第58話「プロパガンダってなんか邪悪な魔法っぽくね?」
日曜日なので第58話。
第2部開幕です。
今川との共同作戦が終わってなんやかんやで那古野城に戻ってきた。
熱田じゃないの?と思ったら織田家内部で論功行賞をするそうで、私や女子大学寮のみんなも参加するように、とのことだった。
「一応下っ端兵士扱いのはずなんだけど、私はともかくどうしてみんなも?」
「女子大学寮に異論のありそうな家臣も結構いてな。戦での活躍を盛大に披露して女子大学寮へ入る女子を増やすんだとさ。親父もいろいろ考えてるみてえだな」
「ほうほう、いわゆるプロパガンダというやつだね。やるじゃん信秀!」
「ぷろぱ……なに?」
「プロパガンダ。んーと、要はこっちの都合のいいようにいろんなことをお知らせすること、かな?うろ覚えだけど。とっても大事なことなんだよ」
「なるほど、確かにそれは大事だ……」
「これで女子大学寮生が増えてくれれば尾張はますます安泰なんだけどね」
「ま、どうやってもそうなるように仕向けるつもりなのさ親父は。やたらと張り切ってて敵わん。なんか当主を俺に譲るのを楽しみにしてんだよな」
「息子に後を任せられるってお義父様からしてもうれしいんじゃないのかな」
「そういうもんなのかなぁ。あれはどうもそうは見えねえが」
「親の心子知らず、子の心親知らず、とか言うし、気にしてもしょうがないよ。変に争うよりよっぽどマシじゃない」
「それもそうだな。家督相続で親兄弟殺しあうことに比べりゃ随分マシだ。
ホント嬉しそうで意味わかんねえけど。こないだなんか継承式用の新しい着物仕立てようとして母さんに殴られてたぜ。どこにそんな金あるんだってさ」
「あはは……」
レベルアップした土田御前に殴られて頭がパーンとなったりしなかったんだろうか。おっかない。
……実際のところ、現在の織田家の財政はあまり余裕がない。
そもそも物流拠点としての熱田や津島の動きが結構な間止まってたし、この時代主要な取引品目はお米だけど、魔物のせいでその生産もストップしてた。
ついでに、迷宮産物の販売は始まってて濡れ手に粟ではあるけど絶対数が足りないうえに大消費地京都が魔境になってしまって、砂糖などの高級品の需要自体が縮小気味だ。
雪斎のじいさんが朝廷とかに献上するから融通してくれってんでそれなりのお値段で買ってくれたのは正直助かった。
兵の訓練ついでに集まったものなので元手はただみたいなもんだし。
それにしても名家ってのもいろいろ大変なんだね。
でもお客様には違いないのでありがとうございますぅと愛想を振りまくのはおまけみたいなもんだ。
「それでいて帰蝶の新しい着物は母さん主導で用意してるみたいだからさ。親父がブーブー言ってたけど帰蝶の服ならしょうがねえかって笑ってたよ」
苦笑するしかないけど、なんかほんとやる気がある義父である。
あんまり話したことないのにどうしてこんなに協力的なんだろうね。
「ま、そういう訳だから、大学寮のためにも俺たちのためにも、きっちりときめてやろうじゃねえか。頼りにしてるぜ、帰蝶(奥さん)?」
「うひひ、奥さん、奥さんかぁ。うん、私頑張っちゃうよノッブ!」
よござんす!帰蝶ちゃんのパワーアップした姫ムーブを披露してやろうじゃないか!
きっと頭の固い織田家の旧臣も
「すばらしい姫だ!これはもう娘も孫娘も入学させねば!」
となるに違いない。
それとは別に、年が明けて松の内に当主継承式をするらしい。
松の内ってなんだっけ、ってつぶやいたら
(まじかよコイツ)
という顔をしたおさきに盛大にディスられながら大体元旦から1月15日ごろまでの期間なのだと聞かされた。
ちょっと物忘れしただけであんなにディスらなくてもよいと思う。
帰蝶ちゃんショック。
とにかく戦場からかえって早々、年末年始の大イベントの準備に大わらわになる私であった。
イナリちゃんが帰ってきた。
桶狭間で暴走を続けていた大魔導士帰蝶ちゃんの魔法を解除しに行っていたのだ。
どうも一緒に神様式慰霊祭みたいなこともしたそうで評判になっていて、周辺のお寺も「乗るしかない、このビッグウェーブに」とばかりに犠牲者と戦没者、さらには魔物までを対象にした施餓鬼供養を行っているそうで、多くの生き残りや民が訪れていなくなった人々の慰霊を行っているとか。
こういうところは昔から変わらない日本人のメンタリティをなんだかうれしく思う。
「きちょー!わらわが来たのじゃ!新たなお菓子を供えるがよいのじゃ!」
なんだかしんみりしていた私だったが元気なイナリちゃんをみて元気が出てくる。
「おねーたま、いちもたべりゅ!」
いろいろと重大イベントが控えてるしそもそもそろそろ正月なんで土田御前とお市ちゃんたち、信長の幼い弟妹達は那古野に戻ってきている。
お喋りが達者になったお市ちゃんはイナリちゃんが帰ってきたことで大喜びし、ひよこのようにイナリちゃんの後ろをひょこひょこ付いて回る。
なんともかわいい。
ただでさえかわいいケモミミ幼女に将来戦国最強の美女になることが約束された美幼女が合わさってそのかわいさは1+1=2どころではなく200だ。
10倍だぞ10倍!
