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営業マンは悪を打ち倒すべく行動を開始する 後編

本日の夜に投稿する予定だと、昨夜ちょうど23時間くらい前に言いましたよね?あれは嘘だ。

すみません、本当の事を言うと全部下書きから話の流れ書き直してました(汗)

今度こそ、遅れてる分の投稿は今日(26日)の夜に投稿する......つもりですが、出来ないかも(涙)

必ず今月中には...いや!今週中には埋め合わせをするぞぉ。



「ここに、あいつらの拠点があるってことか……」



 人々が寝静まった真夜中。


 俺たちは昼間、王都の冒険者ギルドで会議をしたのちにそれぞれがどう動くかの分担を決めた。

 組織を潰し罪を白日のもとに晒すといっても、複数の拠点やユニットがあるであろう『影』。

 彼らのやっていることは犯罪であるため、いくら事態をもみ消せる権力者が上にいるとしても、事がバレないよう警戒はしているはず。

 もし襲撃された場合はすぐに他の仲間に知らせるとか、そうした用意もされているだろう。


 この世界は通信手段が極めて少ないが、ミシュリアやミュリエルさんに話を聞いた限り、どうも巻物に魔法を刻み込んだ通信術式コミュニケイトという魔法道具マジックアイテムが流通しているらしい。

 それなりに値が張るため新米冒険者は買えないが、ある程度資金に余裕のある高ランク冒険者や、資金が税金で賄われる騎士団や軍といった組織では起動さえすれば遠隔地に即座に情報を伝達できるため、ポピュラーに使われる連絡手段のようだ。

 欠点は巻物の中でもサイズが大きく持ち運びに適していないことや、書かれた術式を起動させるまでの詠唱が長く、起動に時間がかかるというところか。


 しかし、これは逆に言えば通信術式コミュニケイトの巻物さえ起動させなければ良い。

 昨夜に奇襲をかけてきた奴らはこの倉庫を拠点に活動していたが、非常時に備えて他の拠点ともコネクションはあるはず。

 今回は奴らからそれらの情報を『鑑定眼』を使って取り出せさえすれば良い。

 あとは、ここに残っているかもしれない書類を可能な限りデータを持ち出すべく、ギルドマスターに結構な無理を言って”良質な紙”を大量に自分の影に『影使い』のスキルで収納してある。

 どうやって書類に書かれた情報を取り出すかって?

 それについてはあとのお楽しみだ。



 当然というか、このようなスパイ的な事が出来るのは現状俺一人なので同行者はいない・・・と思いきや。

 曰く俺の実力を確かめておきたいという事で、連合クランのリーダーであるミュリエルさんも同行している。

 ステータスだけで言えば正直俺よりも低いわけだが、俺よりもずっと前から冒険者として生きてきた経験の差は無視できないだろう。

 いざとなった時には、一緒に戦ってくれるとのことだ。

 ……狭い屋内で刀3本どう扱うのかというツッコミはしないのだ。



 そんなわけで俺とミュリエルさんは現在、襲撃した奴らの拠点の一つと思しき倉庫の近くに潜んでいる。

 今日は1日を通して曇りの天気、夜は松明や篝火以外で唯一の光源たる月明かりも役に立たない。

 忍び込むのなら、こんな日が一番だろうからな。


 目標はあくまでも、拠点に詰めている構成員の抹殺ではなく情報の収集。

 いわばスパイとして潜入するのがメインのため、ぶっちゃけ力押しが専門のミュリエルさんが来た所であまり役に立たないのだが……。

 そこは気にせず、見守ってもらうことにしよう。



「ミュリエルさん。わかっていると思いますが、貴方が力を振るうのは本当に私がピンチに陥った時に限った場合です。潜入する上で貴方は正直に言えば邪魔にもなります。確実に『影』を滅するというのであれば、私の指示なく下手な行動は決して起こさないように頼みます。出てきた『影』の構成員を捕らえて拘束或いは殺すなんてこと、怒りに任せて絶対にやらないようにして下さい。彼らはきちんと、法の下で裁かなければならないんですから」


「え、ええ……。努力するわ」


「絶対に指示なく手を出さないで下さい。ここで一人でも構成員が殺されれば、こちらの正体が露見せずとも正体不明の敵に対しての警戒が強くなります。そうなれば、彼らを完全に一網打尽にすることは出来なくなるかもしれません。不用意な行動が計画をおじゃんにするのです。良いですね?」


