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(第1部完結)信長公斬魔録~転生帰蝶ちゃんは急にダークファンタジー死にゲーみたいになった戦国日本をナーロッパにしたい~  作者: simopo
第一部 「だったらナーロッパにするしかないじゃない!」

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第51話「外交と書いてナンパと読む」

連休初日なので第51話。


皆様の支援のおかげでここまで続けられております。

いつもありがとうございます。

 「ま、これの事は放っておいておくとして、そなたが義元殿、であるか」


 いち早く立ち直った信長(ノッブ)は義元に向き直り話し始めた。

 正直しばらく放っておいてくれると助かる。

 こんなところに今川の当主がいるなんて思うわけないじゃん!

 そりゃ前世のゲームの知識に引っ張られてふわぽよお公家様で想像してた私も悪いけどさ、あんまり違うもの!

 対面している義元は精悍な青年で、がっしりしつつ涼やかな印象の立派な武士だ。

 30歳くらいかな。史実を鑑みても今はそのくらいのはず。

 戦国時代的には脂がのった年代だ。

 油断しまくって奇襲されて討ち取られるような間抜けにはとても見えない。


 そんな彼の前で初手からやらかした私はしばらく固まった後、ようやく頭が回り始めた。

 

 「い、今川様!た、大変失礼いたしました!」


 光の速さで土下座(ゲザ)である。

 それを待っていたように笑い声があがり、男たちが口々に私に声をかけ始める。


 「おお、やっと動き始めたか。待っていたぞ帰蝶」


 信長(ノッブ)が苦笑いしながら言う。義元も雪斎も笑いがこらえきれない様子で。


 「いやはや、面白き娘御を嫁にもらったものだね今頼光殿?」


 「確かに面白いが今川にはやらんぞ」


 「我が家中には御せるものはおりますまい。龍王丸殿とは年回りがあいまするが……」


 「アレには扱いきれないだろうね。駿河に来ていてくれればさぞ楽しい日々を送れそうではあるけどね」


 「帰蝶は俺の嫁だ。戯言はよしてもらおうか」


 何言ってんの、何言ってんのこの人たち!人を珍獣みたいに!

 今川に嫁いでたら、あの寿桂尼とかいう戦国でトップレベルの女傑に直面する羽目になるんでしょ!?

 土田御前(ノブマッマ)ですらおっかないのに歴史にがっつり名を遺すレベルの女傑なんか近づきたくないわい!

 あ、でも信長(ノッブ)が俺の嫁と言って絶対渡さない宣言してくれたのはうれしい!

 いやあ愛されちゃっててすまん!

 まだ見ぬ龍王丸君、そういう訳だからごめんね?

 あ、龍王丸って今川氏真の幼名か。年回り的に彼に嫁いでもおかしくないのか、私の方が姉さん女房になるけど。


「わた、わたくしは三郎さまのお嫁さんです!駿河にはまいりません!」


 顔真っ赤にして言う私。

 さらに今川家の二人は笑い声をあげ、信長は「しょうがねえなコイツ」とでもいうかのように頭を撫でてくれる。

 重要な外交の場のはずなんだけど、どうしてこうなった!?

 私のせい?

 私のせいか。すまぬ……すまぬ……!!



 何だか和やかなムードになった室内の空気を切り替えるように信長(ノッブ)が


 「で、義元殿は三河の放棄を約束するとの事だが」


 相変わらずいきなりブッコむよね信長(ノッブ)。

 頭の回転が速いからか回りくどいのが嫌いなんだよね。

 それを受けて義元はニヤリと笑い


「そうせねば魔境の対処はしないと言われてはね。三河の放棄でそれがなせるなら安いものさ」


 と、さらりと言ってのける義元。なんか気さくな王子様みたいなしゃべり方だな。

 これが素なのかな?

 涼やかに揶揄するような表情だった義元は、しかし口惜しそうな表情を受かべて心中を吐露し始めた。


 「と、言いたいところなんだけどね。実際今の今川に三河を復興させる余力はない。

 知ってると思うが、信濃と関東に援兵を送らねばならない。これは絶対だ。

 でないと甲斐と信濃が崩れて今川は魔物に包囲される」


 「殿、それは……」


 「もう知られてるんだ。雪斎も聞いてるだろ、ニンジャ、だったかな?

