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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第一部 「だったらナーロッパにするしかないじゃない!」

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第54話「桶狭間の戦い(前)」

5月5日、こどもの日な上に火曜日なんで第54話。


いよいよ第1部クライマックスです。

 盛大にテントを叩く雨音と風の音、そして雷のゴロゴロ音に起こされた。

 これはマズい。

 完全に桶狭間の戦いをなぞっている。

 なんか大きな史実をなぞる法則でもあるのかこの世界!?

 だったら本能寺は鬼門中の鬼門だ。

 絶対に本能寺に泊まったりしないようにしなきゃ!

 いや待て待てまて。そうじゃない!

 今心配するのはそれじゃない!


 「誰かある!!」


 多分そばにおさきもいるだろうし呼び出す。

 すぐテントを開けておさきが顔をのぞかせた。

 合羽をつけてる。そりゃこの雨じゃねえ。


 「いかがなさいましたか姫様」


 「ひどい嵐のようだけど、陣の様子はどう?」


 おさきはきょとんとして


 「急な大雨ですし、皆雨宿りしておりますよ。今川の兵も同じく」


 心臓が跳ねる。

 という事は、今は警戒が緩み切っているってことじゃん。

 前世の史実との思わぬ合致にすくみ上る。

 どうしよう、どうする?

 マジで奇襲がくるかも。

 将鬼自身が来る?いや、将鬼はニンジャが発見して信長ノッブが討伐に向かった。

 だから大丈夫、信長ノッブがやられたんならもうどうしようもない。

 私も潔く信長ノッブの後を追おうと思う。

 だって彼がいないとナーロッパなんてできる気がしない。

 前世の史実の話をおさきも久助もイナリちゃんすら真面目に取り合ってくれなかった。

 なら、無理だよ。

 私はポンコツな自覚があるんだもん。美少女だけど。

 私ひとりじゃ何にもできないよ。信長ノッブがいないと。

 美少女だから、政略結婚の駒としての価値はあるかもだけど、そんな人生まっぴらごめんだ。

 だから。だけど。

 将鬼を倒した信長ノッブが戻った時、本陣が壊滅してました、なんて目も当てられないよね。

 じゃあここの防備はがっつり固めて信長ノッブの帰りを待つのが今の私にできる事だ。

 そこまで考えて、怪訝な顔をしているおさきに指示を出す。


 「おさき、みんなに警戒を厳にするよう伝えて。奇襲があるかもしれない」


 「奇襲?姫様、それは前世の史実とやらで……?」


 「前世の史実がどうこうなんかどうでもいい!相手は魔物だよ!?

 嵐だから奴らも嵐をやり過ごすだろう、なんて考えちゃダメなの!

 むしろ私たちの警戒が緩んだ隙をついてくるかもしれない!

 私は今川様にこのことを進言してくる。急いで!」


 おさきはハッとして、慶次を呼び出し、指示に走った。

 そして私は共も連れずに義元の陣に向かった。

 いつの間にか女学生のニンジャ、おふゆ(仮名)が付いているので彼女は私の専属護衛になったのかもしれない。

 そういうのお給金あげなきゃなんだからちゃんと話してよね!

 この戦が終わったらでいいよ!!



 今川家側の陣は何だか弛んだ印象だった。

 雨なので大きなテントみたいなのを作ってその中でどやどや話している。

 さすがにお酒は飲んでないけど、まさかここが奇襲されるかもなんて考えてもいない様子だ。

 私は昨日に引き続き今川諸将の侮蔑的な視線を浴びながら義元の前に立ち、語り始める。


 「今川様、おはようございます。

 相当な嵐ですが、皆さま何をなさっておいでなので?」


 「ああ、おはよう帰蝶殿。何、この嵐では鬼どもも何もできまいよ。総大将たる将鬼は今頼光殿が斬りに向かっているからね。することがないのでここで宴会でもしようかと話していたところさ」


 ああやっぱり!


 「今川様、敵は人ではなく魔物です」


 「……どういう意味だい?」


 義元の目が鋭くなる。批判されたと思ったのかな。

 でもここでこの人が死んだらまずいんだよ。甲斐や相模への援軍どころじゃなくなる。そうなればあちらの魔境は抑えきれない。

 おっかないけど、私は心を強く持って進言する。

 お願い、気付いて!

