営業マンは悪を打ち倒すべく行動を開始する 中編
投稿が遅れてしまい申し訳有りません。
本来本日朝6時に投稿する予定の話は、本日の夜に投稿する予定です。
翌朝、ギルドマスターに再び呼び出された俺たちは、ギルドに到着するとすぐにギルドの応接間に通される。
部屋に入ると、見た途端に自分より格上だとわかる冒険者たちが何人も部屋に揃っていた。
皆入ってきた俺を一瞥するなり、不敵に笑ったり睨み付けたりと反応は様々だったが、少なくとも嘗めてかかるような素振りではないと見受けられたので無視する。
なんでそんなことが分かるかというと、俺は人の視線に込められた感情には敏感だからだ。
営業職をやってたことで、もともと敏感だったのがさらに鍛えられたのだ。閑話休題。
俺たちが残りの空いている席に座ったところで、ギルドマスターは威厳のある佇まいをして口を開いた。
「全員来たな。それでは早速だが、昨夜タレコミで入ってきた情報をもとに、”奴ら”の攻略する対象を決めていこうと思う」
「”奴ら”だって? 誰がこんな情報を?」
「ふぅん?」
「タレコミって、一体どうやって獲得したっていうんだ……」
「静まりたまえ諸君。情報ソースについては明かせば、提供者当人が身の危険にさらされる可能性があるため公表は出来ない。いつどこで連中が聞き耳を立てているかわからない。このことは例え、諸君らのパーティーの仲間にも口外することは堅く禁ずる。違反した場合、一生ギルドが管理する懲役施設から逃げ出せないと思え。今回のこれは本当に失敗が許されない。各々、それをよく肝に銘じておくように」
『……了解』
部屋に集まった俺たち以外の冒険者が胸の前で握りこぶしを作り、手の甲を相手に見えるようにして腕を置く。
握りこぶしで胸の中央を叩くようなポーズだが、直後彼らの手の甲に緑色の紋章らしきものが現れ、すぐ消えた。
今のは一体何だったんだ?
俺の疑問を感じ取ったのか、マスターが彼らの行為の意味を教えてくれた。
「あれは秘密を口外することが出来なくなるように掛けられる、一種の呪術だ。実はこの部屋にはここでやり取りされた秘密を守らせるため、会議に参加した者が”あるポーズ”を取る事で呪術を掛ける術式が常時発動されている。それがこの、胸の前で腕を置くというポーズだ。悪いが、君たちにもこのポーズを取ってもらいたい」
「は、はぁ」
言われた通りにポーズをすると、俺の手につけたグローブの隙間から光が漏れ出て、すぐ消えた。
「無事に口外不能の呪術が効いたようだ。では早速提供された情報と、それを基にした攻略の概要を伝えよう」
マスターは昨夜俺が伝えた、『影』に関する情報を要点をまとめた形で簡潔に伝えていった。
その際信じられないと言った言葉が上がるもんだと思ったが、意外にも部屋にいる先輩の冒険者たちは皆そろって難しい顔を浮かべる。
ついで、「確かにそこなら事を隠しやすい」とか「上手い事誤魔化してやがる」といった呟きを漏らす。
俺はそんな彼らのリアクションに少し驚くが、これも別段ツッコムような事でもないのでスルーしておく。
気になった事は後で個人的に聞けばいいしな。
マスターはすらすらと分かりやすく情報を伝え、この場に揃う冒険者たちを一度見渡したのち、口を開く。
「以上が、本攻略作戦における提供された情報だ。何か質問のある奴はいるかね?」
「はい」
くすんだ色の金髪を長く伸ばし、ポニーテールのスタイルで後ろに結んだ美人の背の高い女性が手を挙げる。
彼女の近くには剣の入った鞘が3本あるから、その内のどれかが彼女の得物なんだろう。
ジョブ型のスキルは剣士か何かだろう、『鑑定眼』に大幅な情報制限を掛け(具体的にはステータスとかのみ、記憶などのプライバシーは覗かない)彼女のステータスを『鑑定』してみる。
♣♣♣♣♣
ミュリエル・ラーナフォルン
性別:女
Lv.48
HP:8727
MP:3125
力:371
魔力:267
知力:306
体力:358
俊敏力:332
幸運:146
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『剣士・達』
『指揮・上』
『三刀流・極』
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『力拡張・A』
『体力拡張・A』
『知力拡張・B』
♣♣♣♣♣
『剣士・達』のスキルが入っているから、剣を得物にするのは間違いない情報だな。
それにしても、彼女の見た目は30に届くかどうかというくらいだ。
プライバシーに関わる情報は遮断してるので歳は分からないが、彼女が見た目どうりの年齢ならば、ジョブ型スキルが『達』まで到達してるのを見る限りセンスは相当なものだろう。
いくらセンスがあったとしても、通常は鍛錬を積まなければスキル横の漢字の位が上に上がる事はない。
彼女が『極』の次に位の高い『達』を持っているというのは、俺みたいにこの世界に来た途端バグったステータスを与えられたのではなく、センスに恵まれながらも相当の努力を積んできた事の証でもあるのだから。
というか、三刀流ってなんだ。
某海賊が大至宝を巡って冒険する漫画の剣士よろしく、両手と口に刀挟んで戦うのか?
