茣蓙を敷いてるよ。

 論功行賞って通常は主だった武将が広間に詰めるだけで、活躍した直臣を通じてその部下に褒美を与えるものなんだけど、今回は家督継承直後だしこれまでの戦とぜんぜん違う戦争に関するものだしで、異例ではあるけど下級の武士にも来てもらった。

 尾張のトップが信長ノッブに変わったよ、ってできる限り多くに知らせる目的があるんだよね。


 私たち3名が大広間に入り、信長ノッブ信秀パパノッブが一段高くなった上座に座る。私は上座の隅に正座だ。

 家臣の皆様は一斉に頭を下げる。

 おさきをはじめとした尾張女子大学寮の面々が庭にいるのが見えた。

 女の子をそんなとこに座らせてすまん。

 本来女の出る幕ではないんだけど、織田の正室だときちんと家臣に「わからせる」ためにここに座る。


 ……ただ、さっきの話によるとイナリちゃんの巫女としてぶち上げるんだよなぁ。

 こんなことなら姫ムーブだけじゃなくて聖女な巫女ムーブも練習しておくんだった。

 巫女ってどうすりゃいいのよ。紅白で脇が見える衣装でも着ればそれっぽくなるだろうか。私弾幕出せないんですけど。

 内心テンパりながら姫ムーブを継続する。これで怜悧な美少女に見えてるはず。いやみんな頭下げてるから見えないだろうけどさ!

 

 しばらくそうしていて、信長ノッブが私をみた。

 イケメンしゅぎる♡

 いかんいかん、そうではない。

 信長ノッブの隣に立つと決めた私の、正室としての初めてのお仕事だ。

 やりますよやってやります!!という気持ちを込めて頷く。

 そして信長ノッブがニヤリと笑い、前方で頭を下げる家臣に向かって


 「一同、おもてをあげよ」


 と声をかけた。




 ざっ、と言う効果音が聞こえそうな勢いで頭があがる。

 後ろの方で頭を上げた人のきれいに剃り上げた頭に南から入った日光が反射してすごく眩しい。眼がちゃんと開けられないので私は少し座る位置をずらした。

 いや晴れの日だからってきれいに剃りすぎだよ。武士とは言え普段は髷も適当でなんなら一括りにしておっさんポニーテールになってる奴も多いのに。

 魔物相手の異様な戦だったし盛大に戦勝したから高揚してるんだろうね。


 褒美もたくさんもらえる期待が高いんだろう。

 実際、支配者がほぼいなくなった尾張北部や三河の土地を任せるのでそりゃ大盤振る舞いではある。

 前支配者はいないけど、領民もいないんだけどね。正直な話貧乏くじと言われないかちょっと心配している。

 おすまし顔をしつつ相変わらずどうでもいい事を考えている私をよそに、信長ノッブが話し始める。


 「論功行賞の前に改めて宣言する。

 先ほど行われた家督継承式によってこの三郎信長が織田家の当主となった。

 あわせて、此度の魔物討伐の功が帝のお耳に入り、恐れ多くも魔物追討使という職を賜った。これもすべて皆の尽力のおかげと思う。この信長、改めて礼を言う」


 軽く頭を下げる信長ノッブに家臣たちが小さくどよめくのが聞こえる。信長ノッブとあまり絡んでこなかった人らだろう。

 魔物が出るまでうつけ者扱いで、その後は魔物を蹴散らす古今無双の武者として知られてるので案外穏やかで常識的なのが意外だったんだろう。

 そんな乱暴者だったらこの帰蝶ちゃんがこれほど惚れ込むもんか。

 私の信長ノッブは紳士で強くてどちゃくそイケメンでそれでいてワイルドでスパダリなのだ。

 ふふん、貴公らも認識を改め給えよ。


 「帝が慣例を破ってまで新設なされたお役目をこの信長は魂に刻んで今後も励むこととする。皆にも苦労をかけると思うが、功を上げれば必ず報いるゆえ、恐れずついてきてほしい。

 ……では、先の三河魔境討伐の論功行賞を行う」


 そうして始まった論功行賞は、悲喜こもごもと言える。

 論功行賞がどうなるかは当然事前に聞いているよ。受賞者に事前に話さないのかな、と言ったら不満を抱えて式を襲撃するアホがいるので事前にお知らせはあまりしないんだそうな。なるほど。


 さて、実際の勲功一位は敵の大将ともいえる将鬼……三河童子を直接討ち取った信長ノッブなんだけども、


「自分で自分を賞してどうする、そもそも帝からすでに褒美はもらっている」


と言って笑いを取り、桶狭間の奇襲で織田・今川連合軍総大将の今川義元を三河童子の暴威から守りきり、討伐で重大な役割を果たした上泉信綱が勲功一位となった。

 信綱は三河に結構広い領地を与えられたが、織田家武芸指南役の役目も与えられたので実際の領地経営は関東から連れてきた親族に任せる形になるだろう。


 剣術指南役じゃないのかって?