 

 「魔物の事、尾張でも何もわかっていないに等しいのです。

 ましてや将鬼は未知の魔物。三郎さまでも討伐できるかはわかりません。

 そして、魔物は嵐の時にやり過ごすために動かなくなると、誰か確認した者がいるのですか?」


 言外に私は知りませんが、という意味を込めて義元を見据える。

 義元は肩眉を上げ、口元に手を当てて考え始めた。

 諸将は口々に私の無礼を咎める。

 

 「戦の事もしらぬ小娘が!」「首にしてうつけめに送り付けてやればよいのだ」「まてまて、顔は綺麗だから高く売れる」


 山賊かよお前ら!?義元の護衛として控えてる信綱が刀に手をかけてる。

 非礼を咎めつつ私に非礼を働いてる今川の将にぶちギレ寸前なのだ。

 ダメダメ!まだ待って!と目で合図を送る。

 そんな応酬が私と信綱の間で繰り広げられる中、義元が立ち上がり一喝する。


 「黙れ!帰蝶殿の言、誠に道理である!これより陣の警戒を厳とする!

 今頼光、織田三郎信長殿の帰陣まで気を抜くことまかりならん!

 それとな、過去の遺恨があるにせよ今は織田と共同での戦の最中である。

 ……今川の格を落とすような言葉は控えよ」


 うおぉ、義元こええ。これが海道一の弓取り!?

 そして一挙にあわただしくなる陣内を見やって、義元は私に声をかけてきた。


 「家臣がすまないね。まったくいつまでこれまでの世と同じと思っているのだか……。

 ともかく、進言助かったよ。

 魔物との戦に油断は禁物。これまで順調すぎて気が緩んでいたようだよ」


 素直だ。前に熱田で会った時と同じ感じ。

 き、貴公子系イケメンだからって、心が動いたりしないんだからね!

 義元はこの変わった世界に適応しつつあるようだけど、全員がそうじゃない。

 大大名だけに家臣の統制には苦労しているようだ。

 尾張みたいに史実で謀反を起こしたやかましい連中が魔物にぱっくりいかれてるわけでもないしね。

 ともかく、史実の桶狭間で言われてるような雨宿りで油断したところを奇襲されるような羽目にはならなくて済みそうだ!


 警戒態勢が敷かれた織田・今川連合軍本陣は首脳陣が一塊になって各地から上がる報告を共有しつつ整理している。

 そこには私も織田家代表として詰めているが、戦況分析できるわけでもないしそもそも嵐で視界が悪くて碌な報告が上がってこないので置物のように座っているだけだ。

 私は前世からただの事務員で、戦略や戦術に詳しいわけでもないし、しょうがないよね。

 警戒を緩めるなとは言っても緊張状態は長くは続かない。

 特にレベルアップしてるわけでもない今川の皆さんは。

 雨脚も少し弱まって陣内にやや弛緩した空気が漂い始めたころ、誰かが陣幕に飛び込んできた。黒装束のニンジャだ。

 織田忍軍の人だね。

 良い知らせだといいけど!


 「申し上げます!織田三郎さまより伝令です!」


 素っ破が何を、とか今川の武将が声を上げようとしたけど義元が一睨みで黙らせる。

 

 「申せ」


 「はっ!将鬼発見地点にあったのは将鬼を模した案山子でございました!裏をかかれてございます!本陣にあっては奇襲の恐れこれあり!警戒を厳にされたい、とのことで」


 ニンジャがそこまで言ったところで弱まっていた雨が再び強まり、近くで落雷があったのかカッと光って大きな音が響いた。

 レベルが上がっている私の耳は、それとは異質な、あえて言うなら爆発音と悲鳴を拾う。


 「今川様、今何か音が!?」


 「音?それは一体……」


 違和感のある音について義元に伝えようとした時。


 「てきしゅうううううううううううううわああああああああああ!!!」


 逆茂木を置いた本陣の外縁の方から悲鳴交じりの報告が聞こえてきた。

 とんでもない爆発音も聞こえ、一挙に本陣内が喧騒に包まれる。

 その時、一陣の突風が吹いて陣幕が捲れて、兵に絡まり、音のする方が見える。

 私たちのいる位置は本陣でも比較的高い位置にあり、全貌が見下ろして見えるようになっている。

 

