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【二章完結】「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」  作者: みよし たもつ
出向編

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case.026「加入獲得スポンサード」


「この度は私のあさはかな考えで危険なものに手を出し皆様のお手を煩わせてしまったこと、深くお詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。そして、本当にありがとうございました」

 そう言って木佐木さんは深く深く頭を下げた。


「へえ~、木佐木さんって編集さんなんですか」

「はい。といってもまだまだ駆け出しの新人なんですけど」

「すごーい。いろんな人とかスケジュールを管理して大変だって聞きますしー、やっぱりきっちりされてますねー」

「そ、そんな…!」

 和気あいあいといった雰囲気。

 ミチカケ先輩の美味しい紅茶とドールちゃん先輩のお手製ケーキに舌鼓を打ちながら和やかなお茶会。

「ふふふ。そうなんですかあ?」

「うんうん」

「あは!かっこいいです、そういうの!」

 来訪時には緊張か負い目か。少し暗くかしこまった様子の木佐木さんだったけれど、ソファに座りお茶を飲むころには少し安心したようだった。

 そこへサカヅキさんやミチカケ先輩が率先して話題を振り、場を暖かく盛り上げる。

 そうしてしばらくたったころには、すっかり打ち解けていて。

「本当にありがとうございました」

 彼女のその言葉でようやく、この件についての全てが決着したのだった。


「これ、つまらないものですがよければ貰ってください」

 帰り際、そう言って差し出された封筒。分厚い。

「あの、私、もしかしたらお気づきかもしれないんですが…」

「あ。これ…」

「クイーンホテルの特別招待券、だ」

 封筒に収められていたのは箔押しの上等な紙に流れるような書体で印字された招待券。そして誰かのサイン付き。

「あ、これ、うちの一族みんな自由に発行できるやつで、いわゆる身内用のやつなんですけど」

 えへ、と笑って指差す。これ、私のサインです。なんて。

「保養地に新しくできるホテルの、一般解放前に身内で使っていい期間があるので。よかったら」

 にっこり笑うお嬢様。圧倒される一般人。素直に喜ぶ事務所の先輩たち。

 ついでに連絡先交換しましょう!日程確認したいですし!と押しに押されて、僕まで一緒に連絡先交換をしてしまった。

「さ、さすが…」

「わー、楽しみー!」

「ではありがたく」

「…」

 ドールちゃん先輩も心なしかふわふわしているように見える。

 そんな僕たちの反応に気を良くしたのか、弾けるような笑顔で木佐木さんは言った。


「私、ぜひ皆さんと仲良くしたくて!というか、スポンサーなりたいです!ここの!」


 で。

 改めて設けられた場。

「あ、おはようございまーす!」

「お、おはようございます」

「おはよーございまーす」

「おはよう」

「…!」

 あれから事務所のメンバーで話し合い、木佐木さんの予定もすり合わせて当日。

 一番ノリノリなのは意外にもドールちゃん先輩だった。というか、遊園地以来にしっかり動くところを見たともいう。しかも今日なんていつものモノトーンなドレスと違って、鮮やかな青を身に纏っている。

 先輩、ノリノリじゃん。

「では、こちらへ!」

 先導する木佐木さんについてぞろぞろ歩きながら見回すけれど、どこもキラキラ輝いていてピカピカで、なんだか場違いに感じる。

 一応、スーツとは言わないまでもそれなりにしっかりとした服を買って来てはいるのだけれど。とはいえ普通にマネキン買いだし服のセンスはいいとして、あっているかどうか。

「まずはこちらのラウンジで軽食にしましょう!」

「おお〜」

 透き通ったガラスの向こうから差し込む太陽の光がテーブルに反射して白く筋を描く。

 名前もわからないおしゃれな食事。とろりとこぼれた黄身が絡んで美味しい。紅茶は…美味しいけれどミチカケ先輩のオリジナルブレンドの方が好きかも。添えられた小さなお菓子はサカヅキさんが一番美味しそうに食べていた。


「次は軽くレジャーを!プール、はしんどいと思うので。こちら!」

 眩む水色。揺らめく影。

 併設されたアクアリウムをモチーフにした、光と影の体験型アクティビティ。

「うわっ、あっ、わっ!」

「えー、そこずるいってー!」

「あはは!ヒナタくん、どんくさっ!」

「…!」

「え。ドールちゃん先輩!」

「ふふふ。楽しい〜!」

 光を追ってはこけて、ぶつかりそうになって離れて。

 とんでもなく動ける先輩たちに翻弄されてクタクタになったら、グランピングで締め。


「っうま!」

「最高〜!」

 恵まれた環境と最高の素材。

 心地よい疲労に染み渡るアルコール。そうくれば口が滑らかになるのも必然で。

「いやあ。でも、キサちゃん」

「はい?」

「本当にスポンサー、いいの?」

 切り込んだのは当然といえば当然ながら、サカヅキさんだった。

「うちは最初に伝えた通り、バックには色々ついているし公にはされていないけど、きちんと認可を受けた会社ではある」

「が」

「命の保証があるわけじゃない。そして、助けた相手から必ずしも理解や感謝を得られる訳でもない」

「本当に狭い、裏と表の間の世界で生きている」

 真剣な表情。

「スポンサーどころか、関わるべきじゃなかったと後悔することもあるだろう」

「それでも、」


「それでも!」

 食いかかるような、切っ先の鋭さ。

「私は、知ってしまいました。知らなかったころになんて戻れないし、戻りたくない!私はそんなに運動が得意でもないし傷つくのは怖いし家が家だから怪我も出来ないし皆さんみたいに戦えませんけれど!」

 吠える。

「私の持つものが皆さんを生かすなら!」

 喉を割く。

「私はこれを選びたい!私の意思で!」

 祈りのような、慟哭のような。


「私を皆さんの仲間にしてほしい…!」


 静かな一拍の間を置いて。

 返るのは深い頷きと確かな受容。

「こちらこそ」

「よろしくねー!」


「っはい!」



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