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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第75話「父はマムシで義父はたぬき」

木曜日なので第75話。



 「んで、イナリ様絡みでもう一つ言っとくことがある。三郎も初耳だろうが、知っとけ」


 もうそろそろ論功行賞式に行かなきゃね、ってとこで信秀パパノッブが姿勢を正して言う。

 なんだろ。伏見稲荷大社の続報が入ったとかかな。

 良い知らせだといいんだけど。


 「非公式だが、本願寺の使者が来てる」


 「何?」


 「えっ何しに?」


 本願寺は史実で信長ノッブの最大の敵になった宗教勢力だ。

 所在地は現代で言う大阪になる。跡地は大阪城になった。

 比叡山の焼き討ちが有名な織田信長だけど、対峙した期間は本願寺のほうがよっぽど長い。

 この時代、お寺さんも武装してて大名とどう違うんだかわかんない感じになってる。

 現代のマイルドで優しい仏教は江戸時代に幕府が徹底的に叩いて伸ばした結果なんだよね。

 長島にある(あった)願証寺ってのがその本願寺系列の大寺院で、魔物に占拠されて囲んでいる一向宗ってのは本願寺の傘下みたいなもん。

 細かく言うと違うらしいけど、実際本願寺の言う事聞くんだから傘下でいいでしょ。

 ともかく、念仏唱えたら誰でも天国行けるってんでとにかく民衆受けが良い。

 それが「戦わなきゃ仏敵」「戦死したら極楽」みたいに煽られてゾンビ戦法かましてくるんだから戦国時代の武士が苦戦するのは無理もない。

 そんな宗教が一体何しに来たんだろう。

 イナリちゃんが美幼女なので多少はしょうがないのかもしれないけども。


 「そりゃあ、イナリ様を探りにだよ。熱田に神の使いがウロウロしてるってのは結構広まってんだ。正直なところ、今川や朝廷が動かねえのが不思議なくれえだ。

 んで、本願寺はこのバケモン騒ぎのせいで基盤が揺らいでる。

 ケツに火がついてんのさ。長島も囲わにゃなんねえ。加賀は海辺まで魔物に押し込まれて風前の灯。だが念仏唱えようが魔物は止まりゃしねえ。

 ……熱田に神様がウロウロしてるってんならさらってでも御本尊に仕立て上げてえところだろ」


 マジか。そんな事なってんの?

 ……ああ、考えてみれば京が壊滅していよいよ魔物対策を求められてるけど念仏唱えたって魔物は止まらない。

 他の寺社と同じ状況なんだ。

 

 「まさか、黙って言う事聞く気じゃねえだろ、親父?」


 「もちろんだ。あんな生臭どもにいいようにやられてたまるか。

 実際な、もう本願寺に煽られて一揆起こす奴なんかほとんどいねえよ。

 長島を囲ってんのもこの状況で飯食わせてくれるから、なんて奴らばっかりだ」


 「そ、そんな情報、どうやって……」


 「俺だってその手の者は抱えてんだよ。帰蝶ちゃんの作ったニンジャみてえな真似はできねえがな。魔物にゃ無力だが、人が相手なら話は別だ」


 ほわぁ。さすが傑物織田信秀!イケオジ!

 ……考えてみたら、ほんとにすごいなこの人。

 歴史知識もチートもなくて、実質何にもわからず戦国時代に放り込まれて、輿入れの話が出るまで私がこれっぽっちも気づかないほど史実と全然違いがない状況に持ってってたんだ。

 歴史の修正力とかそういう事?

 いやあそんなちゃちなもんじゃあ断じてねえ、もっと凄まじいものの片鱗を味わった気分だ。


 「とまあ、そんなわけで本願寺がちょっかいかけてくる前に、その、なんだ?

 イナリちゃん様教だったか?それとっとと作っちまえ」


 様、はつけなくていいんだけども。どこから湧いてきたんだそれ。

 とっとと作れと言われても……

 ねえ?と信長ノッブを見るとため息を付いて首を振っている。


 「そういう事か。はぁ、また仕事が増えたぞ帰蝶。当主になっても楽にゃなんねえなこりゃ」


 「ええと、私も流石に宗教の作り方なんて知らないと言うかなんというか……」


 「細けえことはいいんだよ。教義なんざ勘十郎にでも書かせりゃいい」


 戸惑う私に信長ノッブが言う。

 いやいや確かに謎の狂信者化を果たしたけども、病み上がりの信勝カッツにまかせていい仕事じゃないと思うんだけど!