 大鬼が、本陣内に侵入して来ている。

 逆茂木は無残に壊され木片となって散らばっている事が見て取れた。

 そして、ああそして。

 巨大な鬼がいる。

 とにかく大きい。

 肌は青黒く、全身を鎧で覆っている。

 大鬼の3倍くらい、6mはあるだろうか。

 そして手に持つは全長10mはあろうかというハルバードみたいな武器。

 なんだろうあれ、鎧も武器も見たことあるぞ。

 ああ、あれだ、三国〇双のゴキブリみたいな帽子かぶったやつ!

 クソ強い、えーとえーと、そう、呂布!!


 「りょ、りょ、りょ、呂布だー!!」


 言っとかなきゃダメかな、と思ったので言っておく。

 お約束なんだよ、だから白い目で見るのはやめたまえおさき。

 

 「あ、あれは将鬼!?なぜこんなところに!?」


 伝令に来たニンジャさんが驚いている。

 なぜとかどうしてとか言っても何でか目の前にいるんだからしょうがない!

 将鬼は悠々と歩を進め、こちらに向かってくる。

 槍を持った尾張兵が槍を突き込もうとするが大鬼に阻まれるのでまずはそちらを相手にせざるを得ない。

 今川兵が弓を射るが、ちっとも効いてない。というか刺さってない。

 弓も強いの作らなきゃだよぅ!いや魔物ぶっ殺せる鉄砲とか石弓の方がいいのかな?

 余所事を考えながら見物していると、うっとおしいと思ったのか将鬼が手に持ったハルバード……あれ方天戟とか言う武器じゃなかったっけ?

 とにかくそれを弓兵が集まる場所へ向けて振り回す。

 ……一気に10名くらいの今川兵が消えた。

 吹っ飛んだとか、バラバラになったとか、そういうのでもなく、文字通り血煙になった。

 なにあれヤバすぎる。レベルとか関係あるのアレ?

 あ、よく見たら尾張兵は槍で受け止めて吹っ飛ばされただけで済んだみたいだ。

 改めて目の当たりにするとレベルアップてヤバいな。

 なんなんだよコレ。

 

 けど、ああやっぱり!!

 だから桶狭間はやめとこうよって言ったんだよう!

 いや決定権持ってる人には言えてないんだけどさ!

 ここで死ぬのかなぁ。ごめんねノッブ。

 ……死ぬ?ここで死ぬの?

 誰が?私が?

 ……嫌だ。いやだいやだいやだ!死にたくない!

 何とかして生き残らねば!

 

 「とにかく今川様方はお逃げください!あれは、将鬼は我々の手にも負えません!」


 「い、いやしかし帰蝶殿は?」


 「いいからとっとと逃げるんだよ!ノッブが来るまで持たせるしかない!」


 「ノッブ?信長殿か!彼ならなんとかできるのかい?」


 「知らないけどできなきゃ人類はもうおしまいです!早く逃げて!」


 もう姫ムーブとか知った事か!

 今川の武将は威勢のいいこと言ってたんだから早く義元連れて逃げろ!と声を上げるととっとと逃げようとする。

 が、将鬼はもう眼前に迫っていた。


 慶次とおさき、織田も今川も関係ない、兵たちが立ちはだかる。

 将鬼の背後では大鬼を討伐にかかる兵たち。

 女子大学寮の生徒たちも戦っているのが見える。

 もう大混乱だ。

 あのミソッカス三人娘はどうなったんだろう。

 うまい事隠れてやり過ごしてくれているといいんだけど。

 

 将鬼に対峙する兵たちを見て、将鬼はニヤリと笑った。

 笑ったのだ。

 吐き気を催す邪悪とはまさにあれだった。

 そして大きく振りかぶり、おさき、慶次、兵たちを薙ぎ払うように方天戟をふるう。

 吹っ飛ばされるみんな。


 私を崇めてるようなこと言う割に眺めてニヤニヤするだけの傾奇者、慶次。

 子供のころから一緒で、姉のようで脳筋だったおさき。

 二人が吹っ飛んでいく。

 血煙になった兵も多数。

 彼らは今川の兵だけど、だからなんだ。

 みんなみんな、生きてるんだぞ。

 お前みたいなポッと出のファンタジー生物が面白半分で殺していいような人じゃないんだぞ。

 それを。それをなぁ!!

