第66話「休暇直前に来る知らせは大概厄介」
土曜日なので第66話。
日が空きましてすいません。忙しかったんです!
新年あけましておめでとうございます、みたいな声が聞こえてくる。
ああ、ついに年が明けてしまった。
あれから私は土御門様がよこしてきた手紙を読み込んでお返事を書く作業に忙殺されている。
つづらの中に入っていた手紙は辞書みたいな分厚さの織田家というか私宛ての手紙が一つと、あとは各地の陰陽師や土御門様の知り合いな修験者、呪術師占い師超能力者異世界人宇宙人等々、とにかくオカルト関係者へ宛てた手紙の束だ。それぞれが文庫本くらいの厚みがある。
余計なこと書いてないか検閲する必要もあるんでいちいち全部読まなきゃならないのが辛い。
内容は大体
「尾張の織田家が退魔のために術の研究をしてるので、よかったらお前も来ねえ?いやむしろ来い来ないと朝敵処すので来い今すぐ来い」
みたいな内容で、鬼気迫りすぎておっかない。これも読み進めるのが苦痛な理由の一つだ。織田家の名前や朝廷の権威を勝手に使っていいんだろうか。
後でトラブルになりそうな気がするけどもう知らん。
私宛の手紙には涼風様を呼びつけて研究内容を聞いたり、実際に涼風様と試した研究結果が延々と書かれていて、符ではない木札への呪文の転写についての考察が延々と書かれてた。
一月近くおとなしくしてたと思ったらそんなことしてたのか。涼風様は災難だなぁ。
で、研究しつつこの手紙書いたのかよあの人?どんなバケモンだよ。
曰く、符以外の木札などにそのまま呪文を書いても術は動くが異様に魔力の通りが悪く、どうせならといろんな素材に書いて試したら素材によって魔力の通りが違うことを確認したのだとか。
特に涼風様のつてでニンジャに取ってきてもらった迷宮鉄はやたらと魔力の通りがよく、術の発動がスムーズだったので魔導を使用するのにはもっと良い素材があるのかもしれないと考察してた。
そもそもなぜ呪文を書くと不思議な現象が起こるのか、涼風の術を土御門様が試してみたときは凍りつくような効果は出なかったので今度私が実際に術を使うところをみたいとか。
呼び寄せる陰陽師には五行(木火土金水)の巧者が多くいるので手紙を送って連れてこいとか。
迷宮での鍛錬でレベルアップすればへっぽこ術師でも魔力が増大するとはなぜ教えてくれなかったのか、今すぐ熱田に連れて行けいや行く、とか。
早速偉大な発見をしてくれているんだけど、その部分にたどり着くまで2日かかるほどの文章量なのでとにかく目が滑る。
これなら直接会って話したほうがマシかもしれない。
いざとなったらイナリちゃんに猿轡してもらえれば良いし。
とにかく、土御門様の手紙のせいで穏やかなはずの年末年始はどえらいデスマーチと化してしまった。
いつどこで魔境が発生して貴重な知識を持った者が失われるかわからない、と私が強弁して早く呼び寄せようと信長に進言したら、作業を任されてしまった。
手伝いを寄越すと言われたけど、家臣はみんな家督相続とお正月の準備で忙しいので断ってしまったのは致命的なミスだったと今なら言える。
早く魔導研究を進めて魔法使いになりたいからと急いだ結果がこの有様だよ!
今年の私の抱負はもっと自重を覚える事とした。
各地へ手紙を送る手配を侍女たち総出で行い、織田家の者としての添え状を書く。
土御門様が勝手に言ってることとされたら来てくれないかもしれないしね。
そうしてお正月の挨拶の時期になっても、家臣の挨拶の合間に控室に手紙と文机を持ち込んでひんひん泣きながら手紙を書いているのである。気分は宿題終わらない夏休み後半の小学生である。
私戦国時代のお姫様に転生したはずなんだけどなぁ!
「濃姫様、勝幡より織田勘十郎さまがご到着です」
ああもう忙しいのにぃ!
ため息を付いて立ち上がった私は侍女たちに身なりを整えてもらいおすまし顔で小姓に続く。
締め切り直前の連載作家みたいなボサボサムサイ格好で人前に出るわけには行かないからね。
そういえば織田勘十郎って誰だっけ。織田家って「織田なんとか」さんが多すぎて誰が誰だかわかんないんだよね。土田御前の熱血指導で覚えたはずなんだけども、このデスマーチのせいでちっとも思い出せない。
「勘十郎様は三郎様の弟君ですよ。こんな重要なこと忘れないでください姫様」
どうも私の心を読んだらしいおさきが囁いてくる。ナイスアシスト。
あー、信勝かぁ。そういや久しぶりに会うなぁ。
結婚式のときに会ったはずなんだけど、緊張してテンパってたしお酒飲んでぶっ倒れたのでちっとも覚えてない。
勝幡城の防衛があってすぐ帰ったらしくて、全然お話してないんだけどね。
信長の線を細くして、メガネかけたらデータキャラになりそうな知的イケメン風の少年だったと思う。
たしか私と同い年だったかな?
義理の弟だから仲良くしたいところだけども……
史実の織田信勝は、織田信長の家督相続を認めず何度も謀反を起こし、最終的に信長自身が謀殺した存在だ。
嫡流の弟が謀反を煽っているなんて看過できないのは当然ではあるけども。
史実の信長は遺児を保護して重用したり、弟を切った事に罪悪感を覚えていたふしがある。
……こっちでは、なんとかそういう対立が無いといいんだけど。
転生したばっかのときに光秀をそうしようと思ったように、どちゃくそ懐柔して謀反できない体にしてやろうかな。
どうすりゃいいかはノープランですけども。
そんな事を考えつつ広間に行った先で見たのは、頬が痩けて目の下は真っ黒、顔色が青白く、「あ、余命あと5分ですね」と言われても納得してしまいそうな有様の織田勘十郎信勝殿であった。
どうした信勝。大丈夫か信勝!?
連休前の金曜日の就業直前に来るメールとか殺意湧きません?
というわけで今回はここまで。
また次回を乞うご期待。




