(第1部最終話)第57話「だったらナーロッパにするしかないじゃない!」
連休最終日なので第57話。
タイトルにあるとおり、第1部最終話です。
戦国時代ファンには当然のことだけど、この時代のお城って板塀があればよい方で、大体は申し訳程度の土塁と柵で囲まれた中になんかお屋敷がある程度のものが多い。
そんな広いお屋敷に到着して負傷者の収容が進む傍ら、私は部屋に通されてゆっくり休んでいる。
そんな中でもニンジャが時折訪れて各地の戦況を報告してくれる。
信長の指示らしいけど、どうも三河魔境内の様子がおかしくなっているそうで、
「帰蝶にも知らせろ。何かわかるかもしれん」
とのことだそうだ。
又聞きするよりは生の情報が入ってきて考察がはかどるはかどる。
でもそろそろ眠いんで寝かせてほしい、とはなかなか言えない雰囲気が漂っていて言い出せない。
そりゃあ重要人物な事はわかってるけど、今日はもう働きたくないでござる!
各地から届く戦況は興味深いもので、徒党を組んでいた大鬼たちが同士討ちを始めたり、離脱した大鬼が小鬼の群れに突撃して何匹か殺してトップに立ったり、混沌としたものだった。
これ、将鬼が死んで統制が完全に崩れてる状態に見える。
三河側にいたニンジャの報告も似たようなもので、将鬼が死んだことを伝令などで知ったわけでもないのに完全に烏合の衆と化しているようだ。
魔力の事は何もわかってないに等しいけど、魔物も何かに使ってるんだろうなこれ。
イナリちゃんと交信できたことを見ても、そういうテレパシー的な事を魔物同士でしている可能性がある、というか多分そうなんだろう。
という事は、魔境攻略するには統率しているボスを退治する必要がある。
でも、将鬼はクソ強かった。
信長でも楽勝、という訳にはいかなかった。
レベルアップした兵たちは将鬼の攻撃でも一撃死した者はいないようだ。
大けがを負ってポーションが間に合わずに亡くなってしまった者は出てしまったけど。
レベルアップが足りなかった、ってことだろう。
まさかあんなのが出るなんて思いもしなかったんだから仕方ない、なんて遺族の前で言えるだろうか。
言えるわけがない。
想定が甘かった言い訳でしかない。
もっともっと、ナーロッパ化を推し進める必要があるね。
現状、兵のレベルも足りなければ数も全然足りない。
結局信長という英雄に頼る形になってしまった。
しょうがない、で終わらせるわけにはいかないよ。
英雄は必要だけど、それが信長であり続けなきゃならない理由はない。
いや、政治的にはそれでいいけど、実際の最高戦力が信長である必要はない、と言うのが正しいかな。
多分三河魔境は何とかなるんだろう。
大鬼は尾張兵が駐留すれば何とでもできる。
そもそも三河は織田の支配下になるわけだし。
でも飛騨や信濃は?
この結果を受けて織田に援軍を求められるのは確実だ。
それをどうする?
いずれ何とかしないと尾張に魔物がなだれ込んでくる。
それは勘弁してほしい。
だから援軍せざるを得ない。
でも、1年ちょっと魔境だった三河でこれよ?
数年魔境だった飛騨とか、どうなってんのか想像もつかない。
ああもう問題山積み!
出来れば前世に帰りたい!
でもどうして来たのかもわかんないし帰る方法なんてもっとわかんない!
ここで生きるしかない。
不便で野蛮で意味わかんない魔物がうろつくこの戦国時代で!!
ああ何でこんなことになったんだろ。
ただのオタク事務員だよ私!
頭を抱えて唸っていると、部屋に信長が訪れたとおさきが言う。
ああもうこんな気分の時はだ、だいしゅきな信長のイケメンフェイスを眺めるに限る!
そういう訳で部屋に入ってもらって、向かい合ったわけだ。
鎧を脱いで湯あみをしたらしい信長は疲れた様子だ。
そりゃそうだよねえ。ずっと走りっぱなし戦いっぱなしだし。
ここは妻らしく癒して差し上げねば!
私も疲れてるけど、信長はもっと疲れてるんだ!