 イナリちゃんの意見も聞かなきゃだし……

 

 「帰蝶ちゃん、こういうのはな、早いもん勝ちで、言ったもん勝ちなんだよ。

 だから、本願寺が余計なこと言う前にぶち上げちまう事が何より大事だ。

 ……ちょうど良い舞台がこの後あるじゃねえか」


 ちょっマジかこのおっさん!

 論功行賞式でイナリちゃん教旗揚げしろって?

 いや宗教始めるのが旗揚げっていうのかは知らんけど!


 「しゃあねえ、やるか。細けえことはいい。

 今後の織田家はイナリ様の神威を受けて進むってバッチリ言えってことだよな、親父?」


 「そうだ。勘十郎なんかは泣いて喜ぶはずさ」


 「んじゃ帰蝶、お前はイナリ様の巫女な」


 「まってまって!なんでいきなりそんなことに!?」


 この親子ヤバいよ!「サッカーやろうぜ!お前ボールな!」みたいなノリで変な役職に付けないで!


 「なんか知らんが熱田迷宮にいたイナリに気に入られて外に連れ出したんだからあながち間違いでもねえだろ?」


 「いやそれは成り行きで!私そんな聖女みたいな事できない!

 あれでしょ、魔物に噛まれても「怖くない、怖くない」とか言って撫でてみたり、キラキラお目々で「人はみな平等なのです」とか言ってみたり、何だったら「妹のほうが聖女にふさわしい」とか言われて追放されたりするんでしょ!」


 「良くわからんがずいぶん詳しいじゃねえか。それも前世の物語か?」


 「いや、まあはい」


 「別に変な役割じゃねえよ。お前はイナリ様に導かれて迷宮に入り、助け出した後はその知識を授かって織田家に助言してる、ってそういう体の役割だ」


 「へっ、あー?うん?つまり……」


 「つまりな、帰蝶ちゃんが特別なのはイナリ様のご加護の賜物って事にすんのさ。

 良い隠れ蓑になると思うぜ」


 「義父さま……」


 「俺ぁ明治生まれ戦国育ちの古い人間だがよ。今が前世の大戦みたいな……何つったかね、総力戦?と同じだと思ってる。

 ありゃあな、兵士が戦えばいいってもんじゃねえ。銃後……銃後ってわかるか?

 ともかく、後方にいる老若男女が全員でかからにゃどうにもなんねえんだ。

 だから、帰蝶ちゃんの案で女も鍛えようってのは大賛成だ」


 女は引っ込んでろって考えじゃなくてよかった。結構開明的だね信秀パパノッブ

 

 「だが、今の男連中はほとんどがそうは思わねえ。女の股から産まれといて偉そうにしてやがるがな。ロクに飯も炊けねえくせに偉そうにしやがって」


 それは確かに。


 「そんな馬鹿どもに文句言わせねえためにイナリ様の御威光をお借りするってわけだ」


 なるほど。私が勝手なこと言ってるんじゃないよ、ってことか。

 神様の思し召しなのだから従えってことね。


 「うーん……そういうことならわかりました!女は度胸!いっちょ巫女でも聖女でも悪役令嬢でもやってやろうじゃないか!あ、でも追放は勘弁ね!」


 「やたらと追放とか言うなよ。俺がお前をないがしろにしてるとか言われたらどうすんだ」


 信長ノッブが顔を歪める。

 ごめんなさい。


 「見切り発車だろうがなんだろうがやっちまえ三郎、帰蝶ちゃん。この後の論功行賞式、家督継承式より重大だぞ」


 「んなこと言って、どうせ母さんや勘十郎には根回し済みなんだろ?」


 「あったぼうよ。いいか三郎、博打に勝つにゃ準備が必要なんだ。博打に勝つコツは、博打じゃないことを博打に見せることだぜ」


 「それって博打じゃないんじゃ……」


 「負けるかもしれねえ博打なんかやってられっか。だが「博打に強い」って思われるのは信頼につながる。だから俺ぁ博打に強いツラしてんのさ」


 とんだ狸親父である。

 父ちゃんマムシと同類だこの人。

 とは言え、演出が大事ってのは完全に同意です。

 こうなりゃキラキラな巫女姫様を演じてやろうじゃないか!

 ……待てよ、イナリちゃんは大丈夫かな。

 あの子たまに鋭いけど基本ポンコツ幼女なんだけども。


 ちょっと不安だけど、もう根回ししてる時間もないので私たちは論功行賞式典の会場に向かうのだった。


謀略には向かない系ヒロイン帰蝶ちゃんの明日はどっちだ。


というわけで今回はここまで。

貴公、ポイントとかリアクションがあると大変元気になるのでどしどし応援してくれたまえよ。

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