団長はBBQがしたくてたまらない
ユーリ団長のイメージはチャニングテイタムです
ジュリィはディヴィット・バティスタ
俺が目を閉じてしばらくたった
すぐにでも体を焼かれると思っていたが
何も起こらない
俺はうっすらと目を開けていくと
未だに王女やソシェは銃は構えているし
火球はルチオさんの頭の上で留まっている
信じてもらえたんだ!
「そうです!俺が王女を狙っていた刺客を倒したんです!」
俺は通算3度目となるセリフを
喜び勇んでひけらかした
だがどうにも王女達の反応が芳しくない
「団長さん?そいつから離れてくれないかしら?」
「ユーリ団長、離れてください、この火球に巻き込まれたら
死んでしまいますよ?」
「ぐごごご、すぴー」
王女殿下とルチオさんが団長と声をかけ
ベルはいびきをかき、ソシェは黙ってこちらに銃を向ける
俺は後ろを振り向いた
そこには、いつも元気でさわやかで、ふざけているようで
やっぱりふざけているフロメル傭兵団の団長が馬と一緒に居た
「団長、、、なんでここに」
「ようエリオ君!今日はお疲れ様!いやーついテンションあがってアルメル追いかけすぎちゃったよ!はっはっは!
それでみんな、何してるの?今日はBBQだよ!?
陣営地に行ってもキーリしかいないしよ!
しかも疲れたから寝るとかいいだしたんだよあいつ!
それで周りの連中に聞いたらエリオ君がセイジョルニまで
出かけたって言うから急いできたんだよ!?
今日はBBQだよ!?はやく陣営地にいこ?」
団長の頭の中はBBQでいっぱいのようだった
決してそういう場面ではないのだが
「あ!王女!本日はお日柄もよく!
よろしければBBQしませんか!?」
いつも冷静で余裕を持った王女殿下でも今度ばかりは呆れ顔だ
「ユーリ団長、彼は暗殺団の一員だったのよ
自分の部下をしっかり管理できていないなんて
傭兵団長失格ね」
「ええ!そうなのかよ!エリオ君
今まで俺の事騙していたのかよ!
サイテーだよ!ひどいよ!」
団長登場で好転するかと思った状況は
再び悪化した
「いやいや!逆ですよ!俺は王女を狙っていた刺客を
倒したんです!」
「だったらなんで私の事を殴ったんですか」
ルチオさん、その言い分はもっともだ
だけどその時俺は知らなかったんだ
君が王女を助けようとしていた事を
どうすればいい、どうすれば言い逃れできる
「まあいいやエリオも王女もルチオもはやくBBQ行こうよ!
あれ!ルチオがなんでここにいるんだよ!?」
声をかけられたルチオさんは火球を頭上に携えたまま
団長の問いかけに答える
「フロメルの団長
私は王女が視察に来ると言う情報に加えて
王女暗殺の情報を掴んでいました
その暗殺を阻止する為に、、、」
「待って!その話長くなる?」
団長の問いかけを無視してルチオさんは話し続けた
「私は王女殿下の近辺を調査していたのです
というか、キーリさんから聞いていたと思うのですが、、、
ともかくそうして王女に付きまとう
刺客の動きを突きとめました
そして彼らが王女を襲う中
私は術式を使い王女達を助けようと思いました
なのに、そこの彼に、フロメルの突撃隊長に、、、
団長今一度言います、そこを退いてください
刺客ともども燃やし尽くします」
そうかそうか燃やし尽くされるのか
いやだよ!
「いや!いやいや!刺客は倒したじゃん!
殴ったのは悪かったけど!
燃やし尽くす程!?そんな事ないよね!?
団長!助けてください!このままじゃ燃え尽きます!」
「エリオ君、ルチオ怒らせるのはまずいよ、、、
昔居たんだよルチオを怒らせた奴、、、
そいつはこの世界から完全に”消失”したんだよ?
おー怖、エリオ君とも短い付き合いだったな」
「団長!今!団長は!俺の隣にいるんですよ!
あれが飛んできたら団長も巻き込まれますから!」
「ああなるほど、、、
えぇやべーじゃねーかよ!離れろエリオ!俺に近づくな!」
俺と団長は猫がじゃれあうようにぎゃーぎゃーと騒ぎ立てた
王女達はあきれ返ってこちらを見ている
はぁとため息をついて王女は俺に提案した
「わかった、そこまで言うならあなたが
刺客の一員じゃないって証拠を見せなさい
簡単よ、そこに倒れている刺客と、こいつ
殺しなさい」
俺は王女の提案に内心踊り出しそうだった
チャンス到来だ!
