case.055「完結トゥビィコンティニュー?」
帰宅して翌日は心身の休養のために休みを言い渡された。
ありがたく頂戴し泥のように眠った後。
「おはようございます!」
「おう。おはよう」
「おはよー」
「…」
いつもの事務所。いつものメンバー。…キサちゃんは休んでいた本業があるので。
「はい。いつものミチカケちゃんスペシャル~」
「…」
「と、ドールちゃん先輩特性マドレーヌ」
「ありがとうございます」
おいしいお茶とお菓子。
朝のティータイム。
「で」
「はい?」
「犯人くん。星使あきら、だっけか。あの子は青き血が受け持つことになったよ」
なんでもない雑談みたいにサカヅキさんは言った。
「アルキメデスの方で相当こってり絞られたみたいでね、憔悴してた」
「そう、なんですね」
「でもま、まだ子どもだし。正直被害者遺族からしたらとんでもないことかもしれないけど、馬鹿正直に教えられないしね。青き血で監視されつつ社会奉仕でタダ働きって感じかな」
それはもしかしたら相当に寛大な処置なのかもしれない。
あの時。民家で見つけた時の白百合さんの対応を思い出す。迷うことなくその命を狙う一撃。あれも白百合さんなりの慈悲だったのかもしれない。…被害者を、死者を出してしまった犯人が苦しむことなく終われるように。
「大丈夫。聞いた感じ更生の余地はあるし、アイツらはそういうの上手いから」
「…はい!」
ごく短い付き合いではあるけれど、いい人たちなのは間違いない。
それに。
「そういえば、青き血の人たちってサカヅキさんの教え子なんですか?先生って呼ばれてましたよね」
「あー。まあ、そうだな」
サカヅキさんは困ったように眉を歪めて、ため息とともに言った。
「アイツらがまだずっと小さい頃。怪異に襲われてるところにカチ会ったんだよ。で、対怪異の心得と怪異討伐者になる為の指導をな」
「へえ」
「ミチカケちゃんもちょっとだけ見てたよー。もちろん、ドールちゃん先輩もねー」
「…」
「そうなんですね。それであんなに立派になっているんですから、自慢の教え子ですね」
僕がそう言って笑うと、サカヅキさんはなんだか苦いものを口にしたみたいな、何とも言えない渋い顔をした。
うーん、照れている?にしては少し違うような…。
「まあ、そうだな」
それ以上は踏み込まないようにして、ついでに気になる点を聞いてみた。
あの事件の黒幕。本当に少年、星使あきら君だけが考え実行したものかどうか。
「…ヒナタくん。どこまで想像してる?」
「ええと」
ネットに傾倒した。居場所を求めた。みんなに求められたかった。
それ自体はきっとあきら君の本心で、自然と生まれたものだったと思う。
でも、怪異の実在を知ったのは怪しい。
ホラー話オカルト話を疑わずに信じた、にしては出来すぎている。
自分で認知を集めて怪異を生み出そうというのも。
「それに、名前で縛るとか意図を重ねるとか、さすがに思いつかないでしょう」
だれか、悪意ある第三者が教えなければたどり着けないはずだ。いくら頭がよくったって相手は不登校の小学生。
使い捨て携帯や掲示板、誘導だか暗示だかの手法もそうだ。
ここまで徹底した足のつかない方法は社会経験のない子どもには想像もできない。
「ちがいますか?」
「…ふうー」
長い沈黙と重いため息。
いやッそ―な顔を隠しもせずに、サカヅキさんが言う。
「そういう頭の回るとこだよなーっ」
「え、なんですか」
「褒めてんだよ。いや、貶してるかも」
「どっちですか…」
つられて顔を顰める僕をミチカケ先輩が笑い飛ばす。
「あはは!さすがのどかちゃん、かしこーい」
「…ありがとうございます?」
「はあ。…まあ、おおむねその通り」
それから話してくれた内容は、なんというか現実味がないというかフィクションにありがちというか。
「悪意をまき散らす、おそらく男。ソウワーズ。怪異の種をまく者…」
それって。
「すっごい厨二野郎ですね?!」
「はっはは!たしかに!」
「ぷぷー!そう言われるともう、そうとしか思えないよー!」
「…」
あ、ドールちゃん先輩もウケてる。
「はは。そう、その厨二野郎の存在がここ最近は透けてるんだよな。大抵はあそこまで上手くいってないんだけど…」
「今後、あのレベルの案件が起きたら。ってことですね」
「そうだ。俺とドールちゃんはこれからそれを調べるのに忙しくなるから、ヒナタくん」
「はい」
「現場の対応はミチカケちゃんとヒナタくんに頼ることになる。よろしくな」
「はい!」
よーし。僕ももっと頑張ろう!
具体的には、多少なりとも武力も付けたい。手っ取り早いのは武器を新しくすることだけど…。
ちらり。サカヅキさんを見る。
「はいはい。分かってるって。ヒナタくんの新しい武器は手配中。数日もしたら用意できるってさ」
「やった!」
そうして喜びもつかの間。
けたたましく鳴り響く電話の音。
「のどかちゃん」
受話器を取る。
息を吸って、聞き取りやすく安心させる声色で。
「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」