 彼らにかかれば今川の内情なんて筒抜けのはずさ。そうだろう、今頼光殿?」


 ニンジャの事まで知られてるんだ。どこまでぶっちゃける気だこの王子様系マロめ。

 信長(ノッブ)は鼻白んだように


 「まあな」


 と吐き捨てる。

 知らんかった。

 今川にも人入れて諜報やってるんだね。

 案外私が知らないところで動いている事は多い。

 それは私が嫡男信長(ノッブ)の妻でしかなかったからだろうけど。

 今後は変わるのかな。

 そんな事をぼんやり考えながら3名の話を眺める。


 「という訳で、今川は三河から手を引く。

 家中はうるさいだろうけど、何とかしてみせるさ。

 だから、三河魔境の件、頼むよ。

 あそこに魔境なんてものがあっては動くに動けないんだ」


 「わかった。だが魔境討伐は今川も手伝ってもらうぜ。小鬼を抑える役を任せたい」


 「……小鬼のみならば我らでも抑えきれましょうが、大鬼はどうするおつもりで?」


 「大鬼を屠れる兵(つわもの)を600送る。大鬼が出たら奴らに任せろ。絶対に今川で当たろうとするな。それ用に鍛えたものじゃないとあれは倒せん」


 「大鬼に対処できる兵の鍛え方を教えてもらう訳には、いかないんだろうね」


 まあ当然教えてもらいたいよねえ。でもダメだ。まだ早い。

 案の定信長(ノッブ)はそれをにべもなく断り、肩をすくめる義元。

 なんかこの人しぐさがいちいち芝居かかってるんだよね。海外ドラマみたいなリアクションだ。

 もしかして転生者だったりしないよね?

 んなわけないか。

 それから、信長(ノッブ)と詰めた金床戦術を詰めていった。

 私は女の身でもあるし、置物のように座ってそれを眺めるだけだ。

 布陣する位置や補給路の話がどんどん決まっていく。

 ほえー、これが軍議ってやつか。

 実行する時は武将たちを集めて詳細を詰めていくんだろうけど、大戦略っていうか大方針は今この場で決まって行ってるように見える。

 トップ会談だもんねえ。ここで決めなきゃいつ決めるってな感じだ。


 そうしてあらかたの方針が決まったようで、米の収穫後、10月下旬から三河侵攻作戦を実行する運びと相成ったようだ。

 しょっぱなからやらかしたが、無事決まってよかったと安堵していると、義元が私にニコッと笑いかけながら話しかける。


 「で、帰蝶殿は何か案があるのかな?」


 ほわっ!?私に水を向けてきやがった!

 案?ねえよンなもん!


 「わたくしなどに何かお話しできることなど……」


 「そういわずに。何かないかい?

 ……そうだね、今度駿河に来るかい?舟遊びでもしながら駿河の発展について意見を聞かせてくれるとうれしいな?」


 なんだコイツ!?もしかして私口説かれてんの!?

 すかさず信長(ノッブ)が怒気を抑えつつ言う。


 「義元殿、人の嫁に手を出そうなどすればこの話は無かったことにするぞ」


 「承芳(しょうほう)!!お主はそういうのを止せと何度言えば!!」


 雪斎のじいさんも青筋浮かべて叱りつけてる。

 承芳(しょうほう)ってのは義元が幼い頃出家してた時の名前だったはず。ざっくりいえば幼名みたいなものなのかな。

 そのころからのお師匠さんな雪斎はとっさの時にこの名前がでるんだろう。

 しかし、あの今川義元がスケコマシのナンパヤローだったとは!!

 全然マロじゃないじゃん!いやお前なんかマロで十分だ!

 私は信長(ノッブ)のものですからね!

 王子様系イケメンになんか心惹かれたりはしない!!


 「わ、わたくしは、の、しゃ、しゃぶろうしゃまのもにょですかりゃ!そういった話は、お聞きできましぇん!」


 噛み噛みだ。顔が熱い。


 「ハハハ、赤くなっちゃって、かわいいね。気が変わったらいつでも駿河においで?」


 何なのコイツ!?