そういえばよく見ると彼女のそばの武器、剣かと思ったら鞘が弓なりに反っている。
なるほど、わざわざ『三刀流』については『極』を会得するまでのことだ。
あの刀は三本とも全部彼女の得物というふうに解釈して良さそうである。
他のステータスについても、俺がリーシュで見た一人前の冒険者の身体能力の平均値と比べて強者の部類に入るのは言うまでもない。
そんな彼女が、マスターからの質問の有無を問われ手をあげる。
「まず、正直聞きたい事は山程あるのですが、この場にいる全員に共通するであろう疑問を幾つか」
「構わない。述べたまえ」
「ではまず一つ、この情報はどれほどの信憑性があるのか。我々が本当に命を預けるに足るのか、その根拠を教えていただきたい」
「ではまずその疑問に回答しよう。結論から言えば、この情報提供者は『鑑定眼・極』をスキルとして有している」
「『鑑定眼』!? それも『極』!?」
「そうだ。かの者のスキルはまだ第一段階とはいえ、『極』ほどの強力なスキル効果は恐らく盗撮防止系統のスキルや魔法では防げないだろうということ。これは絶対に偽造できないギルドカードを通して確認している以上、間違いはない」
「そう、ですか。では二つ目。マスターのおっしゃるその”情報提供者”が、なぜ我々冒険者とギルドに情報を提供したのか? 『影』のような犯罪者の拠点を知っているのであれば、国家が有する警察機関である騎士団などに、普通は提供するものでは?」
情報提供者、と言ったタイミングでチラリと彼女は俺を見た。
すぐになんでもないように視線をマスターの方に戻したが、俺はその瞬間気付いた。
彼女だけではない、他の冒険者たちも同時に俺たちへ視線を一瞬だけ向けたのだ。
(これは、俺が”情報提供者”だってのはバレてると見て間違いないな)
腐っても冒険者のトップに位置するツワモノたち。
ギルドマスターもそうだが、彼らもまた人の機微に敏感に気付けるほどには眼が良いようだ。
ある日突然『影』に関することで呼び出された高ランクの冒険者たち。
本来はそれだけで事足りるはずが、突如見知らぬ男と2人の女が入ってきたとすればだ。
そのタイミングで有力な情報が入ったと言われればまず、初見の俺たちを疑うのは道理である。
バレているのなら、俺が情報を隠す必要性はなさそうだ。
昨夜この件について情報をどこまで話すかをマスターと検討し、その結果俺の名前は出さないという結論に落ち着いたのだが、こうしていきなりバレているんじゃ隠す必要性はもはやほぼ無いと言って良い。
下手に隠したところを勘繰られてさらにボロを出すよりか、ある程度自分から情報を公開した方が収まりが付くだろう。
これから『影』に対して一矢報いるまでの間は、彼らとは一緒に行動することにもなる。
不和の種を蒔いてチーム壊滅のキッカケを作るなんて、そんなバカらしい事は避けるべき未来だ。
そう俺は判断して、彼女からマスターへの質問の最中ではあるが挙手をする。
案の定、何を話すつもりなのかという視線がいくつも俺を射抜く。
「マスター。昨夜決定したことですが、どうにもこの部屋に集った諸先輩方にはすでに薄々気付かれているようです。ですので、今回提供された情報については私が答えられる限りお答えします」
「……君も気付いたようだな。我々の隠蔽工作はハナから意味を成していなかったようだ」
「そのようです。下手に疑いからの不和を生むよりも、私自身の情報を明かした方が得策と思い発言しました。それで、そちらの方」
俺は彼女・・・ミュリエルさんに視線を移し、再度言葉を掛ける。
実際は『鑑定眼』で名前を知っているが、自己紹介をしていないので彼女は俺のことを知らないはずだ。
なので名前を知らないふりをして「そちらの方」と呼ぶ。
「やっぱり、貴方が”情報提供者”だったのね。では私の二つ目の疑問に答えてくださるかしら?」
「理由は幾つかありますが、まず私の隣に座られているこちらの方。皆さんも、ご存知ではありませんか?」
「あら?」
ミュリエルさんは俺に言われた通りに、俺の隣に腰掛ける冒険者の格好をしたミシュリアのことを見る。
するとすぐに正体に気付いたようで、形の整った眉を片方ピクリと上げた。
「もしかして、ミシュリア様なのですか?」
