164話「不器用そうな父娘の会話」
日当たりの良い部屋の窓辺にメダカ用の大きな水槽の準備をして、水合わせも終わったのでメダカ達も入れてやった。
エアレーションも控え目にしていれてる。
そしてエルシード公爵としての書類仕事もしつつ、祭り動画は翌日夜九時の予約公開設定にして明日の分のお米をとぎ、ご飯も炊飯器のタイマーでセットおく。
ケーネストの帰りを深夜二時半まで待っていたが、まだ戻って来ないので、流石に仮眠することにした。
ゲストルームにある二つのグリーンのソファベッドの背もたれを倒し、ベッド仕様にしてから横になる。
ケーネストも元は俺のベッドだった寝床をミルシェラに占領されているので、もう一つのソファに枕とタオルケットを置いて、彼が疲れて帰って来ても、すぐ寝れるようにした。
ソファの近くにあるテーブルにはペットボトルの水やお茶や瓶入りの回復用ポーションも一応用意してる。
自分でも歯を磨きに洗面所へ行くとミルシェラはピンク色の歯ブラシをストックから選んで使ったっぽい。
少し水に濡れた状態でグラスの中に差してあるから分かる。
そして俺は歯磨きを終え、端末のメールチェックなどをしてから寝る。
海外移住中の両親や以前一緒に写真を撮ったコスプレイヤーのギャルのミカリンからも来てた。
テレビを見ていたら俺の正体が急にハンターだのガーディアンだのということでだいぶ驚いたようだったが、さもありなん。
適当に誤魔化して返信しておいた。
眠りに落ちてしばらくして、玄関の引戸の開く音やシャワーを使う音がして目が覚めた。時刻は朝の四時半。
こちらに近づく人の気配はケーネストが帰宅したのだろう。
ややしてゲストルームの扉か開いた。
Tシャツとスウェットの下を履いたケーネストが入ってきた。服の上からでも筋肉が日に日に育ってきてるのが分かる気がする。
「お帰り、ケーネスト、怪我はないか?」
「ああ、大丈夫だ。ミルシェラがベッドを取っていたからこちらに寝る準備をしておいてくれたんだな」
「そう、どうしても帰りたくなかったみたいでさ。ケーネストが無事に帰ってくるのを見届けたかったのかもな」
「そうか、こっちは楽しいことが多いから仕方ないな」
「じゃあ、せっかく目覚めたし、ひと眠りして起きたらすぐ食べられるよう、お弁当を用意しておくな。おにぎりと卵焼きとウインナーとかの簡単なものでいいか?」
「食べられればなんでもいい、ありがとう」
ケーネストはよほど疲れていたのか、ペットボトルの瑞を少し飲んでからすぐタオルケットを被ってソファベッドに横になった。
顔を洗って歯を磨き、朝食の支度をする為に台所へ向かった。
弁当箱を取り出して塩味おにぎりを作り海苔で巻いた。
ウインナーと卵焼きを焼き、ついでにボイルするだけのミートボールがあったのを思い出して次々と弁当箱に詰めた。
ケーネストの為の弁当作りをしていると、ミルシェラが起きて来て、
「お弁当……」と、呟いた。
「おはよう、ミルシェラ。ケーネストは無事に帰ってきてゲストルームのソファベッドで寝てるよ」
「はい、さっき、寝顔を見てきました」
ほっとしたような顔だった。
「朝食はご飯と味噌汁と漬け物とチーズオムレツで構わないか?」
「見事な和洋折衷ですけど、いいですよ」
「はは。俺はチーズオムレツの代わりにメインが納豆キムチだけどな」
「キムチが辛いから私の分だけチーズオムレツにしてくれるんですね」
「そういうことだ」
ミルシェラはケーネスト用のお弁当をじっと覗き込む。
「……お弁当も気になります」
「詰めてるだけで特別感が出るからか? なら、お昼用にあちらに持ってくか?」
「はい、でもパパも一緒に帰ってくれるんですよね?」
「やれやれ、まだアレンシアのお土産用の化粧品が届いてないのだが」
「ドラッグストアで買って行き、後で残りを取りにくれば……」
「仕方ないな、ケーネストが寝てるうちにチャリで買ってくるか、ミルシェラはその間、家で動画でも見ながら待ってるんだぞ」
「はーい」
それから二人で朝食を食べていたら、ケーネストが短時間で起きてきてダイニングテーブルの席につき、弁当箱を開けてもそもそと食べ始め、ミルシェラに話しかけた。
「そういえばミルシェラは最近、学校ではどうだ?」
「ふつーです」
「なにかクラブに入ったか?」
「お菓子が堂々と食べられるので茶道部ならぬお茶クラブです」
うける。家の姉貴も学生時代、同じお菓子が食べれるという動機で高校では茶道部に入ってた。
「ああ、そうなのか」
「はい」
そして親子の会話はあっさり終了し、ケーネストは弁当を食べ終え、二度寝にチャレンジした。
俺は食後に片付けをして、メダカの餌を買う為、ドラッグストアではなく、でかめのホームセンターの開店時間に爆速でチャリ漕いで買い物を終え、家に帰った。
ミルシェラには最近流行りの声付きの漫画動画のボイストゥーンを見せていたので、ちゃんと大人しく家にいた。
「よし、化粧品とお菓子等を買ってきたから、ケーネストに帰宅しますという手紙を置いて帰るぞ」
「はーい」