「は、はいっ」


「では、よろしくお願いします。万一の時は頼りにしていますから」


「い、いってらっしゃい」



 手を振って見送るミュリエルさんを尻目に、俺は気配を消して倉庫に近づく。

 以前ラパーヌ大襲撃からリーシュの街を守った際、レベルの上昇と同時に得られたスキルポイントというもの。

 これはスキル自体のレベルアップと同時に習得可能となる魔法や能力を獲得するのに必要なポイントである。

 だがこのポイントは、別に技の習得だけに使えるわけではなく、スキルのレベルアップ自体にもポイントを割り振ることが出来るのだ。


 俺は王都の冒険者たちと協力して『影』を倒すと決めた際に、このポイントを使ってある能力を獲得していた。

 それが、『暗殺者』スキルのLv.SSSになると同時に獲得できる『気配を完全に消す』能力だ。

 基本的にどの人間でも、レベルアップ時に獲得できるスキルポイントは2ポイントと決まっているらしい。

 そっから考えると、一般の冒険者がスキルを極めるのにはかなりの年月が掛かるということになる。


  RPG風に考えるとだ。

 レベルは上がれば上がるだけどんどん次のレベルアップに必要な経験値の量が上がる。

 高レベルになればそれだけ一つのレベルを上げるのには時間も労力もかかる。

 にもかかわらず、それで得られるスキルポイントはたったの2ポイントだ。

 スキルも多分そのシステムを考慮して組まれているんだろうか、もともと70ポイント貯まってた内の60ポイントを『暗殺者』そのものに振り分けたらレベルが上がった。


  Lv.SSからLv.SSSに上がるには結構な経験が必要だと思っていただけに、少々拍子抜けであったが。

 そんなわけで、俺は『気配の完全遮断能力』を得たのだ。

 これの効果はすでに他の冒険者たちにも実践して理解しており、あの場にいた連合クランの中では一番強い(メンバー全員の認識である)ミュリエルさんでさえも、俺が気配を消した状態でのかくれんぼで俺を見つけることは出来なかった。


 多分これだけの力があれば、『影』の連中にも気付かれる可能性は低いだろう。


 ちなみに余談だが、ミュリエルさんはSランクのグレード1らしい。

 次昇格すればSSランク冒険者だというのだから、それはまた凄い人にかくれんぼで勝ってしまったと思った。閑話休題。






 昨夜交戦した『影』の男から取り出した記憶を元に、彼らが通用口として使っていると思しき入り口から静かに忍び込む。



(『暗殺者』スキルのLv.SSSで獲得した能力、および『鷹の目』を発動)



 直後、俺の頭の中にこの倉庫にいる全ての生物反応がレーダー状になって浮かび上がってきた。

『暗殺者』スキルのLv.SSSで得られる能力は、気配遮断の他に匂いや熱源を探知して敵の居場所を割り出す能力がある。

『鷹の目』のマークと組み合わせると若干効果がダブってはいるが、マークしていない新たな敵もいる可能性があるこの場においてはとても有効な能力である。


 予め、拘束した『影』から頂戴した仮面……のようなデザインをした兜と黒のマントを羽織っている。

 万が一見つかった時にもこれなら安心だね! ということである。


 忍び込んだドアを静かに閉じ、周囲の気配を感じる。

 手元には万一に備えて暗器の一つのピンを持ち、慎重に進んで行く。



(やっぱり、電気があるのと無いのとじゃ部屋の明るさが段違いだ)



 自分自身が視覚的にバレない手助けをしてくれているとはいえ、一月経った今でも現代人の感覚は無くならないな。

 ん? 誰かこっちに来るな。


 倉庫にある適当な荷物の裏に隠れながら、こちらに近づいてくる者の気配を探る。

 こちらに来た男たちはいつぞやで見た仮面のようなデザインの兜を被り、膝まである黒のローブを纏っている。

 俺はこの二人に『鑑定眼』を行使し、内に秘めている関係者の情報を集めてみる。


 すると、ここ以外にも幾つかある拠点の中で『ランザム男爵』が管理する邸宅、奴隷市場が開かれる会場の場所、連れ去られた違法な奴隷を収容しておく場所が分かった。

 だがまだこれだけでは無いだろう。まだまだ拠点としている場所の情報はあるはずだ。


 俺は彼らが話している会話に耳を傾けてみた。



「なぁ聞いたか?」


「なんだ?」


「王都にノコノコときたミシュリア様の襲撃が失敗してからというもののよ」


「ああ。かしらが”上”に相当どやされてるってんだろ?」


「そうそう。俺もまさか、あんな手練れが居るとは思わなくてよ」


「あの鎌使いの実力は高すぎるよなぁ。頭がすぐに撤退を指示するって、『鑑定眼・中』を持ってる頭があの男のステータスを見た途端にエライモンでもあったのかね」


「さぁな。頭は無駄に兵を浪費することはしない主義だけど、このまま”上”の機嫌が悪くなりゃ下手すっと」


「俺たちに討死覚悟で抹殺命令が出そうかもってか?」


「ああ、その可能性はあり得そうだ」


「はぁ、”上”も厄介な連中がいるところに目をつけたモンだぜったく」


「同感だ」



 なんだって?