「ええ、お久しぶりですミュリエルさん。驚かれました?」
もともと王都ではそれなりに顔が売れていると言っていたミシュリアだ。
ミュリエルさんとも以前から知り合いだったんだろう。
さすがに冒険者風の形をしている所は見た事がなかったようだが。
いたずらが成功した時のような微笑を浮かべるミシュリアに、思わず面喰らった表情を浮かべたミュリエルだったがすぐに表情を戻して口を開く。
「それは驚きます。それで貴方、ミシュリア様がどうかなさったの?」
「先に結論から申し上げると、昨夜の未明、ミシュリア様を狙った『影』による奇襲が敢行されました」
『!?』
ミシュリアが夜襲を受けたと言うことに驚愕する冒険者たち。
そもそも何故俺のような男が貴族のミシュリアと共にいるのかという疑問があるにせよ、仮にも伯爵家の令嬢に対しても『影』が手を伸ばしたという事実に、冒険者たちは驚きを隠せないようだった。
「なぜミシュリア様に襲撃が?」
「詳しい経緯は分かりませんが、私が『鑑定眼』により、拘束した『影』から情報を取り出したところ、誘拐したのちに奴隷市場へ売り出すのが狙いだったのではないかと。それだけなら奇襲が行われた事に理解はできますが……」
俺は一旦敢えてここで言葉を区切る。
俺の発言を聞いていた冒険者たちは、この話の区切り方から何か嫌な内容を話すんじゃないかと身構えている。
再度周囲の彼らの顔を見渡し、再び言葉を発する。
「我々はつい昨日のうちにこの王都に辿り着いたばかり。にもかかわらず、来た当日の深夜に襲撃が行われたのです。つまり……」
「襲撃は入場の検問を担当した騎士団や衛兵たちからの情報を元に決行された可能性が有る。と?」
「やはり内通者が騎士団に紛れてるわけか。『影』に関する情報を騎士団などの公的権力に寄せたところで、内通者が紛れているんじゃそこから敵に情報が漏れて、こちらの作戦に対策される」
「だから、相互不干渉の立場をとり、国家権力との繋がりが薄い冒険者ギルドを頼った」
「お話が早くて助かります」
「くそ……これは思ったよりも厄介な状況ね……」
悔しそうに歯噛みをしながら思わずそう呟くミュリエルさん。
そういえばマスターは昨日、自分たち冒険者も辛酸を味わってきたと言っていた。
奴らの行いと何か関係があるのだろうか?
周りを見れば、ミュリエルさん以外にも他の冒険者たちも同様な顔つきをしている。
皆、予想以上の敵の手強さにどうするか戸惑っている感じだ。
「マスター、私からここに揃った皆さんに一つ聞きたいことがあるのですが」
「なんだね」
「マスターは昨日、冒険者たちは辛酸を味わってきたと言っていました。それに加えてここにいる皆さんの悔しさが見える表情、奴らは冒険者に何をしたのですか? 彼らが関わっているとすれば、誘拐や暗殺が行われたとか?」
「まさしくその通りだ。詳細は今ここで言う事ではないため伏せるが、ここにいる者たちは皆、過去に『影』によって自身の組むパーティーメンバーを消されている」
「っ!」
薄々感じていたとはいえ、本当に彼らは仲間を『影』によって奪われたのか。
いくら『影』が対人戦や黒い事に慣れた連中とはいえ、ミュリエルさんを始めとしたこれだけの実力者であれば善戦するくらいは出来るような気もする。
……いや、違う。
勝つためならば手段を選ばないと言われてる『影』のことだ。
昨夜俺たちにしたのと同じように、相手が対応できない間に目的を遂行するような形を取ってきたのかもしれない。
要は『影』にとっては”上”が望む対象だけを掻っ攫うか殺せばいい。
「荒くれ者が多い冒険者ではあるが、被害に遭った彼らは揃って人のために助けようと動ける素晴らしい人間だった。例えば、スラム街の住人に炊き出しをしたりと。
だがそんな彼らの事を、裏では良く思わない奴らがいたという事なのだろう。
王都という街の性質上、民の暮らしよりも自分が優先という貴族も多く集まっていてな、そういう連中がいるから王都にスラム街が出来てしまうのだと彼らはいつも嘆き、そんな状況を改善するために積極的な働きかけもしていた。だが」
「それが『影』を裏で操る者の目に止まり、邪魔者とばかりに消されたと」
「”男”ならな」
「”男”なら? じゃあ、女性は?」