王女を狙っていた刺客を殺せば
この場を切り抜けられる!
やったぜラッキー!
王女は彼女の足元に倒れていた皮膚の剥がれた老婦人風の
刺客をこちらに投げてよこした
更に彼女は俺が落した剣を投げて寄越した
オッケー、これでこいつらの首を切り落とす!
ほら刺客は殺しましたよ!これで俺の身は潔白ですね!
それで万事解決みんなでBBQだ!
俺はすぐさま剣を握り
まずは俺が踵落しで気絶させた刺客の首元に剣を突きつける
剣先の位置を調整し、俺は大きく剣を振りかぶった
さあやるぞと思ったその時気絶していた刺客が意識を取り戻してうぅんと嗚咽をもらした
そして刺客と目があった
その時俺はすでに剣を振り下ろしていたのだが
急に
急に
本当におかしな話だが急に怖くなった
異世界に来て
傭兵団に入って
1か月も経って
今更だとは思ったが
全身から汗が出て、胸に苦い何かがこみ上げてきた
フロメル傭兵団は戦っている振りをする傭兵団だ
たまに酒の飲みすぎで死ぬ輩はいても
チャンバラで死ぬ奴はまずいない
少なくとも俺がこの傭兵団に入ってから死んだ奴は酒の飲みすぎか脱水症状だけだ
それは俺にとって他人事にすぎなくて
今まさに俺の手によって命が消えようとしているこの瞬間は
まるで別物だった
まるで機械で制御されたように刺客の首筋数ミリ手前で俺は
剣を振り下ろすのを止めた
そしてこの期に及んで王女の方へ目をやった
「どうしたの突撃隊長?まさかできないのかしら?
私の命を狙った連中よ?今あなたが手を下さなくても
命はないわ、間違いなく
さあ、あなたの潔白を証明してみせて」
王女の言うとおりだ
俺が殺さなくてもこいつらの命は残りわずかだろう
「あの、尋問とかしなくていいんですかね?
ほら、黒幕の正体とか
掴まないといけないんじゃあないですか?」
「ふむ、一理あるわね、一人だけでいいわよ
その二人の刺客のどちらかを殺しなさい
それで信じてあげる」
俺は王女の言葉を聞き今一度
剣先を向けている刺客へ目をやった
刺客は半目を開きこちらを見据えている
俺が金縛りにあったように動けずにいると
団長が助け舟を出してくれた
「もういいよ!とりあえずさ!こいつら捕縛しよ!
可哀相だけどエリオ君も!
それで陣営地に連れて行こう!
それで尋問でもなんでもしてさ!
それでいいじゃん!
ともかく早く陣営地に戻ってBBQをしようよ!!」
結局BBQかよ!けどいいや人殺しはしなくて済む
俺がほっとしていると刺客がなにやらごそごそと動いている
何をしているんだろうと思って刺客の羽織っている黒衣の上着を捲ると、そこには導火線に火が付いた爆薬っぽいもの
恐らく爆薬なんだろう、それが無数にあった
全身の毛が逆立つ感覚
俺は全力の速度でテキパキと爆発物っぽいものを刺客の体から外していきぽいぽいと宙に向かって投擲した
「ルチオさん!それ!上に!」
俺はできる限りの大声でルチオさんに叫んだ
焦って声を出したせいで
ルチオさんに意図が伝わるか不安だったが
彼女はこちらを一瞥すると俺が投げた爆発物っぽい物に向かって
火球を飛ばした
火球は爆発物っぽいものに触れて、俺たちの頭上のはるか上で
花火のように破裂した
強い光が辺りを昼間のように照らし、遅れて爆音と強烈な風が体を通り抜けていった
俺の足元でちっと舌打ちする刺客に右フックを鋭く放つ
刺客は今一度動かなくなり
俺はめでたしめでたしと思った
だけどそう思っているのは俺だけだったみたいだ
気が付くと王女殿下がすぐ近くにいた
俺は気の利いた言葉を発しようと努力したが
その前に王女は功夫のような構えを取って
俺の体の数か所を鋭く突いた
俺は体の自由が利かなくなっていく感覚を覚えながら
意識が朦朧としてきた
だが俺は不思議と安堵していた
とりあえず誰も死なずに済んだし
しばらくはあれこれ考えなくて済む
そうして俺は気を失った
汚ぇ花火だ




