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第六十三話 四人で練習

 よく晴れた土曜日。


 俺と恭介は近くの体育館へと足を運んでいた。澪と利奈さんはもうすでに着いたとさっき連絡があった。


 今日は四人で球技大会に向けて、バスケの練習をすることになっていた。今向かっている体育館は休日は一般開放していて、料金も200円とこの地域では利用する人も多いスポットだった。



「お疲れー」


「あっ、やっと来たー!」


 俺たちが体育館に足を踏み入れると、すでに二人は準備体操を始めていた。


「男子たちもちゃんと準備体操してね、今日はいっぱい動いてもらうから」


 利奈さんに言われて、俺たちも準備体操を始める。


 四人の実力としては、利奈さんが中学校までバスケ部だった経験者。他三人は体育でやったくらいだ。


 とは言っても、澪、恭介両名の類まれな身体能力とほぼ運動なんてしてない俺を同列で考えることはできない。


 とりあえず、ついていけるといいなぁ……



「じゃあ、まずはゆっくりドリブル練習から……といきたいんだけど、時間がないので、レイアップからいこうか」


「おっけ、じゃあまずはお手本お願いします」


 恭介からボールを受け取った利奈さんがゴールに向かってドリブルを始める。まるで手に張り付いているのではないかと思えるほどの隙のないドリブル。そのまま上手くスピードをコントロールしながら、最後の二歩で完璧にジャンプへと移行する。


 シュパッ!


 ボールは丁寧にバックボードに当てられ、ネットを通り抜ける小気味良い音が響く。


「さすが、経験者」


「まぁ、これくらいはみんなもすぐにできると思うけどね。じゃあ早速、皆さんの実力を見せてもらいましょうか」


 まずは澪からと、利奈さんが小さく背中を押した。


「よっしゃ、行くよー!」


 利奈さんよりも力強いという感想を与えるドリブルで、どんどんとゴールを迫る澪。少しだけ勢い余ったのか、ほとんどゴールすぐ右下でボールを浮かせる。


 ガンッ、カッ、スパッ。


 リングで2回跳ねたボールは最終的にはゴールを通過した。


「ふぅ〜、緊張したー!」


「澪、スピードちゃんとコントロールしないと。毎回手首だけで調整できる訳じゃないし、相手が来てたら今の入ってないよ?」


「くぅ、厳しい……」


 的確と問題点を指摘してくる利奈さん。怖い……。俺はもはや存在自体否定されるんじゃ……


「じゃあ次は恭介」


「はーい」


 間の抜けた返事とは裏腹に、ボールを手にとってすぐ、鋭いドリブルを開始した。素人目では、利奈さんと遜色ないように見える。


 ゆったりと、でも十分なスピードを持ってゴールへとドリブルをつき、恭介の体が宙を舞う。


 ――高い。


 もうすぐリングが届きそうな位置で、恭介はボールを置くように手から放す。


 シュッ……。


 利奈さんが腕を組んでその様子を見ている。


「恭介、本当に経験者じゃないんだよね?」


「うん、サッカーはちょっとかじってたけど」


 恭介の返答に利奈さんが分かりやすく顔をしかめる。


「とりあえず、恭介も教える側に回ってもらうわ」


「りょうかーい」


 結論。恭介はやはりすごくうまかった。



「ラストは富樫」


 さあ、回ってきてしまった俺の番。恭介のせいで上がりきったハードル。絶対に超えることができないので、もはやくぐり抜ける覚悟でいこう。


 乾いた革の冷たさが手に伝わってくる。一度床に跳ねさせたボールが手に戻ってくる。


「行くか……」


 自分でも不恰好だとわかる。まぁ、そりゃそうだよね。


 とりあえずゴール下までボールを運ぶ。恐る恐るすぎて見えない敵がいるのかと錯覚してしまったが、ここまで来ればあとは、運。


 見様見真似でボールを放り投げる。ボールはボードに当たって跳ね返る。が、リングの根本で跳ねるような形になり、もう一度ボールが宙に舞う。


 さらにリングの先端に当たったボールが真上に上がる。そしてそのまま……


 シュッパッ……


 入った。


 半分奇跡のような感覚だったが、振り返ると恭介が笑っていた。


「いや、お前、なんでそれで入るんだよ!」


「まぁ、たまたまかな」


 利奈さんが重々しく口を開く。


「まぁ、ツッコミたいとこは色々あるけど……とりあえず入ったからよしとするか」


 とりあえずのオッケー。もっとボロクソに言われると思ったので、ひとまず安心。


 ただ、このままじゃ絶対に実戦で役に立たない。なんなら足手まとい確定だ。


「じゃあここからは二人ずつで鍛えようか。一旦レイアップ。そのあとはドリブルとか適当にやってもらって、スリーとかゲーム展開とかは次にしよう。とりあえず基礎固めで」


 利奈さんと澪。恭介と俺。それぞれで分かれて練習に入る。


「よっしゃ、やるかー!」


「なんでお前の方がやる気あるんだよ」


 もう練習しなくても大丈夫判定をもらった恭介が、右、左、そして緩急を変えながらドリブルをついている。


 何かウザい……


 その後も恭介のアバウトな指示に従って何となくコツを掴めた、気がする。


 結局2時間近く続いた練習は俺の体力を全て奪っていった。なお、他三人はケロッとしてましたが……


 マジでバケモンだろこいつら。

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