楽しいBBQの音
じゅーじゅー
日が完全に落ちた頃
遠くからバグパイプの音色が聞こえる
チャカポコチャカポコと太鼓の音も聞こえる
ドォンドォンと花火の音も聞こえる
酒を飲みかわして馬鹿笑いする傭兵の声が聞こえる
肉が焼ける匂いがする
なのに
俺は後ろで両手両足を拘束されて
陣営地の収容所に転がっていた
「よう、あんたも災難だな
こんな日に収容所とはな」
俺は同じように転がっているアルメルの
禿で髭モジャの中年の親父に話かけられたが無視した
俺は王女の急所経穴を突く技を受けて気を失った
ルチオさんの火球で丸焼けになる事は避けられたが
こうして収容所に入れられたというわけだ
「しかも、なんだよこいつらはフロメルでもねぇアルメルでもねぇ奴がここにいるなんてなんだか落ち着かねぇぜ」
収容所には俺と禿の他にも転がっている奴らが居た
王女を襲った刺客二人だ
彼らは傭兵団以外の輩と言う事で
厳重に荒縄でぐるぐる巻きにされていた
俺は結局こいつらの命を奪う事は出来なかった
だけど彼らの命はあまり長くないだろう
なんたってこの国の王女の命を狙ったのだから
「なんだよ誰も何も喋りやがらねぇ!
舌を家に忘れてきたのかぁえぇ!?」
キレ気味の問いかけにも誰も答えなかった
「ちっ、面白くねぇ、俺もBBQで肉でも食ってくるかな」
禿親父は拘束に使われたロープをするする解くと
すくっと立ち上がって鉄格子の扉を普通に開けて
収容所から出て行った
収容所と言っても
戦争の振りをしている集団の収容所だ
普段は誰も居ないか
いてもアルメルが数人、しかもその日の内に脱走と言う形で
自分達の陣営地に戻っていく
そしてそれを咎める者は誰もいない
「おい、あの禿出て行ったけど」
少年のような声がした
俺はきょろきょろと辺りを見渡して
何だ気のせいかと横になる
「今見えただろうがよ!ったくこんなにぐるぐる巻きにしやがって!」
あくまで俺の予想だが喋っているのは老婦人の顔を被っていた刺客だ
もう一人の刺客は目は覚めているようだが先ほどからずっと黙りこくったままでいる
だから多分喋っているのは老婦人の顔を被っている方だ
多分というのは二人とも同じ顔をしているのだ
若干だが黙っている方の目付きは若干きつい気がする
だがそれ以外は同じ黒衣に男のように短い黒髪、、、
「なあ、お前らって双子?今喋ったのが変装名人か?」
俺は素直に疑問に思った事を聞いてみた
「俺は変装名人なんて名前じゃねー!俺の名はフラァテロって言うんだ!覚えとけ間抜け!」
「ばか、、、相手にするな、、、」
爆弾名人は小さくフラァテロを叱責した
ああ、やっぱりこっちは女の声だ
爆弾名人とは俺が叩き斬ろうとした方
結局まだ生きているのだが
「お前らって刺客なんだろ?名前名乗っていいもんなの?」
「お前馬鹿か?暗殺に失敗して、掴まってるんだぜ!