「男の欲を満たすためのオモチャにされたか、奴隷として競売にかけられたのだ。気付いた時には港から船が出た後、というケースが多かった。あるいは、自分のこれからの未来に絶望して自ら命を絶ったり……な」
「なんてことだ……」
俺がこの世界に来る前に住んでいた日本という国。
これがどれだけ恵まれた環境だったのか、改めて思い知らされる。
スラム街で日々飢えと戦いながら必死に生きる人、そんな彼らを救おうと懸命に努力した心ある冒険者。
そんな彼らをまるであざ笑うがごとく振るわれた運命は、あまりにも残酷すぎる。
ただの腹癒せとしか思えない権力の振るわれ方、無茶苦茶な権力の行使が”まかり通ってしまっている”この国の現状。
男は殺され、女は奴隷として売り飛ばされて悲惨な人生を歩むか、その場でプライドに殉じて死ぬか。
こんなふざけた事があってたまるか。
こんなふざけた権力の行使がまかり通ってたまるか。
正しいと思う事、人を救うために行動していたのに、なぜ自分たちはこんな目に遭わなければならないんだ。
ああ、だからここにいる冒険者たちは悔しがっているんだ。
自分たちの立場や身分だけでは、この問題を解決する事はほとんど不可能に近かったから。
できる事なら自分の仲間に関わったやつ全員を八つ裂きにしてやりたい、そんな怒りが確かに宿っている。
けれどもそんな事を現実に実行などできない、彼らはやり場のない怒りを内に抱え込むしかなかったのだ。
「失礼、皆さんの傷を抉る言葉の数々、どうかお許しください。皆さんにお聞きします。貴方がたは『仇を取りたい』ですか?」
『!?』
俺が発した言葉に、彼らの目が再び驚愕に染まる。
その目に映るのは『何を言っている』という思いと、『もしかしたら出来るのか』という二つの気持ち。
それらが混ざり合って複雑な感情を描いているのがわかった。
「私は今、『影』とそれを操る者たちのあまりに身勝手な振る舞いに、極めて強い憤りを感じています。もちろんそれは当事者であるあなた方とは比べるまでもありません。
しかし、『鑑定眼』の力がある今、私はこの力を人を救う事に使いたいと思っています。
もしあなた方がこの一連の事件の解決と同時にこの国を覆う闇を払いたいと思っているのなら、私はその思いに応える覚悟がある。私は国を救うという覚悟を昨夜マスターに話し、そしてマスターの思いによって当事者たる皆さんはここにいる。
ですから、今ここで覚悟を決めていただきたい。モタモタしていれば私が持つ情報も古くなります」
『……』
シンと静まりかえる部屋。
普通ならこんな事を言った所で、おそらく彼らからは何をほざいてるのかという声が飛んできた事だろう。
けれど、そんな声が上がる事はなかった。
彼らは皆そろって、今自分が対面している現実をどう捉えるべきか迷っているのだ。
俺には彼らの負った”傷”がどのような物なのかは分からない。
でも、彼らに傷を負わせた奴らに一矢報いるまたとないチャンスなのは事実だ。
この国が抱えている致命的な問題は一刻も早く解決しなければならない。
俺を殺す刺客として差し向けられたリオも、元々貧しい環境にいたのを『影』を動かす連中・・・権力者層に拾われたのだ。
貧しい者はどんどん貧しく、富める者はどんどん豊かになって格差が広がる。
それじゃあリオみたいな境遇の子がまた増えるかもしれない。
リオみたいな運命を辿る人が増えるかもしれない。
これ以上、この国を覆う闇を留まらせてはいけないのだ。
さもなければこの国の成長は止まり、汚職と腐敗にまみれた腐った国へと変貌していくだろう。
そうなった時に悲惨な運命を歩まされるのは、貴族でも王族でもなく、冒険者を含む我々平民なのだ。
「さあ、権力者層に一矢報いるチャンスは今しかありません。どうか、覚悟を決めてください」
「……貴方、名前はなんというの?」
ミュリエルさんが立ち上がり、俺の名を訪ねてきた。
彼女は心の内で意思をはっきり決めたようで、強い眼差しを以て俺を見据える。
「タカヒト、加賀 貴仁と言います。つい先日冒険者登録したばかりのDランク冒険者ですが、並大抵の冒険者には負けない自負があります。少なくとも、人を傷つけて平気でいられるような『影』よりかは、ね」
