case.037「続々登場ストレンジメイツ」
「…」
「…」
「…フッ」
どう反応したらいいんだろう。めっちゃ見られている。
というかネットで軽く見たような見なかったようなノリというかワードチョイスというか。いや全然詳しくはないので、そもそも僕の思い浮かべているものがあっているのか間違っているのかも定かではない。ないのだけれど。
「えっっっっっとお…」
言葉を選びすぎて言葉が出てこない。
「あー、気にしなくていい。マジで。ヒナタくんにはあの時も言ったと思うけど、こいつら基本自分の世界観に浸ってる系でさ。オリジナルキャラクターなりきり、みたいな?」
「ああ…」
「ちなみにそいつは浅いネット知識でそれっぽいこと言ってるだけの29歳。プライベートじゃ一見本好きのお姉さんっぽいからびっくりする。性別は女で男装趣味。厨二シークレットブーツ底上げ。本名は、」
「っ言うなあ!!」
「おっと」
「っほんとデリカシーない!変わってなさすぎ!最低男!…ごほん。俺様は青き血の特位が一人、二刀使いのスレイヤー様だ。男とか女とかじゃない、俺様はスレイヤーという生物なのだ」
「…はい!」
よろしくお願いしますと挨拶。
サカヅキさん、なんだか青き血の人たちに対してやたらと強気であけすけなのは何かあるんだろうか。べつに深くは聞かないけれど。
「うさうさはねー!見ての通り、うさぎさんだよーっ!」
つぎに話しかけてきたのはちょっと猟奇的というか、目の怖いうさぎの着ぐるみを着た誰か。この人はアダルトさんだな。きっと。
でもアダルトという名前の割に着ぐるみはサイズも小さいし、声も高くて幼い感じがする。子ども?いやでも流石に子どもが怪異討伐なんて危ないこと…するのかな。わからない。
「よろしくお願いします」
分からないし、なんにせよ僕の方が対怪異に関しては新参だ。中の人がどうあれ、丁重に…。
「中の人などいない。いいか?」
「うっす」
声ひっく。
じゃなくて。
心読まれた…。きゅっと冷えた心臓を温めるように手で胸を押さえた僕に、また高い声で元気な自己紹介。逆らってはいけないタイプだと肝に命じておとなしく頭を下げる。
「うさうさも青き血の特位だよーっ!アダルトって呼ばれてるけど、可愛くうさちゃん先輩♡って呼ぶといいよー!」
「はい。うさちゃん先輩」
「うんうん!素直!」
とまあ交流していると珍しく、珍しく?サカヅキさんが茶々を入れてこない。
まあ、着ぐるみにはタブーだよな。うん。
「フッ。そう硬くなるなよ少年。俺様たちは決して同胞を傷つけない…」
「そうだよーっ!うさうさたちは敵じゃないよー」
「あっはい」
本当にサカヅキさんの言う通り、恰好や言動がちょっと個性的なだけでいい人たちなんだなと少し安堵。
そんなこんなで癖の強い、というかキャラの濃い青き血の人たちと話していれば、ふと疑問。
「そういえば、今日は青き血の人たちは他にいないんですか?お2人だけ?」
プライドさんもいないし…。
代わりというか黒スーツこと黒子さんたちは10人ほどいるけれど、彼らは黒子に徹しているのでカウントしない。というか、以前帰り際にお願いされてしまった。
「フッ。…後ろだ」
「え?」
思わず振り向いた僕の目に映ったのは、白銀の不審者だった。
「ちょ、ちょっと!あの!」
「おや?」
キサちゃんの足元に、跪くというレベルでなくべったりと額づくように張り付く不審者。急いでキサちゃんを背後にかばって後退する。
なんでもないように立ち上がった不審者はまるでなにもおかしなことはしていませんよとでもいうように涼しい顔。うわ、立つとデカい…。
「あ、のどか先輩…」
「大丈夫!?」
「は、はい」
この部屋の中にはサカヅキさんもミチカケ先輩もドールちゃん先輩もいるから滅多なことはもちろんない、と思っていたのに。心なしか、キサちゃんの声が震えている気がする。
「…」
ガルガル威嚇する僕に対してにっこりと微笑みながら優雅な仕草で腰を折る不審者。
「これは失礼。私、青き血の特位クーデターの名を戴く者。どうぞ、末永く…」
そういってどこからともなく取り出した青い薔薇を一輪差し出してくる。
手はキサちゃんを庇うように広げたまま、視線で切りつつ断りを入れる。同業他社と言えど同じ目的のために協力する仲間、ではあるけれどそれとこれとは別なので。
「いやです…」
「これは手厳しい」
ハハハ、と軽く笑い飛ばす不審者。もとい、クーデターさん。
身を包む白銀全身鎧はまるでファンタジーの騎士団長。プライドさんの傍にいたらものすごくしっくりくるんだろうな。…貴族と護衛騎士、か。
クーデターさんは僕の態度に気分を害した様子は見せず鷹揚に構えている。
「まあまあ。で、あけ美とみず希はどこ行ったんだ?ゆう気」
「それが…」
ミチカケ先輩とドールちゃん先輩がそっと手を引くのでそれに甘えて少し離れた席へ。代わりにサカヅキさんが残るメンバーの不在を訪ねた時、また扉が開いた。
ここが高級ホテル故の重厚な設備で無ければきっと大きな音が鳴っていただろう、そんな勢いで。
「来い。緊急事態だ」
力強く、拒否も疑問も受け付けない頑なさで彼は言った。




