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「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」  作者: みよし たもつ
合同編

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case.046「条件判明ソックパペット」


「つまり、例の掲示板にアクセスできるのは現状に強い不満や怒り、あるいは絶望などの暗い感情を抱いている人物ってことだな」

 浅木さんをホテル前まで送り、帰りをアルキメデス社の人員に任せて帰ってきたミチカケ先輩。僕、サカヅキさん。ホテル待機組のキサちゃんと護衛のドールちゃん先輩。そして青き血の3人。呼び戻した白百合さん。

 もちろん青き血の黒子のみなさんやアルキメデス社の他の人たちも交えて、何度目かの全体会議。

「…そして、その掲示板にアクセスした被害者はまるで人が変わったように攻撃的になった」

「何かの術式ですかねー?」

「誘導か暗示か、あるいは両方か。…フッ。なんにせよ確実に、そして意図的にそういった闇を抱えた人物を集めて事を起こさせているな」

「うさうさはハッピーっ!」

「ですね。…では、こちらも該当の掲示板を探すにはそんな人物を用意するべきでしょうか」

「え、います?そんな人」

 ピンポイントすぎるし、内面の闇なんてどう見分ければいいんだろう。

「うーん」

「むむむ…」

 途中脱線しつつも、目下、この事件の根幹となる情報源にアクセスする条件を満たすにはどうすべきかと一同頭を悩ませる。あ、スレイヤーさんがすかさずうさちゃん先輩にアイパッドを渡した。…まるで退屈した子どもへの対応だ。手慣れている。

 正直、このメンツはみんなそういう心の闇には縁遠そうに思えるけれど。

「あーっ!みてみてーっ、うさうさ天才かもーっ!」

 そんな硬直した現場をバッサリと切って捨てるように、うさちゃん先輩がハイテンションにアイパッドを掲げる。

「うさぎさん、今はそれどころでは…。えっ?」

 やんわりと注意したスレイヤーさんが息をのむ。

 なんだなんだと全員の視線がアイパッドに注がれる。

「これでしょーっ?」

 白い背景に黒い文字列。ごく一般的な掲示板様式に見えるそれは、しかし滲む悪意を隠しきれていない。

 間違いない。問題の掲示板だった。


「っど、どうし、いや、なん、なんで?!」

「それは…」

「いい。それよりも中身だ。…オイ!」

「はいっ」

 動揺する僕たちには目もくれず、アイパッドを取り上げた白百合さんが声をかければ機械に強いと思われる人たちがそれを受け取り何やらガチャガチャと繋いでいく。

 さほど間を開けずにスクリーンに映し出されたそれは、想像以上に闇の深そうな内容だった。

「うわー…」

「あ、これは前回見たやつですね。怪異に遭遇する方法、なるほどこうして書けば意識の誘導もあって自ら行動を起こすというわけですね」

「これ、複数の人間が書いてるように見せてるけど、たぶん使い捨て携帯の用意は犯人だよねー?」

「たぶん…?面白がってのっかっている風にしていますけど」

 そんなことをしなくても、最初から全部提供してしまえばいいのにと思うのは間違っているのだろうか。

 そんな僕に当然ながら補足が入る。

「そうしたら主催者である犯人に、お前がやれよと集中するだろうな。あくまで、複数の人間の思い付き。いろんな意見を総合して体で自主的にやらせたいんだ」

「!なるほど」

 難しい話だ。けれど、あくまで自主的にそうしようと思わせる必要があるっていうのはわかる。人間は強制されると反発する生き物だから。

 反対に、自分で思いついて行動するのは正しいと思いがちだ。そして、止められるとより強く反発する。

「効率的だな。…しかし、これで犯人像は絞れたな」

「え?」

「他者を操る術に長けた老獪な個人。使い捨て携帯の用意など資金にも余裕があり、なによりここまでの悪意。十中八九、年かさの男だ」

 たしかに、そうやって事実を並べ立てれば犯人が大人であることは間違いないように思える。

 でも、なぜだろう。僕の直感がそうじゃないと警鐘を鳴らしている。

「いえ、それは…」

 違うとそう言いかけた時、白百合さんに強く異を告げる人物が1人。

「うちは違うと思うな」

「なに?」

 サカヅキさんはいつものさわやかな笑顔を浮かべている。けれどその目は強い光を湛えていた。

 鋭い目が白百合さんを貫く。ガスマスク越しにも2人がにらみ合うのが分かった。


「うちの結論は子ども、少なくとも成人未満」

「ありえない。どうしてそうなる?事実を受け止め、理論的に考えるべきだ」

 そうだ。これは僕の感としか言えない不確かなもので、そこに確かな事実なんて一片もない。

「むしろこっちが言いたいね。どうしてそうも頑ななんだ?」

「…根拠のない、感などと言う不確実なものを当方は信じない」

「当方は、ね。じゃあアルキメデス社の意見ではなく、白百合、君の意見はどうなんだ」

「…」

「沈黙は肯定ととるぜ」

 バチバチのやり取りを経て、どうやら今回の軍配はサカヅキさんに上がったようだった。

 追い打ちをかけるように、恐る恐るといった様子で黒子の1人が声をかけてくる。

「あ、あの…」

 気まずそうな表情。手には何やら、マーカーの引かれた紙束。

「主犯と思わしき書き込みをプリントアウトしたものです。これを見てもらえると…」

「ああ」

「見せてー」

「なになに…」

 紙に書かれた文字。そこに引かれた目立つ蛍光色のマーカー。

「ざっと見ただけなので詳しくはこれからなのですが…」

「ああ…。なるほど、たしかに…」

「へえ。おもしろー」

 マーカーの色は2種。硬くかしこまった文章や難し言い回しに青。反対に砕けた言葉遣いや煽るような言葉、形容詞を多用する箇所には黄。

 そうして抜き出されてみればはっきりとわかった。

「子どもだ…」

 硬い文章には、前後にまるで無理矢理つなげたような違和感があり文章としては不格好。どこかから引用した文言をぶち込んだ、という印象。

「ここ、おかしいね。ほら、「成功は確立された状況でのみ起こせるものだとされていると言う」…賢く書こうとしてまとまってない」

「当日だが持ち物はそう多くなくともいいか。ここも普通なら、当日の持ち物は少なくていい、とかそういう文にするでしょうね」

「血のように赤い深紅。フッ、俺様ならもっと美しく書くが」

 ほかにも異常に長い句点だらけの文。

 あるいは必要な主語の抜けた短文。

「こっちの煽るような文句は自然。慣れた言い回しなんだろーね」

 つまり、


「…人間は自分を馬鹿に見せることは出来ても、」

「自分をより賢いものに見せかけるなんて出来ない。そういうこと?」



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