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【二章完結】「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」  作者: みよし たもつ
追憶編

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case.57「怪異会敵ダブルアタック」


 北海道での経験を経て、僕の装備は武器だけでなく持ち物、そして衣装さえアップグレードされた。いや、僕だけじゃなく事務所メンバーほぼ全員が、というべきか。

 軍服、とまで言わないけれどかっちりとした耐衝撃スーツ。これはジャージ愛好家のミチカケ先輩も納得の伸縮性と速乾性、加えて皺や汚れが付きにくい謎の高性能ハイスペック素材。色はキサちゃんも含めた今いるメンバー5人全員で被らないように、ってこれ戦隊ものっぽくない?

 一番汚れるという圧倒的事実による全身黒づくめの僕、そこに差し色を入れるがごとく蛍光グリーンのボトルをまるで弾倉を身にまとうように胴から腿までぐるりと装着。ちなみに中身はざっと4種類。対怪異水、その粉末、クレイジーソープの濃縮原液、水。

 あと武骨な認識阻害ピアス。

 最後。これが一番重要。

「っふ、せいっ!」

「うんうん、いいよー」

 多段式伸縮棒から、薙刀の如き佇まいに。

 多節根をベースに設計したという、超合金の鎖を軸に円柱のバーツをしっかり回して固定すれば柄だけで全長180センチメートル。それだけでもう僕の身長よりも少し長く、そこへさらに50センチほどのブレードを付けて完成。

 一応ブレードの刃は2重構造になっていて通常時はカバーとなる殺傷力のないものになっている。もちろん中にはごりごりに銃刀法違反の刃渡りが隠れている。のであんまり表立って持ち運べないのだけれど…。まあ、バレたらバレたでアルキメデス社の人が何とかしてくれるらしい。小心者の僕としてはそれでも多少忌避感はあるけれど。

「じゃ、次は切れる方でやろっか。カバー外していいよー」

「えっ」

「大丈夫だってー。うーん。何回やっても慣れないねー、のどかちゃん」

「…いえ、僕の腕じゃミチカケ先輩にはかすり傷も与えられないのは承知の上なんですけれど、それでもなんていうか、こう…」

「刃物を人に向けて振り回すのは?」

「はい…」

「まー、そういう慎重なとこ、イイと思うけどねー」

「ミチカケ先輩…」

「でも練習でも使わない武器が本番で役に立つことないよ」

「…はい」

 ぴしゃりとクール。まったくその通りだった。

 ミチカケ先輩は鮮やかなカナリーイエローのバトルスーツ、ひいてはその上に着こんだ真っ白なエプロンを揺らして言った。

「さー、こーい」

「…ふう。行きます!」


「いてて…」

 当然のごとくボロボロに打ちのめされた僕。

 痛む体に鞭打って、なによりもまず最初に刃にカバーを付け棒を解体してケースに。しまったら、そこからやっと治療。

 ほとんどが打撲痕なので軟膏を塗って、うかつにも出来た切り傷は消毒してスプレー。

「蹴りで肌が切れるって、ファンタジーじゃないんですかあ…」

「泣き言。すーっごく鍛えれば出来るってー。っていうかそれよりー」

「はい?」

「結構出来るようになってきてるねー。じゃあそろそろ実践、行く?」

「それって、」

「じゃーん。しゃちょーから依頼書もらってきた。とある駅で行方不明者や謎の負傷があるみたいだよー」

「駅…」

 久々の、突発的な電話案件じゃない怪異討伐依頼。

 場所は…。

「え、ここ知ってます」

「そーなの?」

「開かずの踏切があって、めっちゃ混むんですよ」

「あ、そーいうやつか」

「すぐ出ますよね。準備してきます!」


 というわけでウラ道を使ってやってきた。某県某駅、開かずの踏切と呼ばれるほど遮断時間の長い踏切を擁する場所。

 人払いのされたわけでもないのに驚くほど人がいない、伽藍洞のホーム。

「いくら平日の日中、微妙な時間と言っても…」

「ガラガラだねー」

「ですね。見るのはホームでいいんですか?」

「電車は通るだけだしねー。とりあえずあの辺から…」

「!」

 一瞬だった。

 とっさに振り払うように凪いだブレードロッドが確かな手ごたえを伝えてくる。


 べしゃり、どちゃり。

 鈍く水分を含んだ重いものが落ちる音。

 早送りのように視界の端から世界が上書きされて、怪異がその姿をさらけ出す。

「し、死体…?!」

「違う。これは、」

 地面にへばり付くようにその身を沈めていた塊。ゆっくりと潰れた右手が持ち上がり、次いで左手。頭ごと胸を持ち上げるように腕力で起き上がったソレ。

「てけてけ…!」

 下半身のない、上半身だけの血みどろの人型。

 無残に引きちぎれ、血で汚れ固まった黒髪を乱して大きな口が吊り上がる。

「!」

 手だけの推進力とは到底思えない爆発的なスピード。こぼれ、揺れる内臓や跡をつける血などお構いなしに飛びかかってくる。

「のどかちゃん」

「はいっ!」

 あらかじめ組み立て、カバーを外しておいたブレードロッドが薄明りに赤く光る。

 お腹に力を入れて容赦なく振るう。血が飛び、肉が抉れる。

「はあッ!」

 その身が削られることもお構いなしに突っ込んでくるてけてけをリーチの差で遠ざけ、片手で身に着けていたボトルをひとつ取って空に放り投げる。


 チカチカ瞬く不気味な赤い蛍光灯。

 重力で落ちてくる蛍光グリーンのボトル。

 壁を指の力だけで這い上がり、飛びかかってくるてけてけ。


「ッらァ!」

 両腕で渾身の振り下ろし。

 まずボトルが割れ、ガラスの破片と中の液体がてけてけにかかる。てけてけが一瞬怯んだように空中で動きを止め。

 多段式に仕込まれていた小さなアンプルが禍々しく吊り上がった口に入る。

 ジュウだかギャアだか苦しむ音。それを断末魔に、てけてけはその身を霧散させていった。



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