このままじゃ死ぬだけじゃねーか!あれもこれも全部話して
少しでも恩赦をもらうんだよ!」
「バカが、、、無駄だよ、、、
私達に待つのは死だけさ、、、」
ぎゃーぎゃーとうるさいフラァテロに対してこちらは
随分と静かだ
「いや、恩赦あるかもよ
俺たちの傭兵団は何でもありだからな」
俺の発言に今まで静かにしていた方が食って掛かる
「お前、私の事を助けたな、、、何故だ、、、?」
「助けた?ああ、いや助けたつもりはなかったんだけどな、、、
まあ死ぬことはないだろって思ったから?かな?」
「なんで疑問形なんだよ!それらの質問にちゃんと答えろ!」
「それらのって質問は一つだけだったけど?」
「それらじゃなくてソレラだよ!ねーちゃんの名前だ!」
「ああ、なるほど、ソレラちゃんにフラァテロ君ね
俺はエリオ、ソレラちゃんが変な事言ったせいで刺客の仲間扱いされた可哀相な男だ」
「私のせいにするな、、、お前が何者かはどうでもいいが
王女を助けようとする女を
気絶させたのは傑作だったぞ、、、」
ルチオさんを殴った事を言っているんだろう
ソレラはにやりと笑った
普通女の子の笑顔と言えば
可愛らしいものだと思っていたのだが
彼女の笑みは随分と二ヒルなものだった
こいつはわざとやっているだろうか元からそうなのか
どうにも中二感が鼻につく
少しばかり苛立ちを感じた俺は
拘束されていた手足の縄を力任せに外す
わざわざ収容所に転がっていたのは自省の意味を
込めてでもありいつでも抜け出せる状態だった
そうしてのそりのそりとソレラちゃんのそばへと近よっていく
「なんだ、、、今更殺そうとでも言うのか、、、
好きにしたらいい、、、」
好きにしろだと、なるほど好きにさせてもらおう
俺はぐるぐる巻きになっている縄の間から彼女の脇の下に手を突っ込み思い切りくすぐり倒した
「何を、、、ひゃあああ!あああはははっはは!!ひーひっひひひひ!!あははは!!えへっへへへへ!!ふひゃひゃひゃひゃ!!」
「ね、姉ちゃん、、、」
「なんだ普通に笑えるじゃないか
やっぱり中二病キャラ作ってたんだな」
俺はすぽんと手を引き抜き満足そうに壁に寄り掛かった
ソレラは、はあはあと肩で息をしている
果たして俺は、そしてこいつらはどういった処遇を受けるのだろう
俺がしばらくぼーっとしていると収容所の扉が開く音がした
禿親父でも帰ってきたのかななんて思っていたが
そこへやってきたのは意外な人物だった
「よ!エリオ君!肉持って来たぜ!
そいつらの分は無いけどな、、、ぎゃははは!嘘だよ!たっぷりあるぜ!肉も焼きそばもな!」
「ジュリィ団長、、、なんでここへ?」
「俺だけじゃあないぜ、エリオ君
女の子殴っちゃあ駄目だよ
やってしまった事は仕方ないけどさ
せめてしっかり謝ろうか」
ジュリィさんの後ろには
小柄なメガネをかけた女性が佇んでいた
「ルチオさん、、、そのさっきは、本当すいませんでした
俺の勘違いでひどい目に、、、」
ルチオさんは無言で俺に近づくと
こつんと顎に一撃食らわせてきた
「まったくです、本当に悪いと思っているのか
これからしっかり見定めさせてもらいますからね」
今のは仕返しのつもりだったのだろうか
スキンシップみたいなものだったが
「これからも何も、、、俺は散々失敗しつくして、、、
俺は、、、傭兵団はこれからどうなるんですか、、、?」
ジュリィ団長とルチオさんは顔を見合わせる
そうしてジュリィ団長は神妙な面持ちでゆっくりと話だした
「実はな、、、エリオ君、、、君は明日、そいつらと一緒に処刑されるんだ、、、執行人はフロメルの鬼団長、キーリ・アストージア、、、」
俺は座っているのに卒倒しそうなくらいに
くらくらとめまいがした
俺のその様子を見るとジュリィ団長は満足そうに笑顔になった
「ぎゃはは!嘘だよー!!いやーいい反応するねエリオ君!
さあここを出るぞ!ただしお前ら二人は出してやれないがな!
まあどういう処遇になるか楽しみに待ってな!ぎゃははは!」
俺はぽかんと口を開けて今ジュリィ団長が言った言葉を飲み込もうとしていた
「え?いいんですか?ここを出て?何で?どうして?」
「それはこれから説明してやるからよ!ともかくまだまだ肉はたくさん余ってるんだよ!さあBBQに行くぞ!」
ジュリィ団長は鉄格子の中へ入ってきて俺の手をぐいっと引いてきた
「ルチオ!しっかり呪術かけておけ!そいつらはまだここにいてもらわないといけないからな!ぎゃははは!」
ルチオさんはブツブツと何かを唱え始め体を発光しだした
彼女は何を唱えているんだろうと俺は耳をすませる
「おまえらめっちゃ眠くなるお前らめっちゃ眠くなるすぐ寝る寝る寝る寝るめっちゃお前らすぐ寝る」
多分聞き間違いだろう俺は団長と一緒に外に出る
後から澄ました顔でルチオさんが出てきた
「彼らは朝まで起きないでしょう、、、私も肉を食べたい
ですからねしっかりと寝てもらいました」
ほんとかよ!あれで!?俺でもできるんじゃないの!?
疑問に感じながらも俺は黙っていた
バグパイプの音、いいですよね