 気づけば私はなぎなたを構え、将鬼に向かって大声を張り上げていた。


 「おいコラバケモン!!てめぇらが現れたからって人類滅ぼせると思ってんのか!?


 人類舐めんなよコノヤロー!かかってこいやー!!」

 

 迷宮産鉄でできた、レベルアップしていなければ持つこともできないような重さのなぎなたを振り回して威嚇する。

 後ろで義元マロがうるさい。

 いいから早く逃げろよ総大将!テメーがいたら私も逃げらんねんだよ!!


 そんな私を眺めてニヤつく将鬼は方天戟を振り上げ、横なぎに振るってきた。

 早すぎて見えない!死ぬぅ!

 その時、「剣聖」上泉信綱が私と将鬼の間に割って入り、振るわれた方天戟に刀を当てて弾いた。

 軌道がそれた将鬼の恐るべき武器は、しかし身構えていた私のなぎなたにぶち当たり。

 私はその勢いのままぶっ飛ばされた。


 すまん皆!私死んだ!

 くぅー疲れました!これにて完結です!

 あー、ここまで来られたのもみんなのおかげです!

 ……なんか余裕あるな。

 こんなことならイナリちゃんの立派なおしっぽに顔をうずめてモフモフハフハフすればよかった。

 しかし吹っ飛ばされるのは前世も含めて人生初めてだけど、案外悪くない。

 なんだかたくましい腕に包まれているようで、安心できるなぁ。

 恐怖に震えて死ぬんじゃなくてまあよかったのかな?

 うーん、こういうのって走馬灯とか見えるんじゃないの?

 どうせだから最期は信長ノッブの顔を見てから死にたかったんだけどなぁ。

 まーしょうがないか、さて、最後はあんまり痛くありませんようにっと。


 そんな事をつぶやきながら来る衝撃に備えていると、なんかふわりと着地する感じで地面に降ろされた。おお、最期だけにサービス良いねえ。では皆さんさようなら~

 うーん、いつ意識が消えるんだろう。

 まさか3週目が始まったりしないよなフ〇ムゲーじゃあるまいし。


 とか思ってたら顔をぺちぺちされる感触。

あれぇ?生きてるの?なんで?

 目を開けると、そこには汗だくの信長ノッブがいた。


 「わりぃ遅くなったな帰蝶。怪我はないか?」


 「……これは、夢ね?」


 「あ?」


 「いやそこは「ああ、悪い夢さ」って言うところでしょ!」


 「……まずいな、頭を打ったかもしれん。おい久助、ぽーしょん持ってるか?」


 「姫様はいつもこんな感じでしたがね。こちらを」


 信長ノッブ信長ノッブだ!!

 うひょおおおおおおおお!!

 叫ぼうとした私の口にポーションの瓶が突っ込まれ、いつか前世のコンビニ前で飲んだクソマズい清涼飲料水と同じ味が広がって、私は盛大にむせたのだった。


〇迷宮鉄のなぎなた

 迷宮鉄でできた薙刀。非常に重く、レベルアップしていない者には扱いずらいが、丈夫で折れにくい。

 征魔体制初期に熱田迷宮から産出した迷宮鉄で作られ始めたのが最初とされ、尾張女子大学寮生の標準的な装備となった。

 有名な一振りに、初代征魔大将軍織田信長の正室、帰蝶が使ったものがあり、桶狭間征魔記念博物館に収蔵されている。

 (三河書房刊「征魔体制期の武器辞典」より抜粋)


まあ序章を詳しく書くとこうなる感じ。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

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