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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第2部 「ナーロッパってこうだったっけ」

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第67話「この青ニート枠を作った奴は誰だぁ!」

月曜日なので第67話。


 広間に入ると、先に入っていた信長(ノッブ)が上座に座り、下座は多くの家臣が詰めていた。上座の中心は信秀(パパノッブ)と土田御前(ノブマッマ)がこのあと入場して座るので、私は上座でも隅の方だ。


 今回は勝幡城詰めの信勝(カッツ)麾下の家臣団で、時代劇で見たように頭を下げている。

 勝幡勢は信秀(パパノッブ)と信長(ノッブ)に忠誠を誓ってますよ、と態度で示してるんだよね。

 信長(ノッブ)が家督を継ぐことはすでに周知されていて、特に異論は出ていないそうだ。

 史実と違って明確な英雄としての評価があるからね信長(ノッブ)は。

 信勝(カッツ)が余計な事しなきゃいいんだけども。


 そうこうしているうちに信秀(パパノッブ)と土田御前(ノブマッマ)が広間にやってきて、年始の祝賀の儀が始まる。

 これ、お城ごとにやるんじゃなくて一気に集めて一回で終わらせられないのかな。

 年始の大評定とか、そういうのにすることを信長(ノッブ)に提案しよう。


 そんなよそ事を考えながら代表者信勝(カッツ)が年始の挨拶をしているのを聞いて、なんか元気ねえなと思っていると「面をあげよ」と信秀(パパノッブ)が許可を出す。

 この後顔を上げて「今年もよろしく」みたいな声を信秀(パパノッブ)がかけて、当たり障りのない世間話をして年始の祝賀は終わりだ。

 んで、勝幡城のみなさんが顔を上げたんだけども。


 うおお柴田勝家マジで髭面むさ苦しいなまだ30ちょいくらいだったはずだけど、とか。

 あれが林通具か史実で信勝(カッツ)煽りまくったらしいし人相悪っ!要警戒かもしれんねとか。

 そんな事全部まるっと吹っ飛ばすくらいに、信勝(カッツ)の顔色が悪かった。


 まず目の下のくまがひどいし顔色は青白いし頬は痩せこけててなんか今にもあの世にヒッチハイクでもしそうな感じだ。

 戸惑って信長(ノッブ)を見るとなんだか焦った様子で信秀(パパノッブ)を見ている。

 土田御前(ノブマッマ)は今にも飛び出しそうな様子。珍しいことに心配が完全に顔に出ている。

んで、信秀(パパノッブ)は。


 「勘十郎?どうした勘十郎!?おいテメェら医者を呼べ!布団もってこい早く!」


 ぽかんとした後盛大に騒ぎ始めた。



 「テメェらどうしてこんなになるまで放ってやがった!言ってみろ林コノヤロー!返答によっちゃただじゃ置かねえぞオイ!」


 祝賀の儀どころじゃなくなって、急遽隣の部屋に運び込まれて温かなオフトゥンに寝かされた信勝(カッツ)。

 隣の大広間からは信秀(パパノッブ)が怒鳴り散らす声が聞こえてきてうるさい。

 信秀(パパノッブ)が取り乱すところなんて始めてみた気がする。いや、それほど面と向かって話したことないけどさ。

 というかなんでべらんめぇ口調なんだあの人。

 