「義元殿、戯れとはいえ看過できんな。今この場でその首を獲っても良いんだぞ」


 剣呑な雰囲気の信長(ノッブ)。おっかない!

 でも私のために争うのはやめて!

 一度言ってみたいセリフではあるけどそんな雰囲気でもない!


 「ははは、冗談だよ。

 ……三河を渡すんだ、このくらいの意趣返しをしてもかまうまい?」


 ものすごく鋭い目つきで信長(ノッブ)を見据える義元。

 これが、「海道一の弓取り」今川義元かぁ。

 ナンパヤロウ化と思ったけどこれも駆け引きなのかな。

 雪斎の反応を見るにあちこちでやってそうなんだけど。


 でも、信長(ノッブ)は引かずに言い放つ。


 「馬鹿言うな。三河ごときと帰蝶を比べられるか。そっちが三河と引き換えに帰蝶を欲するならこの話は無しだ」


 この言葉を受けた義元は苦笑しながら私に向けて言う。


 「そうだろうねえ。

 帰蝶殿、キミは一国と引き換えにしても得難い女性なんだよ。その自覚を持つことだね」


 「は、はぁ……?」


 そんな言葉を残して、会談は終わった。義元と雪斎は今日のうちに熱田を発ち、駿河に海路で戻って三河魔境討伐作戦の準備に入るそうだ。



 今川家の二人組が去ったあと、私たちはげんなりした表情で話し合う。


 「はー、義元があんな奴だとは思わなかった。なんなんだアレ」


 「情報が筒抜けだったっぽいねえ。織田の弱点、なのかなぁ」


 「それにしたって、義元本人がお忍びでやってきてるなんて思わねえだろ。

 こんなことなら平手政秀(じい)に付いてきてもらうんだったなあ。

 膝が悪いからって那古野に詰めさせてるのは悪手だな」


 平手政秀(ひらてまさひで)は信長(ノッブ)の傅役(もりやく)で、小さいころからついた教育係みたいな人だ。

 史実でも傅役で、うつけが酷い信長(ノッブ)を諫めるために切腹したとかいう逸話がある。

 また、父ちゃん(マムシ)と交渉したり京のお公家さまとつながりがあったり織田家の中でも外交向きの家臣として重宝されている。

 そういう重鎮だからこそ嫡男の傅役になるもんなんだけどね。

 史実の信長(ノッブ)も政秀を慕っていたようで、切腹の後「政秀寺」というじいの名前を付けたお寺を建立したりしてる。

 戦国時代ではお年寄りの部類に入る現在57歳。寄る年波には勝てないようで那古野城で信秀(パパノッブ)の下、尾張に来るお公家様や他国とのやり取りを差配しているそうだ。

 だけど今川に知られているように熱田は尾張の要とみなされつつある。

 外交を采配できる人が必要なのかもしれない。

 史実でも織田家の外交力はいまいちな印象がある。

 それを埋めるのが明智光秀やのちの豊臣秀吉なんだけど、明智光秀(みっちゃん)は飛騨防衛線で亡くなってしまったし、秀吉は今のところどこにいるかもわかんない。

 尾張中村ってどうなったんだっけ。今度調べてみよう。

 という訳で、外交力の強化が急務であると露呈した今川との会談であった。




 げんなりした私たちは言葉少なに解散し、以後信長(ノッブ)は三河魔境侵攻の準備、私は引き続き尾張女子大学寮での鍛錬に励むことになる。

 そして季節が巡り、岡崎に防衛線を構築した今川軍に向けて尾張から侵攻を始めた織田軍は破竹の勢いで魔物を退治しまくり、思った以上の戦果を挙げているそうだ。

 私?女性は防衛戦力だから、戦場に出るわけないじゃん。

 今は織田の対魔物戦力は全員出払っていて、何かあれば女子大学寮生も駆り出される恐れはあるけども、ニンジャの居残りたちが各地で警戒を強めているので今のところ何の問題もない。


 そしてお市ちゃんのほっぺをむにむにしたりイナリちゃんのおしっぽをもふもふしていた秋の午後、戦場でニンジャの指揮をしていた久助が伝令として私の下に現れた。


 「姫様、女子大学寮に陣触れが出ました。ご準備を」


えー?


一体どうなってしまうのか!?


今回はここまでです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。


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