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【二章完結】「お電話ありがとうございます!こちら、怪異討伐・派遣サービスです!」  作者: みよし たもつ
出向編

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case.022「発端パワースポット」


 木佐木真愛きさきまいは最近、なんだか運が悪いなと感じていた。

 上手く言えないし明確に何かあるわけじゃないけれど、地味に不調が続いている感じ。その延長で上手く寝付けなくて睡眠不足だし、そのせいで仕事中もミスすることが増えた。

「悪循環すぎ…」

 はあ。こんな時ぐらい何か気分をパッと明るくさせてくれる出会いがあればいいのに。なんて真愛がため息を吐いた時、ふとカバンが震えたような気がした。

「なんだろ、緊急かな」

 あまりの不調さに見かねた先輩から午後休を申し渡されてしまった帰り。ランチタイムの街中の活気にすら疲れた真愛が重い足を動かしていれば1件の通知。

 仕事の連絡かとふと開いたそれが真愛をさらに苦しめることになるなんて、その時はまったく思ってもいなかった。



「なんだろ、占い?こんなの登録してたっけ…。ま、いいか」

 慣れた手つきで通知を開けば、それは占いサイトからのDMだった。不調続きでいろいろ試した中にあったのかもしれない。

 詳しく見てみれば、当たり障りのないぼかした内容。まあこんなものかと馬鹿らしくなって画面を閉じようとしたとき、ふと最後に書かれていた単語が妙に気になった。

「パワースポット、かあ。たしかこの辺に有名な池があるんだっけ…」

 行ってみようかな。自然に囲まれるのもちょっとした気分転換になるかもしれないし。

 真愛は軽い気持ちでそこへ行くことにして、カバンをしっかりと持ち直した。


 晴れた午後。池は鏡のように空を映して輝いている。

「わあ。はじめてきたけど、結構いいかも」

 お昼時なこともあってか池の周囲には誰もいない。この美しい景色を独り占めしているようで心がすっきりした。

 今日は美味しいもの食べてゆっくりお風呂に入って、それからお気に入りの映画でも見ようかな。もったいなくってなかなか使えないアロマキャンドルをつけてもいいかもしれない。

 すこし上がった気分で大きく息を吸うときれいな空気が胸いっぱいに広がって気持ちがいい。こつんと靴にぶつかった小石がころころ転がっていくのが見えた。


「あ~、癒される~」

 早めの夕食なのか遅めの昼食なのか。どっちでもいいけれどせっかくなので宅配ピザを頼んでひとりピザパーティー。それとコーラにポテト。

 お気に入りの映画を付けたら電気を消して、部屋の灯りはゆらゆら揺れるアロマキャンドルだけ。

「…よかった~!やっぱりこの映画好き~」

 良い匂いに包まれながら心地よい疲労感に包まれる。

「まだ全然早いけど…、寝ちゃおっかな。明日こそ良い日でありますように!」


「最近調子良さそうだね~」

「あ、先輩!えへへ、そうですね!あの日リフレッシュ出来たおかげです!」

「良かった良かった。…あれ、そんなのつけてたっけ?」

「あ、これですか?パワーストーンのブレスレットです!」

「へえ~、かわいいね。パワーストーンのブレスレットって、だいたい数珠っぽくない?だからあんまり興味なかったんだけど、これはいい感じだね~」

「でしょう?」

 次の日から真愛はまるで今までの不調を取り戻すように順調だった。

 ついでにネットで買った可愛いパワーストーンのブレスレットも好評で、とても充実した毎日。

「明日はパワースポット巡りに行くんです!SNSで最近見たところが良さそうな感じで!」

「そうなんだ。近場なの?」

「はい!あの通りの池の裏に小さな像?があるらしいです!」

「ふーん。でもなんか意外かも。木佐木ちゃんってそういうの好きなんだ」

「ん~。元々は気にしたことなかったんですけど、最近は好きです!いろんな場所に行くの、楽しいですし!」

 先輩も一緒にどうですか?と誘ってみたけれどサクッと断られてしまった。すこし肩を落とした真愛にしょうがないなあと笑った先輩が笑う。

「はい、これあげるから」

「?あ、飴だ。ありがとうございます!」

「ふふ。うん、じゃあまた月曜にね。お疲れ様」

「はーい。お疲れ様です」

 せっかくなので貰った飴を口の中で転がす。舌に広がるあまい味とふんわりと香る桃のにおいに俄然元気が出た。

「ふんふ~ん」

 明日は早起きしてお弁当でも作っちゃおうかな~。ベンチでひとりピクニックも楽しいかも。

 真愛はご機嫌に鼻歌なんて歌いながら職場を出た。


「…あの池って、最近周辺ごと整備されたんじゃなかったっけ」

 像なんかあったかな。


 早起きして今日のために引っ張り出してきたお弁当箱におにぎりと卵焼き、それから冷食をいくつかつめて準備万端。

 さっそくたどり着いた池の前で深く深呼吸をして、それからふちにそってゆっくりと歩く。新鮮な朝の空気が心地いい。

「像、像~っと」

 半周を過ぎると地面は整備されたコンクリートから固められた土になって、周囲は森というほどでもないけれど草木が生い茂っている。

 ざくざく踏みしめて進んでいくとすこし先に開けたスペース。真愛はきっとあそこに像があるに違いないと歩くペースを速めた。

「すご…」

 ついたスペースはぽっかりとまあるく草が刈り取られ、ガーデニング用らしい白のちいさなテーブルとイスが置かれている。その先にはアーチがあり、小さな道が奥に続いている。

「アリスみたい…!可愛い!」

 冒険心がくすぐられた真愛はお弁当の入った手提げをテーブルに置いて、アーチの先に行ってみることにした。

 少し行って戻ってきたら、ここでお弁当を食べようと決めて。


「あっ。ここかあ」

 身をかがめつつ通った小さな道の先にはSNSで見た通り、小さな天使像。

 体を伸ばしてから軽く服をはたいて、そして屈みこむ。

「天使様にお願い!まずは天使様の足元に屈むようにします。天使様を見下ろしちゃダメ!…よし」

 屈んだ後は、天使増を見上げて目を閉じる。そしておまじない。


「天使様、天使様、天使様」



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