188話「福岡満喫と滑り台」
それから福岡のホテルでまた朝を迎えた。
朝食バイキングで新鮮なフルーツや好きなオカズを選んで皿にのせる俺は隣にいるケーネストを見た。
「どうする? 食べもの代わりに取ってあげようか?」
「大丈夫だ、自分で取れる」
元公爵だから子供扱いではなく、執事代わりにとろうかと思ったが、郷に入っては郷に従えをやってくれるみたいだから、見守ることにした。
……カフェオレとかしわ飯と肉厚バーガーという、炭水化物祭りであったが、一応サラダもとってるし、問題はなさそうだ。
「窓際の席に座ろう」と、ケーネストを誘う俺に、
「ああ」と、短く返事して、二人で向かい合って窓際の席に座った。
大きな窓ガラス越しに朝の光を浴びて、行き交う人々を眺めつつ、朝食をとる。贅沢な時間だ。
そしてこの行動も、またカメラで撮影する。
「ごらん、今日もハンターが守った人達が出勤の為か知らんけど歩いてるよ」
考え無しに雑な話題をふる俺。
「元気そうでなによりだな」
それに雑な返しをするケーネスト。
「朝陽が清々しい」
「街も綺麗だな」
「そうだな、さすが日本」
「ところで、この肉厚バーガーとカフェオレ美味いぞ」
「マジで? バーガーは後で少し食べようかな」
「ああ、そうするといい」
そして飲み物の話題で思い出した。
「ホテルでトロピカルジュース飲むだけでハワイで挙式あげた新婚旅行感が味わえるって以前誰かが言ってた」
「これは新婚旅行ではなく、討伐任務だぞ」
「ああ、俺が飲んでるのもトロピカルジュースではなく普通に美味い生搾りオレンジジュースだ」
「ふむ、確かにオレンジジュースだ」
ケーネストはマジレスの民だった。俺は笑って流し、美味しいガメ煮や明太子ごはんなどを食べた。
「朝食をゆっくり食べるだけで幸せ感があるんだよなぁ、飲むゼリー流し込むだけではなくって、ちゃんとしたの食べるってやつ」
「どんな生活をしてたんだ?」
「時間ない時は雑だったからさ」
「ところでこの後はどうする? お前におすすめや希望はあるのか?」
「じゃあせっかくだし、最寄りの神社でも行く?」
そしてその辺の神社に向かった俺達。
「おい、見ろよ、鳥居の下をくぐったあの銀髪の人の頭上、虹色に光ってる」
「え?」
周囲からそんな言葉が聞こえたので思わず上を見たら、鳥居の上で謎の虹色の光が。
「ガーディアン、お前の頭上だぞ」
「ほんとだ、謎の虹色プリズムが輝いてる」
「この地の神に祝福されているのではないか?」
「よく分からんが、美味しいものがたくさんある地に感謝の祈りを捧げて来よう」
「そうだな、ラーメンのお礼をするか」
その後、お参りを済ませて神社の出店で美味しい梅ヶ枝餅(多分どこで買っても同じ味)を食べたり、カフェでソフトクリーム食べたり、空港で土産物を買ったり福岡のグルメを満喫してから政府ジェットで地元に帰った。
いやー、福岡はなんでも美味しかったし、楽しかった!
それから一旦異世界へ戻り、食べもののお土産等をアレンシアに渡して、通販の滑り台到着に合わせてまた日本に戻ってから滑り台を受け取って異世界にUターン。
そして屋敷の中の一室にて滑り台をさっそく組み立てた。
「ほら、ベル、お前の為に取り寄せた滑り台だぞ、ブランコまでついてる! 安全に遊びなさい」
「わぁ!」
初めて滑り台を見て目を輝かせる息子。
周囲には護衛騎士達もいて、見守ってる。
「そこの階段をのぼってな、この坂をしゅーっと滑り降りるんだ」
俺は使い方のレクチャーの為に大きな熊のぬいぐるみをつかみ、まず階段を登らせてから滑り台をしゅーっと滑らせて見せた。
「クマちゃんすべった! ぼくもやる!」
「どうぞどうぞ、だけど前のめりになりすぎるなよ」
息子は滑り台の階段を無事登って、しゅーっと滑った。
「たのちい!」
「良かったな」
「またすべる!」
また滑った。とても楽しそうだ。
「ブランコもいいぞ」
ブランコもせっかくだし、すすめてみたら、素直に座ったので、優しく漕いであげた。
「ゆれる!」
「揺らすものだからな」
「たのちい!」
「これ、小さな子供持ちの貴族の間で売るとお金になりそうですわね。人脈作りにも役に立ちます」
いつの間にか近くに現れたアレンシアが滑り台を見て言った。
「それは確かに」
「これはあちらの品ですわね? お高いのですか?」
「形が分かればこちらでも作れるだろ?」
「あ、それは確かに! 作らせてもよろしくて!?」
「ああ、別に私が考案した訳ではないのでな」
人前なので公爵風に喋りつつも、妻から急に商売魂が出てきたのに少し笑った。いや、しかし本命は人脈の方かもしれんな?
この夏はろくに社交活動出来てないし。
「では、さっそくこの遊具の図面を描かせましょう!」
「組み立て説明書のコピーをあげようか」
「これは便利ですわ!」
──かくして、エルシード公爵家の新事業に子供の遊具が加わることになった。