「タカヒト、あまり聞かない名前ね。私はミュリエル、ミュリエル・ラーナフォルン。冒険者パーティーの『剣』のリーダーと、今ここに集まっている冒険者パーティーを取りまとめる”連合”『聖光』の統括を兼務しているわ。よろしく」
「連合?」
「連合っていうのは、複数のパーティーが集まって結成される連合の事です」
「あぁ、なるほど」
横っちょからリサが注釈を入れてくれてようやく理解できた。
クランは英語で氏族を表す単語だが、氏族は祖先が同じという認識で成り立つ血族関係だ。
彼らはどう見ても家族には見えないから、クランクランと言われてもピンと来なかったのだ。
「それで、貴方が取ってきた情報は『鑑定眼』を元に得た情報と言っていたわね。じゃあ、一つテストをさせてほしい」
「テスト?」
「そう。貴方が本当に命を預けるに足る、信頼できる人間なのかを試させて。ギルドカードの偽造ができないのは周知の事実だけど、不安は取り除いておきたいの。この目に直接、貴方の力を見せて」
「それは構いませんが……何を指標にテストをするおつもりで?」
「そうね……。じゃあ、私のスリーサイズでも読み上げて
「却下で」
「あら?」
冗談じゃない。
そんなことを、話したこともない人間たちの目の前で読み上げろと?
隣には俺のことを好いてくれている女性もいるのに?
それにも関わらずスリーサイズを読み上げられるほど、俺の肝は据わっちゃいないのだ。
あとあと余計な展開を招く気がするので、その申し出は早々にお断りさせていただく。
「じゃあ、私のスキルとステータスを言ってみて。言っとくけど、私は仲間以外の誰にも自分のスキルを口外したことは無いわ」
「スリーサイズよりマシとはいえ、それも読み上げるのはマズイのでは? 気にしないというなら遠慮なく言わせて頂きますけど」
「どうぞ? 本当に『極』の域にあるなら、私のステータスくらい簡単に覗けるでしょう」
「では、名前はミュリエル・ラーナフォルン。性別は女性。
Lvは48で『HPは8727』の『MP:3125』。
力:371、魔力:267、知力:306、体力:358、俊敏力:332、幸運:146が、ギルドカードに記載されているミュリエルさんの本来のステータスです。
次に、保有しているジョブ型スキルは『剣士・達』『指揮・上』『三刀流・極』の三種類。
パーソナル系で持っているのは『力拡張・A』『体力拡張・A』『知力拡張・B』の三種類。
以上が、ミュリエルさんの持つ総合的なステータスでお間違いないですね?」
「……『鑑定眼・極』って本当にすごいのね。全部当たりだわ。というか、そこまで覗けるんじゃ私のスリーサイズも
「断じてプライバシーに関わる情報は必要時以外に覗きません。なんなら、血書を書いても良いんですよ?」
使い方を変えれば、ミュリエルさんのいう通り覗き放題のスキルである。
そこから疑いや覗かれることへの恐怖によって関係を壊す危険もある。
それだったら、絶対にそうしないことを誓うべく血書を書いても良い。
俺はナイフを取り出して、自分の腕に刃先を当てた。
「ちょっと待ちなさい。そこまでしなくても良いわ。とにかく、貴方のスキルの力は本物だわ。それが分かったから良しとしましょう」
「とりあえずの仮の信頼は得られたようで何よりです」
「ええ、分かったわ。私も覚悟を決める。よろしく、タカヒト」
「こちらこそ、よろしくお願いしますミュリエルさん」
互いに握手を交わす。
女性らしいしなやかだが、刀を持つために堅いというか力強さも感じる手だ。
彼女を見れば、浮かべる不敵な笑顔の中に闘志と覚悟が見えている。
彼女が俺と手を組むことを承諾したのを見て、周囲の冒険者たちも覚悟を決めたらしい。
それぞれが立ち上がり、俺たちを見据えてきた。
「彼らは連合としては私の指揮下に入る。けど、それ以前に私たちには共通して、奴らに仲間を奪われたという因縁がある。みんな、タカヒトと手を組むことに異論は無いね?」
『おう!』
「なら決まりだ。みんなこの機を逃すつもりは無いんだ。一緒に、頑張っていこう」
「ええ。必ず成し遂げましょう」
もう一度、俺とミュリエルさんは頷きあいながら堅い握手を交わした。
予定だと本格的に行動を開始するところまで書くはずが......色々と設定を捕捉してるうちに気付けば9千字オーバーという。




