第六十一話 球技大会種目決め
夏休みも明けて間もない9月中旬。大鷹学園1年C組では、約2週間後に迫った球技大会の種目決めが行われていた。
「えっとー、まずはソフトボールから――」
前の方に立っているのはクラス委員長の佐々木さん。いかにも真面目な感じという女子で、この学活の時間の進行を任されているみたいだ。
今回行われる競技は、バスケットボール、バレーボール、ソフトボール、卓球、バトミントン、サッカー、ハンドボール。基本的にはクラス対抗で、各学年内で順位を決めるらしい。
「はーい! ソフトボールやるー!」
元気よく手を挙げたのは澪だった。まぁ、経験者だって言ってたし、やりたいよなぁ。
一人2種目は担当しなければならないので、俺も早く決めなきゃな。
とは言ったものの、15年間ド陰キャ不健康引きこもり生活を敢行した方俺にとって、どの競技を選んでも地獄であることには変わりなかった。
周りに迷惑がかかりにくい個人種目か……いやでも、結局はクラス対抗なわけで。だったらチーム戦の方が責任は少ないか……
俺があーだこーだと考えている間にも、どんどんと枠が埋まっていった。
澪は本命ソフトボールと利奈さんに引っ張られてのバスケ。利奈さんは経験者ということもありバスケと、別の女子とコンビを組んでのバドミントン。そして恭介は……
「北原君。本当に3種目もやってもらっていいの?」
時間の関係上、ハンドボールの人はバスケットボールに出れないなどの制約が発生した結果、恭介が3種目出ることになったようだ。
サッカー、ソフトボール、バスケットボール。
ちなみに俺はやっぱり責任は少なく済むなら……と、ソフトボールとバスケットボールに出ることになった。恭介がいるだけで安心感抜群だ。
抜きん出た運動スキルとカリスマ的な精神的支柱。まさにチームスポーツには欠かせない要素を兼ね備えた究極の人間。それが俺の親友北原恭介である。
「全然大丈夫だよ」
恭介がいつも通りの爽やかな笑顔で答えた。さすがです。
佐々木さんの淀みのない進行により、パッパパッパと決まっていき、全員分の競技の振り分けが終わった。
大きなトラブルもなく、それぞれが好きな競技一つはやることができそうだ。
「よし、じゃあこんな感じで、それぞれの競技ごとに練習の時間をとって本番を迎えましょう!」
オー!と一応の盛り上がりを見せ、今日の種目決めは無事に終了した。
「圭ー! 球技大会もよろしくな!」
「恭介、お前はさすがだな」
「それは本番活躍してから言ってくれよ」
ごもっともです。それでも恭介が同じチームというだけで本当に心強い。
「ねぇ、練習どうする?」
「あー、他の人次第かな」
「さっきみんなに聞いてみたんだけど、とりあえずは各自練習でいいんじゃないかって」
さすが恭介、仕事が早い。
「それで圭、ソフトとかバスケの経験は?」
「もちろんないですが……」
「じゃあ、一緒にやろっか」
「よろしくお願いします、師匠!」
「師匠、か。まぁ、俺も経験者ではないんだけどさ」
それでも、文武両道の化身みたいな恭介のことだ。そこらへんのちょっとかじったくらいのやつとは張り合えるだろう。
「まぁ、頑張ろうぜ!」
パシンと、手と手がぶつかる乾いた音が響く。なんか青春だなぁ。
こんなに学校生活を楽しめるなんて、春には思ってもみなかった。それでも、最強の親友と最高の彼女に恵まれて、今は最高に楽しい!
「ねぇ、その練習まーぜーて!」
ガシッと肩を掴んできたのは澪だった。
「私たち四人、全員バスケ出るじゃん。だから一緒にやらない?」
「あっ、確かに! いいね!」
「じゃあさ、日程決めちゃおうよ!」
ポンポンと目の前で会話が進んでいく。
「……富樫、なんかムカつくんだけど」
隣でこのやりとりを見ていた利奈さんがぼそっと呟いた。
「恭介、なんか私といる時よりも楽しそー」
席も隣同士になった澪と恭介。利奈さんから見たら、ちょっと不安になるのも、分かる、気がする。
「大丈夫だよ。恭介こないだもウチで散々惚気てたからさ。例えば――」
「けーいー?」
「あっ、すいません」
気がついたら後ろに恭介が仁王立ちしていた。
「ほら、帰るぞ」
「はい」
ウチの恭介君は怒らすと怖い。とりあえず利奈さんはご機嫌になったみたいで良かったです。
「澪、また明日ね」
「うん。明日は圭の家行ってもいい?」
「うん、いいよ!」
澪がウチに来るのも結構久しぶりだな。最近はバタバタしてて、俺が相楽家にお邪魔することはちょくちょくあったけど、ウチに来る機会はあまりなかった。
「やった! 楽しみー!」
「なぁ、恭介。利奈さんのこと好き?」
「当たり前だろ」
「じゃあさ、もっとちゃんと伝えてあげないと。恭介自身も色々大変だろうけど」
ちょっと言いずらいことだけど、利奈さんの方がもっと言いずらいだろう。余計なお世話ならそれで結構だ。
「うん、圭の言う通りだよな。俺も初めての彼女でどうしたらいいか分からなくてさ」
こんだけハイスペックなのに初心すぎますよ?
「圭、どうしたら好きって伝わるかな?」
「うーん、普通に言うかな?」
「恥ずかしくないの?」
「特には。確実に伝わるし、一番楽かな」
「……圭先生。さすがバカップルです」
褒められてる気がしないんですけど……?




