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「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」  作者: みよし たもつ
合同編

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case.053「誘爆クラウンクラウン」


 鬼。

 それは古来より、恐ろしいものの象徴として描かれてきた。

 頭に角を持ち、いたずらに人を虐げ、病をもたらし、死を招く。

 強大で理不尽な力の代名詞として、そして何より悪しきものとして。

 けれど。

 悪とは討たれるもの。

 理不尽に抗い、悪しきに屈さぬ英雄が。人間が。

 立ち上がり、何度倒れようと最後は必ず勝利する。


 鬼とは人間によって退治されるものなのだ。



 プライドさんの戦う力は、認知・情報戦らしい。

 ネット社会の利点である、より多くの人と情報を共有・拡散できるという強みを生かして「鬼」の認識を「人間に倒されるべき敵」とする。

 つまり、ここに居る怪異戦のプロフェッショナルが怪異に優位に立つ状況を作り上げたのだ。

 その結果、どうなるのかというと。

「!鬼が、みるみる小さくなっていく…」

 認知戦に置いては人間側の勝利、と言っていいだろう。そのおかげか、どんどん目減りしていく鬼。

 これなら!

「まあここまで早く上手くいったのは、さすがアルキメデスの情報統制力と言わざるを得ませんけれど」

 ドールちゃん先輩が、ミチカケ先輩が、サカヅキさんが。武器を手に鬼に立ち向かう。

 クーデターさんは武器を失ったスレイヤーさんと丸腰のプライドさんを守るように盾を構える。あ、プライドさんが短刀渡した。壊す前提っていうのは周知のやつなんだなあ。

「あっ」

 そうだ!白百合さんは…。

 プライドさんのおかげで周囲を見る余裕が生まれた。きょろきょろと見回して分かたれたもう半分の鬼を探す。

「…いた!って、え!?」

 まるで同じ映像をループで流しているかのよう。

 片方の斧がブーメランのように角に巻き付き、その柄についた鎖を軸に駆ける白百合さんがもう片手に持つ斧を振るってはその巨体を、角を確実に削っていく。昇りきったら斧を回収。二筋の傷を付けながら鬼の体を滑り降りる。

 また斧を投げる。

「すっご…」

 見ている間にも2巡、3巡と繰り返し、最後には両手に持った斧でカチ割るように振り下ろした。

 バキンと音が鳴る。細かい傷のついた角はとうとう与えられた致命的な一閃に耐え切れずに自壊。その身を霞のごとく散らしていく。

「か、勝った…?」

 白百合さん半端ないって~!そんなんできひんやん普通…。


「無事か?」

「っはい!すみません!」

 ばちゃばちゃ音を立ててかき分けながらこちらに来る白百合さん。

 余裕そうに見えたけれど、着けたガスマスクには少なくない傷がついていて激闘を物語っている。

「こちらは片が付いたがあちらは…」

 ふと見上げる。遠くを見つめるその顔はマスクに覆われて見えない。

「なんだ?」

「い、いえ!」

「…あちらの鬼もそろそろ、いや、待て。おかしい」

「えっ」

「すまないが、行く」

「わ、まっ!」

 バッシャーン!と最初よりもずっと大きな水柱。巻きあがった水が落下して頭からずぶ濡れになる。

 な、なんだ!?

「は、」

 バン!と激しい破裂音。ちょうど飛びかかった態勢のミチカケ先輩がサカヅキさんを巻き込んで吹っ飛ぶ。

 鬼の右手部分が不自然に膨らんで破裂した。という事実を咀嚼している間にも左手が膨らんで。

「悪く思うな」

「!」

 飛び込んだ勢いのままに白百合さんがドールちゃん先輩を蹴って鬼から引き離し、瞬間、爆発。

「白百合さん!」

 水面に叩きつけられた白百合さんに駆け寄ろうとした時、ふいに視界が明るくなる。

「え、夜が明けた…?」

 違う。これは、怪異の上書きがなくなったんだ。

 でもそれじゃ、怪異は、あの鬼は倒れてないとおかしいはず…。

「ダーリン!これは自爆の予兆ですわ!」

「プライドさん!」

「強大な怪異の一部は倒される前、全てのリソースを自身に収束し自爆モードに入ることがありますわ!自らの存在を現実の地に浸み込ませる、現実を犯す猛毒となって…!」

 そんな。

 どうしたら。

「自爆前に討つ!それしか!」


 探す。

 クーデターさんは満身創痍だし防御型。スレイヤーさんは短刀を持っているけれど、体力的に限界。

 探す。

 サカヅキさんとミチカケ先輩は爆発と衝突のダメージによって動けない。ドールちゃん先輩は…、だめだ。武器が遠くに飛ばされているし、やっぱりボロボロ。

 探す。

 白百合さんは。


「やるしか、ないんだ…」

 抱え込んだコレを使えば、一瞬くらいなら動きを止められるかもしれない。

 ベストはスレイヤーさんの刀みたいにあの鬼の中に入れることだけど、見た感じ口とかもないからぶつけることしかできない。というか、たぶんメインは角だろうし。

「…!」

 体が震える。

 濡れた体が空気に触れて冷える。寒い。怖い。…寒い?

「水が…」

 血の池が引いている。

 本当にすべてのリソースを収束しているんだ。

 バッと鬼の方を向けば、角が赤く染まっている。おぞましい悪意が赤い角にぎゅうぎゅうに詰まっているのが分かった。

「ぐ、」

 怖い、怖い、怖い!

 先輩たちが、プロが勝てない相手に僕なんか。


「一瞬でいい」

「!」

「アレを止められるか」

「し、」

 白百合さん…!

 ボロボロになって、深縹こきはなだの軍服は血で黒く染まっている。ガスマスクもとうとう端が破損して、その下に白い肌が見える。

「返事」

「っはい!」

「…全力で行くが、おそらく時間がない。一撃で決められなければ終わりだ」

「はい」

「行けるか」

「任せてくださいっ!」

「そうか…」

 白百合さんが溜めに入る。

 赤角が脈打つように点滅する。

「っあああああああ!!!」

 駆ける。

 耳が裂けるのもお構いなしに、ピアスをもぎ取って捨てる。

「こっちを、見ろおぉおおぉおおお!!!」

 声を張り上げる。

 赤角がこちらに吸い寄せられるように向かってきて。

「っらあああああ!!!」

 全力の投擲。

 丸く膨らんだ風船が角に当たる。弾ける。中に入れられていた高濃度の耐怪異水、クレイジーソープ全部入れバージョンが角にべったりと付いて。

 鬼が止まる。角の脈動も。そうして。


 ドオン!!


 流星が落ちた。



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