よし、ここは癒しの聖女らしく旦那様を癒して、と思った矢先に信長が話し始めた。
「帰蝶、軍議が終わった。今川は織田と同盟を結びたいとさ」
「えっ」
「こんな状況だ、是非もねえ。義元殿にしてやられた気分だぜ」
ちょっとバツが悪そうに言う信長。
今川と同盟?どういう意味があるんだろう。
「俺たちは長島も抱えてるし、飛騨にも備えなきゃならねえ。信濃と関東へは予定通り今川が当たるそうだ。ただ、尾張の兵強化策を教示してほしいとまた言われた」
「それは、聞けない相談だね」
「ああ、断ったよ。が、魔物退治の指導を頼まれた。迷宮に入れるわけにゃいかねえが、三河の平定に兵を同行させることに同意させられた。どう思う帰蝶?」
「うーん、魔物退治のノウハウを知りたいってことだよね。
あっ、ノウハウってのは南蛮の言葉で、何かをする時の技術とか、方法って意味ね」
「そういわれてもなあ、レベルアップしてぶん殴ってるだけなんだが」
「多分ね、義元殿はレベルアップに気付いてるんだと思う」
「……あの野郎ならありそうだな」
「魔物を倒せば強くなる、ってのは何となく理解してるから、実際の討伐に同行させてそれを探ろうとしてるんだろうね。でも……」
「ああ、今川にゃ無理だ。奴らにゃ迷宮がない」
「でも外で倒しても遅いけど強くはなる。だからしばらくは大丈夫だよ」
「そうか。そうだな!」
「うん、あとね、三河魔境の事だけど」
「将鬼が死んでから魔物どもが烏合の衆になったってやつか?
ありゃ一体どういうことだ?何かわかるか帰蝶?」
「えーとね、将鬼と戦った時、私魔導を使ったじゃない?
そのせいで桶狭間は冬になっちゃったけど」
「ああ、あれは助かった。あのおかげで首を落とせた。
……待て帰蝶、いつの間にあんな事できるようになった?」
「うーん、信じてもらえるかわかんないんだけど……」
そして私はもうどうしようもなくなって神頼みしたら熱田のイナリちゃんにつながって話ができた事、そして渡されたお守りに入っていた涼風様の符で魔法を使った事を詳しく説明した。
信長は口元に手を当てて考えている。
「つまり……将鬼と三河の魔物どもも同じようにつながっていて、指示を受けていた?」
「その可能性はあると思う。それとノッブ、将鬼の策についてだけど……」
「ああ、まさか案山子を使ってニンジャを惑わすなんて思わなかった。
危険だからと遠目の監視にしていたのは失敗だったな」
「それもあるけど、これの問題は、上位の魔物は知略を使ってくるってことだと、私は思う」
「……ああ、今後の魔境攻略の際に考えなきゃならねえことだ。
今回はあんな稚拙な策だったが、次もこの程度だとは限らねえ」
「魔物は本能のままにこっちに突っ込んでくる、そう思ってたけど……」
「完全に裏をかかれた。相手は人と同じく戦をするものとしてかからなきゃなんねえ。
あーめんどくせえ!!なんでこんなことになっちまったんだ!」
「私もそう思う~!もううんざりだよぉ~!」
「はぁ、そうはいってもやるしかねえか。んで、次はどうする?」
「うーん、いろいろな方面に配慮してゆっくりしてる暇ないって思い知ったからねー」
「んだなぁ。さて何からやるか……」
「冒険者ギルド!冒険者ギルド作ろうよノッブ!」
「あ?あー民を迷宮に入れるとかだったか?」
「うん、兵の数も質も全然足りてない!だからどんどん入れて、どんどん強く、多くするの!」
「待て待て、いろいろ考えて……」
「それじゃ遅いってわかったじゃん!やろうよノッブ!いつやるの?今でしょ!」
「はぁ、こうなったお前はしつこいからなぁ。
熱田に帰ってから詰めるとするか。
明日は同盟の調印するから、とっとと寝るか」
「あーうん、そだねえ。私ももうクタクタだよぉ。オフトゥンしいて……あー持ってきてないんだった」
「俺もクタクタだ。ちょっと横になろうぜー」
「もうそれでいいやー、ほんの少しだけ、寝ちゃおっかー」
そういう訳でちょっと仮眠しよっかと二人して床に寝っ転がってそのままガチ寝して、二人しておさきに叱られたのは今となっては良い思い出だ。
とにかく、この後も私たちはこの戦国日本をナーロッパにすべく邁進していく。
なぜかって?
こんなダークファンタジー死にゲーみたいになった世界で生きていきたい?
しかもクソ不便な戦国時代!
私は嫌だよ。
だったら、ナーロッパにするしかないじゃない!
(第1部 完)
打ち切りエンドじゃないよ。
第2部は数話幕間を書いてから開始します。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
ポイントとか入れるとテンション上がって続きを書く手が早くなるかもなので、恥ずかしがらずにポチっていいのよ?
まあ嫌なら無理にとは言わないけど。