 正月から呼び出されたお医者様によるとどうも過労と気鬱であるとの事だ。

 オフトゥンに寝かされた信勝(カッツ)は土田御前(ノブマッマ)の手を握ってカタカタ震えている。

 史実の信勝(カッツ)のイメージが何度も謀反を起こした野心家なのでどうにもしっくりこない。

 でも線の細いイケメンが震えているのはなんだか背徳的な喜びをもたらしているような気がしないでもない。

 いかんいかん、どうでもいいことを考えている場合じゃない。

 私は義姉として家族の会話に混ざらざるを得ないのだけども、どうにも手持ち無沙汰だ。

 信長(ノッブ)は腕を組んで目を閉じて何かを考えているが、眉間のシワがすごい。

 土田御前(ノブマッマ)は普段の淑女ぶりをかなぐり捨てて幼子にするように信勝(カッツ)を撫でたりして慰めている。涙目なのは見なかったことにしたい。


 「まったくあやつらは役に立たねえ!俺の息子をどうするつもりだ馬鹿どもが!」


 ぷりぷりしながら信秀(パパノッブ)がやってきた。

 お説教が終わって家臣は城から叩き出したらしい。

 いや、庭で柴田勝家が土下座(ゲザ)してるらしいが暗くなるまで放置で良いとのことだ。

 何があったか知らないけど、勝家は信勝(カッツ)への心配が強い忠義者なのだろうね。


 「勘十郎、ここには鬼も何もいない。今頼光とか言われてる三郎もいる。安心しろ、な?」


 優しく声をかける信秀(パパノッブ)。

 なんかいろいろやばめの策とか飛ばしてくる「尾張の虎」とはイメージが違うなぁ。


 「親父、林や権六はなんと言ってた?」


 「それが、要領を得ねえんだよ。なんなんだあいつら」


 「……あの者らを、責めないでください。僕が、僕が弱いからいけないのです……」


 すっごいか細い声で信勝(カッツ)が言う。

 ふるふる震えてなんだかかわいそうが強い。

 無理はするなと言う家族を抑えてオフトゥンに座り直した信勝(カッツ)は、ポツポツと語りだした。


 曰く。

 熱田から噴出した魔物を抑え、各地で意味のわからないバケモノと戦う羽目になったのが、どうにも耐えられない。

 戦は世の常であるので武家として覚悟を決めてきたつもりだったが、老人や女子供、果ては生まれたばかりの赤子までをも食い散らかす魔物の姿に恐怖が拭えないのだと。

 あんなものが出てくるなんて信じられない。自分はこんな世で生きねばならぬ大罪を犯してしまったのかと思い、寝れば悪夢に起こされ、物音が聞こえれば鬼の影を見て、休まる時が無い。

 もはやこの上は御仏の慈悲に縋って生きる他はない。

 父上や兄上には申し訳ないが、出家したい。


 語り終えた信勝(カッツ)は静かにすすり泣いている。

 これは……どうしようね。

 私が聞いて良い話なのかはわかんないけども……

 完全に心折れちゃってるよね信勝(カッツ)。

 フロ◯ゲー名物青ニートみたいだ。あまりに痛々しすぎて見てられない。


 とりあえず彼は今すぐ寝るべきだ。悪夢にうなされず、深く深く。

 痛いほどの沈黙を破って、私は信長(ノッブ)に声をかける。

 

