地下の壁画
「あ~あ、随分痛んじゃってるよ」
俺の剣を見ているメイトが、眉間に死を寄せながら言う。
「複数の属性力に耐えられるように作ったと言っても、一度に六つは流石に剣の負担が大きいよ。只でさえ、光族の技術を使ってないんだから」
「そうか。悪ぃ悪ぃ」
行けるかと思ってやってみたが、剣の耐久力じゃもう使えねぇか。
「しっかし、流石だなガクラ。本来なら、属性力を二つ以上も同時発動は出来ねぇんだが、一気に六つもやっちまうとはな」
「感心してる場合じゃないぞブラーク。俺達今五位なんだぞ。一気に追い上げねぇと優勝は無理だぞ?」
焦り気味なソルラに対して、落ち着いた態度のブラークは、ジョッキの酒を飲んでテーブルに置く。
「お前が焦る気持ちは分かるぜ、ソルラ。確かに、折角SSランクが三人いてこの順位は、俺も納得不満だからな」
「だったら……」
「だからこそ……冷静に行かねぇとな。もう後は、最終日しかねぇんだからな」
「お……おう」
流石ベテラン冒険者だな。
本来なら焦る時でも、常に落ち着いてやがる。
「最終日がどんな内容かによって、僕達も逆転のチャンスはあるね」
「最終日は全員参加って聞いたが……何やんだ?」
最終日だし、結構派手な事すんじゃねぇか。
こんな祭り開く王様ならやりそうだ。
「失礼。光族はいるか?」
突然宿の扉が開くと、マントと着込んだドラスナー王と、数名の騎士が入ってきた。
「ド、ドラスナー王陛下!? 何故こちらに!?」
急にやって来たドラスナー王に、マルナは慌てた様子で立ち上がった。
「なぁに。言った通り、光族に用があって来た」
「俺達ならいるが、何の用だ?」
「いるのならば話が早い。是非、見せたい物があるのだ。来てくれないか?」
俺達に見せてぇ物? 何だそりゃ?
「興味があるのなら、他の者達も来て良いぞ」
「え? 良いんですか?」
「構わん。見られて困る物では無いからな」
結局全員がついてきて、ドラスナー王の案内で俺達は、王都の隅っこの方に来た。
人気が全く無い所に何があるのかと思うと、前方に小さな洞窟が見えた。
「この先だ」
ドラスナー王と騎士は松明に火を点けて洞窟に入り、俺達も続けて入る。
外から見ると、一見何の変哲もない普通の洞窟だが、中に入って違和感に気付く。
「この洞窟……やけに光素が濃いな」
「ああ。洞窟の様な暗い場所なら薄い筈なんだがな」
「そうなの?」
光素を感じる事が出来ないユールが不思議そうな顔で訊ねた。
「ああ。一体何があるんだ、この先に?」
ドラスナー王が俺達に見せたい物と関係あんのか?
地下へと続く洞窟を進み、やっと一番奥まで来た。
「これだ」
「これは……」
ドラスナー王が見せたかった物。それは一枚の壁画だった。
その壁画に描かれてるのは、アスタラードの種族達と、魔物と魔族が戦っている様子だった。
その中で一番気になるのは、アスタラードの種族側に、光族が描かれている事だ。
「なぁ。この壁画、まさか……」
「うむ。学者の推測では、この壁画に描かれてるのは正しく……光闇戦争だ」
やっぱりな。
見た感じ戦争の構図だから予想は出来る。
……アスタラードの種族側にいるのは光族で間違いねぇが、魔族側にも似た様なのがいる。
「なぁ。魔族側にいるのって、やっぱ……」
「ああ。闇族だろうな」
かつて光族と対立し、光闇戦争で絶滅した闇族。
この戦争では魔族達に付いたと聞いた。
当時の俺達は赤ん坊だったから、全部聞いた話だが、両者ともにかなりの被害が出たと聞く。光族も何人か命を落としたらしい。
「ドラスナー王様! これは歴史的大発見じゃないですか!?」
歴史が好きなゲイブにとっては、この壁画はかなり興味ある見てぇだな。
「うむ。学者もそう言っていたが……既に光族に会っている身としては、もうかつて光闇戦争が起きていたのは承知だからな」
「ガクラ達に会う前に見つけていたら大発見……だったかも知れないって事ですか?」
「そうだな……」
あ~。もう俺達に会ったから、ドラスナー王にとっては、インパクトが薄かったのか。
「にしても、何でこんな壁画がここにあるんだ?」
「学者の調査によると、どうやら光闇戦争はここ、リューロン王国で起きていたようなのだ。だから当時の者は、ここに壁画を作ったのではないか。と推測している」
「ここで……光闇戦争が」
それが本当なら、ある一つの疑問が解決する。
この洞窟に漂う濃い光素。きっとこれは、戦争で亡くなった光族の残留エネルギーみたいなもんなのかも知れねぇ。
それがこの洞窟……いや、地下に溜まっていったのかも知れねぇ。
「この壁画を知れたのは良かった。ありがとよ、ドラスナー王」
「なぁに。今日は良き戦いを見せてくれた礼だ。最終日も期待しているぞ」
「ああ」




