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「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」  作者: みよし たもつ
合同編

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case.040「方針決定ミーティング」


 ピピピと軽い電子音がしてふっと意識が覚醒した。

「…あ、ここホテルか」

 一瞬、見覚えのない豪華な室内に混乱して、すぐに思い至る。そうだ、今は怪異事件を追って北海道にいるんだった。…なんだかまだ慣れないな。

 ゆっくりと身を起こす。

「おはよう」

「おはようございます、サカヅキさん」

 北海道に来て3日。事態悪化の一報から数時間。

 ショックと疲れの取れない体をぐっと伸ばして深呼吸。

 うん。仮眠前よりは少し良くなった感じだ。

「とりあえず改めての顔合わせと情報共有だ。キサちゃんはまだ寝込んでいるらしいけど、とりあえずは落ち着いているみたいだから俺たちだけで行こう」

「はい」


「ではこれより当方の持つ情報を開示する」

 そんな言葉で始まった会議は、当然ながら濃い内容だった。

 あらためて見てもインパクトの強いビジュアル。ガスマスクに軍服なんて、アニメのキャラクターでもなかなか見ない気がする。

「…という状態だ」

「フッ、なるほどな…」

「事件の発端であり第一の被害者は昏睡状態だったと聞いていましたが…。やはり亡くなったのですね」

「ああ。血液はともかく骨の消失が致命的だった。とはいえ、やはり第一の被害者ということもあり怪異の存在確立が不確かだったせいか、丸ごとすべて失うというわけではなかったようだが」

 第一の被害者は、自宅裏。所有している小屋の中で発見された。

 概ね状況は同じ。けれど、彼はその手に何か硬いものを握っていたような痕跡があったという。そしてその小屋の片隅で見つかった片方だけのワイヤレスイヤホン。おそらく怪異遭遇時に何らかの衝撃で落ちたのだろうとのこと。

「電話をかけていた、というのが状況証拠からの推測だ」

「電話、ですか」

「電話回線を利用するタイプの怪異はここ最近では減少しつつある。特に新しい怪異は。…現代の怪異の広まり方のメインでもあるSNS利用者は対人電話を忌避する傾向があるからな」

 古くからあり名のついたメジャーな怪異で言うならメリーさんだろうか。あるいはサトルくんだとか、死者からの着信だとか。

 ただ、たしかにネットの普及した現代ではメッセージが主流で電話応対はかけるのも出るのも嫌だと聞くからそんなものなのかもしれない。

「人為的怪異創造案件、と確定付けられたのはやはり?」

「ああ。7件目と8件目の被害者、インターネットで知り合い友人関係にあったという2人が運営していたブログに未公開の記事として残されていた」

 ホラー好きな2人が運営していたというブログの記事が印刷された紙を見る。

 日記のように2人交互に投稿していたらしく、未公開の記事は片方の視点から書かれていた。そして最後の一文。

「地獄みたいなこの世界が本当の地獄とどう違うのかこの目で確かめてやる、か」

「浅はかだな」

「まったくですね」

 今回の怪異。仮称「地獄をみせるもの」。

 それは被害者たちの恐ろしいものを見たという表情からだけじゃなく、この一文からも取っているんだろうか。

 なんて、逃避のように考えた。


「被害は北海道全域。広いとはいえ特定の地域に被害者が集中しているのは偶然とは言えないでしょうね」

「フッ。犯人が北海道にいてこれがテスト、今後日本全域に広がるという可能性はおおいにあるだろうな」

「うーん。北海道だけで完結するかもだよーっ?北海道という場所に何らかのこだわりがあるとかねーっ」

 そうか。たしかにそうかもしれない。

 皮肉にも被害者が増えるごとに情報が増えるという状況ではあるけれど、まだまだ謎は多いんだな。ぐっと握る拳に力が入る。

「とはいえ。現状、被害が北海道全域にとどまっていることに意味があるのは確かだろう。とりあえず俺たちはここ北海道で被害を食い止めつつ怪異を討伐。そして元凶を確保する必要がある」

「はい!」

 深く頷く。

 僕に、僕たちにできることは変わらない。全力を尽くすだけだ。

「…」

「どうかしましたか?白百合さん」

「いや。…そうだな。はじめに言っておくべきか」

 それまで滔々と話していた白百合さんが一転して口をつぐんでいることに疑問が浮かび問いかければ、少しの間ののちに硬い声で紡がれる。

「今回の件。犯人の身柄は生死問わず当方、アルキメデス社がいただく。これは要求ではなく確定事項だ」

 ピリ、とただよう空気に亀裂が走ったような幻視。

 流石は死地を抜けてきたプロの怪異討伐者である青き血の人たちやサカヅキさん、その表情にこそ出さないようにしているもののその視線は厳しさを増して白百合さんを貫いている。

 ただ、当の白百合さんもそんな視線の圧など慣れきっていると言わんばかりに冷静だ。ガスマスクに覆われて見えない表情も、体と同じくブレていないんだろう。

「…」

「…」

「…ま。俺たちには何の権利もねえしな」

「同意ーっ」

「そうですね。私たちは一般企業討伐者ですから」

「フッ」

 そんないかにも意味深で含みのある言葉をもって、会議は終了した。


 部屋に戻って、ドールちゃん先輩とミチカケ先輩にも会議で得た情報を報告。

「なるほどー。うんうん、了解でーす」

「…」

 さすが。先輩たちは理解が早い。

「あの、一つ聞きたかったんですけど…」

「あー、まあ、そうだよな」

 お察しの通り。

「アルキメデス社って一体、何なんですか?」



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