魔術師は凶悪なものを作るそうです〜後編〜
僕は今、部屋に帰って魔術陣の改正案を書き出している。約5時間前から進展もなく只々時間を潰しているようだが、少しはマシになってきたというべきだろう。
「ああ〜、分かんない〜、引っかかるのになぁ〜」
最早書いていた紙は床を埋め尽くす程であり、それを含めて魔力を持っていた。
なぜなら紙に書き込んでいたのは古代文字。古代文字は一つの単語だけでも魔力を持ち、それが合わさり魔術が発現する。しかし、意味が重なり無駄が多いため魔術は発現しない。それを今直そうとしているのだが…
「ここの意味は〜、『円』これが『繋ぐ』これが〜…」
というのを延々と行っている。飽きないのか?
だが、考えてくれ。元は高校生。科学や国語などが得意な人がだ。分子配列、古典などの勉強をしていたのは当たり前。じゃあ、こっちの世界にも同じようなものがある。燃えるじゃないか。
「あ、嵌った。これで後1ピース〜♪」
後数十分もしないうちに魔術陣は造られるだろう。魔術陣は1から構成するのは難しいが、一つはまると案外簡単にできてしまう。恐ロシア。
「後は、どこだ…?」
彼の目はギラギラと輝き、陣を完成させるためのピースを探す。昔からやっていたため約1日でできたのは嬉しい誤算だろう。
「ミーツケタ…アハハハっ!これだぁっ!」
「ねえ、何をしているのか気になるのだけれど」
「ふふふふふふ、後少し、後少し……ん?だれ」
「忘れたとは言わせない」
「まあいいや」
そのまま作業に戻る。かりかり、かりかりと書く音が木霊する。
「何を」
「ちょっと黙ってて」
その言葉に刺々しい殺気を感じた彼女はそれで黙る。
そして___。
「よっしゃあああああ!終わったぞお〜!で、なんだっけ」
「聞いてないのね…」
「あー、2日前ぐらいに会った翼人さん」
「ジルよ、それでちょっと忠告しに来たの」
「忠告?」
彼女は言いづらそうな雰囲気だが、アルヴはあっけらかんとした感じだった。
「あの、私の種族が激怒してくるんだけど、なんとかして?」
「ふむ、試すのにはいいですね」
「試す?」
「ああ、いやなんでもないです」
アルヴは内心黒い笑みを漏らしていた。
「(あははははははははは!魔術試すの躊躇ってたけど的が来てくれるのは有難い!)」
「あの、殺さないで欲しいんですけど…」
「あ、そこは大丈夫です。半死半生ぐらいで勘弁してあげましょう」
「それなら大丈夫です」
いいのか、と思うが聞く限りだと死ななければいい。落ちても風の加護がついた衣服があるので死ぬ事はないのだとか。
「ま、原因は僕なんですが、問題はありません。では、明日に備えましょう」
ジルは仲間に凄い同情していた。
例えると強者に見つかり、弄ばれる、そんな事を想像してしまったからだ。
魔力量を見る限りだと翼人の平均を軽く超えている。魔王レベルなどでは収まりきらない。
ならばその魔力を保有している彼は一体なんなのか。古い文献にも載っていない規格外の存在。
しかし、余計な事を詮索したら敵に回すかもしれないと思い、そこで思考を途切らせる。
「ふふっ、明日が楽しみです」
「(絶対に敵に回したくないタイプね…)」
ジルはそんな事を考えていた。
「じゃあ私は上で寝泊まりする事にするわ」
「そうですか、では」
アルヴがそう言うと部屋の電気が消え、闇に包まれる。ジルは窓から出て行き、薔薇の城に向かった。
その頃アルヴは楽しみで仕方なく眠れなかったのは言うまでもない。