というわけで幼女コンビにほっこりする私とおさきであった。
「きちょー!何を呆けておる!新しいお菓子を供える約束じゃぞ!」
「おねーたま!いちもたべりゅぅう!!おかしー!」
かわいいがうるさい。これが真の幼女というものだ。
「よーしよし!帰蝶ちゃんがこれからおいしいお菓子を作ってあげるから、待っていなさいジャリども!」
という訳で帰蝶ちゃんのクッキングタイムだ。
そも姫様たる私は美濃にいる時は厨房に入れてもらえない、というか侍女たちが「料理人の仕事を奪ってはならないし、姫がそういうのをやると格が落ちる」とか言って入れてくれなかった。
だが尾張に嫁いでからは信長が
「嫁の手料理を食べたいと思って何が悪い?」
とぶっちゃけてくれて、ついでに私専用の厨房も作ってくれた。
いやそれは熱田の陣屋だったお屋敷なんで、ここ那古野城にはないんだけどね。
ここでは支度の無い時間に厨房で料理をする許可をもらってる。
この時代は調味料があまりないんだけど、できる食材で作れる料理は料理人に伝授したりしてる。
お城の皆さんにはたいそう好評だそうな。
巷では「帰蝶料理」とか呼ばれてるとかいないとか。
いやあまいっちゃいますねえ!料理上手なできた嫁ですまん!
さて、今回はどうしようかな。えーとお菓子だよね。
うーん、乳製品がないのは本当に不便。
どうしよう、イナリちゃんに
「獣肉を食べようが祟りなどない。
無用な殺生は避けておいしく食べて、強くなって魔物を退ける事こそが神意である」
とか言ってもらって無理やり推進してしまおうか。
まさにプロパガンダ。
うーん、別の宗教できそうでなんか嫌だな。
信長と相談してからにしようそうしよう。
とりあえず、今まで作ってなかったカステラを作ろうかな。
オーブンがないので、昔ながらの作り方だよ。
いや、前世基準でね?
厚手の鍋に型に入れた生地をいれて、蓋をして周りを炭で覆う。
要は熱がまんべんなく通れば良いので、これでカステラは作れる。
お砂糖も余り気味らしいし、こういうのでどんどん使わないと。
あ、小豆カステラおいしいよね。せっかくだから一緒に作ろっと。
そうして出来上がったカステラはイナリちゃんにもお市ちゃんにも、もっと言えば味見した料理人にもとにかくみんなみんなに大好評で、私はしばらくカステラ製造講座を開く羽目になった。
お正月にも出すので小麦粉の生産が急ピッチで進んでいるとか。
忙しい時期に余計な仕事を増やしてすまん。
ついでにオーブンの設置も提案して、これできたらいろいろ料理の幅広がるよと言っておいた。
具体的な構造はざっくり理解しているので適当な図面を書いて職人に渡したので、試行錯誤して良い感じにしてほしい。
小豆カステラ?もちろん好評だったよ。あんまりおいしいんで私には一切れも残らなかったから、一人で食べる時以外には作らないことにした。
絶対に教えてやらん。
食べ物の恨みは怖いんだぞ。
そんなこんなで師走に入り、論功行賞式が間近に迫ったある日、イナリちゃんの立派なおしっぽをもふもふしてお市ちゃんを頭にのせていた(最近の彼女は私や信長の登頂がマイブームらしい)ところ、土田御前が私のお部屋を訪れて
「松の内に行う当主交代式について、良い日取りをご教示いただいてきなさい」
みたいな事を言ってきた。
そういうのも私がやるの?と思っていたら当然だと目を吊り上げて怒られた。
曰く。
本来なら結構な時間をかけて準備をするのが通例らしい。
これは外交関係にある偉い方々を招く必要があるからだが、現状が現状なので招くことはせず(そもそも来られるかが怪しい)に、非常にあわただしく準備が進行している。
本来の日取りは陰陽師や神職、僧侶などに伺いを立てて決定するもの。
実際のところそんな暇はないけど、今尾張には陰陽寮の大家がいるではないか。
そこに次期正室として吉日の伺いをして、ついでに顔つなぎと陰陽術研究への協力を仰げ、とのことだとか。
ああ、要は吉日占いを口実に那古野にいる陰陽寮の大家に会いに行けと、そう言う事か。
ついでが本題。
那古野に滞在する陰陽寮の大家、つまり、土御門有脩さまに。
なるほどついに陰陽師の大ボスにつなぎを取れと!
研究の開始については涼風様に秘匿してもらってるけど、桶狭間で私の魔法が炸裂して将鬼を凍らせたことが伝わったのかもしれない。
うふふ、大魔導士帰蝶ちゃんのことを大陰陽師安倍晴明の末裔が無視できなくなったと見える!
私、なんかやっちゃいました?とドヤ顔を決める準備はばっちりである。
では行きますか!
と思ったら私のそばで寝そべってもふもふされていたイナリちゃんが
「つちみかど!せーめーの子孫か!わらわもいく!」
と言い出した。
ああそりゃそうだね。大変お世話になったらしいし彼女にとっては親しい親戚のような気分だろうな。
いいんじゃないかな、と言おうとしたら頭の上から
「いちもいく!」
とお市ちゃん。
初めて会いに行く人だから実は少々心細かったので何とも心強い。
「いいよ!お市ちゃんも一緒に行こう!」
と言ったら土田御前は
「なりません!市、あなたはお留守番です!」
と叱ってくる。
私とお市ちゃんは口をとがらせて
「「えー」」
と言ったので口答えするなと二人して叱られた。
そういえばイナリちゃんは良いのかな?と思ったら
「イナリ様は神だから止めようもありません」
とのこと。
私も幼女 (神)になりたい。
帰蝶ちゃん、心細いからって3歳の幼女を連れて偉い人に会いに行くのはさすがにどうかと思うの。
という訳で今回はここまで。
また次回をお楽しみに。
ご意見ご感想☆などなどリアクションお待ちしてます。
ホントは欲しいのに強がりを言うのはやめようと思ったの。