 襲ってきた奴らの中に『鑑定眼』を持っている奴が紛れていただと?

 見逃せない危険な情報だ。

 もう一度彼らの記憶を覗き見て、『鑑定眼』に関わる情報を探し出す。



(やはり、あの時の指示と今の男たちのセリフからもそうだとは思ったが、あの隊長格の男が『鑑定眼』持ちか)



 そうなると、あの時の時点で俺のステータスを覗かれた可能性がある。

 ミシュリア誘拐の計画を邪魔立てした挙句、部下をリオを含め3名奪われた原因。

 やつも『鑑定眼』を持っているのであれば、ステータス以外にも俺の記憶を覗いた可能性だってある。

 とすれば、隊長格の男はすでに”上”の者達に俺の情報を伝達済みと言って良いな……。


(これが後々、尾をひく事態にならなければ良いが)



 とにかく今は情報を収集することが優先だ。

 男達が死角へ去ったのを確認して、さらなる情報収集のために倉庫を移動する。



 それから様々な構成員を見かけては記憶を覗き、『影』に関わる情報を収集してきた。

 その結果、実に様々な商人・貴族・果ては公的機関や罪人を取り締まるはずの騎士団・衛兵にまでネットワークが広がっていることを確認した。

 加えてこの拠点の書庫にあった”上”との取引の証拠となる数々の書類。

 俺はこれらに書かれていることを全て『道具使い』のスキルによる『道具の扱いの上手さの向上』という能力を利用し、筆の扱いを『筆の扱いが神がかったレベル』として実際の俺の筆使いを補強する。

そこに『影使い』の能力で前もって用意していた”良質な紙”とインクとペンを取り出し、そこにパパッと迅速に、けれども『書類の筆跡をそのままに』情報を書き写していく。


 いやはや『道具使い』のスキルも中々えげつない。

 何しろ、『どの道具の扱いの上手さをスキルで補強するか』という明確な対象を描いていないのである。

 そこから転じて、もしかして高速に書類を転写するってことも出来るんじゃと思い、ギルドで前もってテストしてみたところ見事に大当たり。


 印刷する技術なんてありゃしないし、製紙技術も発達してないこの世界。

 俺が要求した”大量の良質な紙”というのは、下手をするとギルドの財政を圧迫しかねない程の費用がかかる訳だが、彼らのネットワークから予想して取引に羊皮紙を使わなそうと踏んだところ、それもビンゴ。

 貴族様にはわざわざ自前の良い紙があるのに、取引に質の悪い羊皮紙なんて使わないという訳だ。

 貴族で良いもの使えるのに質の悪いものを使うなんて、それだけで貴族の高い身分の者としてのプライドを傷つけるような印象を持つだろうしな。


 なんで俺が無理を言って”良質な紙”を選んだかといえば、結局のところこれを証拠としてこちらの手元に残しておくためである。

 いずれ彼らの拠点全てを一網打尽にする際、おそらく彼らは確実に証拠隠滅を図ってこれらの証拠となる書類を燃やすなりして破棄するだろう。

 そうやって、『原本オリジナルの証拠がなくなった所に本物コピーの証拠を突きつければいい訳だ。

 筆跡鑑定をされたとしても、スキルのおかげでほぼ完璧に筆跡を真似てコピーの証拠は書かれていっている。


 万が一魔法で時をさかのぼって証拠の信憑性を図られたとしても、俺の格好を考えればどうみても『影』の構成員が書類を書いているようにしか見えないし、問題ないだろう。



 なんてこと考えながらスラスラ〜っと書いてたら、10分も経たないうちに転写を終えてしまった事に本気でびっくりである。

 物理的に不可能だと思っていたんだが、え? ナニこれ?

 どこかの珍百景を取り扱っていた番組もビックリな早さだよ。

 ていうか、普通ならどう頑張ったって出来やしない壁をモノの数分で超えちゃってるよ。


(まあいいや。転写が全て終わらせられたのならそれで問題ない。情報収集の行程が大幅に縮むだけだ)