 信綱はさすが剣聖ってくらいに剣以外も達者なので対魔物戦闘術の研究にあたってもらうのだ。槍やなぎなたでそれぞれ達人がいるのでそれらの取りまとめだね。

 実質戦闘技術研究所なんだけど、いきなりそんな聞き馴染みのない組織作ってもアレなんで、馴染み深くてわかりやすい織田家の武芸指南役としたのだ。

 道場に多くの武芸者を集めて研究に励んでほしい。


 勲功二位は滝川久助一益。ニンジャ部隊の潜入調査と偵察が戦の趨勢を決めたので当然だと思う。本来なら一位でもいいんだけど、三河童子の計略に引っかかったのが一等落ちる要因となったようだ。

 厳しすぎると思うけどなぁ。魔物が案山子用意してこっちを欺こうとするなんて誰も想定してないじゃない。

 そう信長ノッブに言ったら


「それで帰蝶が危険な目にあったのが許せん」


 と言われてしまったのでもう許すしか無いじゃない♡

 すまん久助、帰蝶ちゃんが愛され過ぎているばっかりに。うへへ。


 その他、大鬼を多く討ち取った迷宮強化部隊の隊長格がそれぞれ表彰され、彼らを傘下に入れてる重臣たちも嬉しそうだ。

 隊長格は尾張北部の武士だった人も多く、本領に復帰したり領地が広くなったりと大盤振る舞い。ただ人が少ないんでそこはまた別に考えなきゃなんないよね。

 レベルアップした本人含めて兵は重機並みに仕事ができるはずなんで、とりあえずは開墾など頑張ってほしい。

 浪人出身だった兵も三河に土地をもらったり、どよめきが絶えないのが印象的だ。


 反対に、清須織田家とかから逃げてきて後ろでわいわい言う割に迷宮に入るでもなく、三河戦にも批判的であまり働かなかった者はちょっと悲惨だった。

 彼らの家臣筋でも必死に鍛えて戦った者が加増される一方で、彼ら自身には旧領のごく一部も渡されなかった。

 どういうことだ、自分はお前の主家筋の清須織田家(信長ノッブの織田家は清須織田家の奉行という立場だったのだ)のなにがしだぞ、などと言い募るのを信長ノッブ


 「そなたらでは治められぬ故、渡さぬ」


 の一言で黙らせていた。

 それほど大声ではないのに不思議と城中に響き渡るような感じがした。

 多分声に魔力が乗ってたんだろうね。

 眼光も鋭くて、叱責された人が顔真っ青にしてたのはちょっと胸がすく気分だった。

 清須織田家のだれだれって、前当主のいとこの甥とか言う絶妙に他人じゃん。そもそももうその清洲織田家が消えて無くなってしまったので尊重する必要はない。

 それと、尾張は平定されたけど、魔物が全くいなくなったわけではない。

 隠れ棲んでる魔物もまだまだいるので、魔物と戦えないと領主なんか任せられないんだよね。

 迷宮には入らずとも魔物と戦っていない、つまりちょっともレベルアップしていない者に土地を任せるわけにゃいかんのだ。


 無駄にうるさいだけの抵抗勢力が黙り、あらかた褒美を渡し終わったところで、信長ノッブが私の方をちらりと見たあとに皆に向かって言う。


 「最後に、尾張女子大学寮。生徒筆頭、織田帰蝶、前へ」


 キタコレ。

 姫ムーブ全開で「はい」と言って立ち上がろうとした私は


 「ひゃいっ!」


 と裏返った声で返事したあと、足がしびれていたので盛大にすっ転んだ。

 すまん。私は本番に弱いの忘れてた。


さあどうぞという時ここぞという時そのまま一気に全身硬直~♪

みたいな話。


というわけで今回はここまで。

次回をお楽しみに。

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