 「三郎様、ここはイナリちゃ……イナリ様におすがりしましょう。勘十郎様には休息が必要です」


 「そうだな。頼めるか帰蝶?」


 そうしておさきにイナリちゃんを呼びに行かせ、やってきたイナリちゃんを見て


 「ひっ、ひいい!魔物!」


 と怯える勘十郎様。

 なんだかショックを受けたっぽいイナリちゃんに例のよく眠れる術をお願いし、信勝(カッツ)にはぐっすり寝てもらった。



 「なるほどのう。かっつはよほど恐ろしく思っているのじゃな」


 寝てる病人の側で話すのもアレだよね、ってことで広間に場所を移して話し合う私たち。もちろんお医者さんと侍女はつけて急変に備えているよ。

 信勝(カッツ)の様子を聞いたイナリちゃんは腕組みをしてうんうんと頷いている。

 たぶんよくわかっていない。


 「戦のあと、あんな風になる兵士はたまにいるんだよなぁ。そのまま土蔵に引きこもっちまうやつもいるとかなんとか」


 信秀(パパノッブ)がぼやく。


 「そんな、なんとかなりませんか殿!」


 「俺だってなんとかしてやりてえよ。でもこういうのどうしたもんか……」


 「こんな事ならあの子を勝幡に残すんじゃありませんでした……うぅ、勘十郎……」


 「泣くなおはる。俺達がしっかりしないでどうする」


 夫婦の会話だ。大事な子供がもはや死にたいに等しいことを言うのは、とても耐えられるものじゃないだろう。

 辛そうな顔をした信長(ノッブ)が私に問うてきた。


 「帰蝶、何か良い案は……あるわけ無いよな。お前は医者じゃないもんなぁ」


 うーん、確かに私はお医者さんじゃないけど……

 様子を見るに、どうもなんかこう、PTSDとかそういう類のやつなんじゃないかな。

 でも、今は戦国時代でこういう精神的な病は悪霊とか祟りとかで片付けられる時代だ。

 そのまま言っても通用するとは思えない。

 ああ、そっか。イナリちゃんがいたね。

 ここは神様の権威におすがりしようそうしよう!

 そう思い立った私はイナリちゃんに問いかける。


 「ねえイナリちゃん、勘十郎様になんか悪霊が憑いてるとかそういうのじゃないんだよね?」


 イナリちゃんは神様なのでそういうのもわかるんじゃなかろうか。

 これまで聞いたことはないけどね。

 「あそこにお化けがいる」とか言われたら怖いじゃん。私にはどうしようもないし。

 

 「んむ?あくりょー?よくわからんが、かっつには何も憑いておらんぞよ。

 気が乱れて辛そうじゃったのじゃ。らんたちと同じく、よく眠れば良くなると思うのじゃ」


 カステラをもぐもぐしながらのほほんというイナリちゃん。

 強く反応したのはやはり土田御前(ノブマッマ)だった。


 「まことでございますかイナリ様!?勘十郎は、勘十郎は……!」


 「そうじゃの。世の理が変わり魔物と対峙せねばならぬ者にとっては大変な苦痛もあろう。人同士の戦でも病む事はあるのに、どうして病まぬ者がいようか。

 許されるのならば、かっつは休ませてやるのが良いとわらわは思うのじゃ」


 実に神様っぽい素晴らしいアドバイスである。カステラのくずで服が汚れてなければなお良かった。

 土田御前(ノブマッマ)と信秀(パパノッブ)は涙目で頷き、深々と頭を下げている。

 神様の権威は偉大である。

 この勢いに乗って私も療養の案を出す。

 

 「とにかく、詳しいお話は療養の後が良いんじゃないでしょうか?

 私も専門外でよく知りませんが、ああした症状で病むものは前世でも多く、職務や義務から離れて静かな環境で療養するのが良いとされていました。

 決して本人を責めず、職務を思い起こさないよう気をつけて、今後の話はとりあえず避けてください。考えが偏った状態なので決断が必要なことは極力避けてください。

 眠れないのが大変よろしくないので、私の侍女と同じように寝る前にイナリちゃんのよく眠れる術をかけてもらうとよいかと」


 私の前世のことはこの場にいる人はみんな知っているのでふわっとした知識ではあるけど話してみると、なるほど道理だと言うことで信勝(カッツ)の療養が決まった。

 いや本人は寝てますけどね。

 ともかく、これを機に精神的な病の扱いが変わってくれると良い。

 気鬱の病は治る病なので、きちんと治療すればまた活躍できるのだ。

 ついでにいうと、信勝(カッツ)くらいまだ若い子が戦場に出ないで済む仕組みを作らなきゃ。誰がって、私と信長(ノッブ)で。


 目を覚ましたらカウンセリングと言うか、本人の気持ちを探るためにお話をすることとなったけど、どうしてかそれに私も立ち会う事になったのは謎であるけど。

 可愛い義弟(青ニート)のためにひと肌脱ぎますか。

 

 ……まだ土御門様のお手紙の処理しなきゃいけないんだけどね!

 くそう忙しい!正月はのんびり過ごすもんじゃなかったかなぁ!?


青ニートって大概最後には……

いまのところそうするつもりはないですよ。本当です信じてください。


というわけで今回はここまで。

よかったらポイントやらブクマやら入れてくれると大変元気になります。



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