 それからも、拠点に残る構成員から情報を引き出し続ける。

 そして拠点を歩き回ること数十分、遂に隊長格の男を見つけた。

 が、どうも仮面越しに『鑑定眼』で見えた表情はやつれているように見える。


 先ほど男達が”上”から相当どやされていると言っていたのが原因かと考えていると、誰に言うでもなく男は独り言を口にし始めた。



「クソ……。まさかあの鎌使い、ラパーヌの群れを撃退したというからもしやと思ったが、やはり普通の人間が勝てるような身体じゃねえ。

 しかもなんだ? この俺の『鑑定眼・中』を使ってステータスを覗き見ようものなら、途端に何かに弾かれてロクに見えやしねえ。『中』の字が付いた『鑑定眼』すら拒絶したってことは、強力な盗撮防止プロテクションが掛かっていたか、或いは俺よりも上位の『鑑定眼』を持ってるか……。

 いや、そんなことはあり得ねえ。この国で俺より上位の『鑑定眼』を持っている奴は居ねえはずなんだ。これは『組織』の情報網を以ってはっきり証明されている。じゃああの男のアレは一体なんなんだ?」



 なるほど。

 自分より下位の同系統スキルから受けた干渉は自動的に弾くと判断していいのか。

 少なくとも俺の気配に気づいた様子を見せていないからには、男がこうして口にしていることは本当の事だと思っていいだろう。


 だがここで疑問が出来た。

 下位から上位に同系統のスキルを使う=相手に干渉すると拒絶されて弾かれたという。

 その逆の場合だとしても、同系統スキルの上位から下位に干渉するという事実は変わらない。

 このパターンを実行した場合、相手は俺の存在に気付くのだろうか?



(けど、ここにいる中で最も情報を持っているのは間違いなくこの男だ。博打でも、得られる情報は取得しておいたほうが良いな)



 俺は覚悟を決め、男に向かって『鑑定眼』を発動した。



「ツっ! なんだこの痛みは……。まさか、あの男が近くにいるのか?」



 不味いな。

 やはり同系統のスキルの干渉は相手に影響が出るようだ。

 前回男に発動した際には戦闘中であり、アドレナリンの影響で興奮してそこまでは気が付かなかったんだろう。

 だが今はそれとは状況が違う。


 俺はとにかく男から情報を奪い取る事だけに集中する。



「くぁっ……。クソ、頭が裂けるようにイテェ……。まるで頭の中を、何かが這いずり回ってるような感覚が……ぐぅぅっ!」



 同じ『鑑定眼』を持たない者であれば大した事はない干渉。

 しかし同系統であれば、互いに反発し合う現象が起こっているのだろう。

 現に覗き見ている側の俺も、男からチカラを排除しようという反発を受けて、それが結構な痛みの頭痛となって俺の体に現れている。



 しかし、痛みに打ち勝って情報を持ち帰ればコッチのもんだ。

 無茶苦茶に痛かったが、なんとか男から必要な情報は今度こそ得る事ができた。


 この倉庫を拠点として提供しているナーベラ商会、リオが直接所属しているのだろう清心教、そしてこの国を動かす政経界の数々の重鎮達。

 次はどこを狙って行こうかと思ったがその必要はなかった。


 実働班として直接標的ターゲットに手を下す『影』の全てを総括するのが、今俺の目の前で頭痛に呻いているこの男なのだった。

 確かに『鑑定眼』を持っているのなら、スパイとして『影』に潜入を図った奴に直ぐに気づける。

 それに指揮能力や戦局を見渡すチカラもそれなりにある事は昨夜の戦いで分かっている。


 つまるところ、”上”からの指示を受け部下に伝達、命令を下し隊を指揮する総司令官がこの男だったというわけだ。



(おかげさまで手間が省けたぜ。どのみちあと何軒か証拠書類の転写のためにお邪魔はするが、これだけの情報があるなら一網打尽も夢ではないだろう)





 ナーベラ商会の倉庫に出来た拠点を後にし、ちゃんと大人しく待っていてくれたミュリエルさんと合流する。



「おかえり。戦果は?」


「極めて上々ですよ。あと何軒か、証拠確保のためにお邪魔する予定ですが」


「人づてに得られる方の情報は?」


「幸運な事に、”上”から受けた命令を元に行動する実働部隊の総司令官がこの拠点にいました。あの男よりも上の『影』と呼ばれる者はいない筈ですから、現時点で獲得し得る最高の情報を得られたと思います。さて、目立ちますからゆっくりと、気配を消しながらギルドに戻りましょう」


「そうね。話はそれからでも遅くはないわ」



 ミュリエルさんを連れ立ち、『暗殺者』のスキル効果で周囲を最大限に警戒しながらギルドへの道を戻っていった。

 道中目的地やこちらの行動の目的を気付かれない様に何度も遠回りをする羽目になったが、そこはスパイとしては敵を撒く上で当然の振る舞いと思ってスルーした。



 さあ、いよいよ一網打尽に出来る時が、確実に近付いているぞ。

次回からついに、冒険者達による汚職権力者への蹶起けっきが、一網打尽への展開が.....!!!

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