第五十三話 新学期スタート!
残暑。そんな言葉が似合わないくらいに、まだまだ暑い日が続いている。
さて、夏休みも明け、今日からまた学校が始まる。宿題は勉強会のおかげで余裕を持って終えることができた。
この夏休みは俺の今までの人生の中で一番濃いものだった。だからこそ、とてつもないスピードで過ぎていった気がする。
朝の準備を終え、俺は隣の北原家のインターホンを押す。
「おっ、おはよう、圭君」
「徹さん、おはようございます」
予想通り、恭介はまだ起きていなかった。この時間に恭介を起こしにくるのも久しぶりだな……
「今日から学校だよね。いやー、学生は大変だなぁ」
「徹さんこそ、相変わらずお仕事忙しいみたいで……」
「そうだねぇ。大人は夏休みなんてないからね。秀一さんと真紀さんも忙しかったんじゃない?」
「そうですね。家にいないことの方が多かった気がします」
「だよね。また昔みたいに一緒にご飯食べたりしたいなぁ……」
俺が中学に入ったくらいまでは、一緒に定期的に夕食を食べたり、夏にはバーベキューをしたりしていたのだが、なかなか都合が合わなくなって、そんな機会も減っていた。
どこかで徹さんも寂しく感じていたのかもしれない。
徹さんが淹れてくれたコーヒーをすすりながら、恭介の準備が終わるのを待つ。
「じゃあ先に出るから、恭介をよろしく頼むね」
「はい、いってらっしゃい」
足早に仕事へ向かっていく徹さんを見送っていると、丁度恭介も準備を終えたようだ。
「お待たせっ! じゃあ行こうか」
久しぶりの通学路は、強い日差しに照らされていた。
「まだまだ暑いな」
「本当にな。もう9月だっていうのに」
記録的な猛暑と叫ばれるこの暑さは、俺たちにも平等に注がれている。もはや秋なんて概念がなくなりそうな勢いだ。もう三季なんじゃないか?
とまぁ、どうでも良いことを考えながら、学校までの歩みを進める。
「あっ、圭、恭介君!」
教室に入った俺たちを、澪がいつも通りの明るい笑顔で出迎えてくれる。
「恭介、ちゃんと起きれた?」
新学期早々、恭介を甘やかしている利奈さんを横目に俺たちは、一つの約束を果たそうとしていた。
「圭、もちろん覚えてるよね」
「分かってるよ、澪」
学校でも呼び捨てにしようという夏休みに交わした約束も、いざ実際に言ってみると恥ずかしくなってくる……
「そんなに恥ずかしい?」
「うーん、だって誰かに聞かれたら……」
「大丈夫だって! みんな気にしてないよ!」
澪の言う通り、教室の中は久しぶりーだの、学校ダルいなどというありふれた会話で盛り上がっていた。
呼び捨てにするくらい、別におかしいことではないし、堂々としてれば良い。
朝イチで全校集会があり、校長先生のありがたい(いつも以上に長かったが……)お話を聞くことになったが、今日は授業がないので許してあげよう。
教室に戻ってくると、学活ということで珍しくスーツを着た森田先生が教卓の前に立つ。
「えー、まずはみんな久しぶり。夏休み楽しかったか?」
楽しかったという男子生徒の声が飛び交い、森田先生も満足げに笑っている。
「それなら良かった。これからの予定だが、今月には球技大会があるし、もちろん、考査だってすぐにやってくるぞ」
小さなブーイングが巻き起こるも、森田先生はどこ吹く風と話し続ける。
「まぁ、まだ夏休み気分が抜けてないやつも多いだろうが、まずは生活習慣を戻してこいよ。早寝早起き朝ごはん。これが一番大事だ」
THE・体育教師というようなお言葉を頂いて今日の学校は終了した。
「ねぇ、圭。この後家行っても良い?」
「いいけど……何するの?」
「うーん、分かんない!」
元気に答える澪。まぁ、理由なんか無くても良いか。
夏休み中はとりあえずどっちかの家で過ごすという日々を送っていたが、学校が始まってしまうと、気安く遊びに行ったりお泊まりしたり出来なくなるだろう。
だからこそ、こういう時間のある時は出来る限り二人で過ごしていたい……と思っていたのだが。
「ねぇ、二人とも! この後、圭の家集合ね!」
気がつくと、澪が恭介と利奈さんにも声をかけていた。俺の二人で過ごすという目論見は外れてしまったが、まぁ、いいか。楽しそうだし。
夏休みで、すっかり仲良し四人組+カップル二組となった俺たち四人。色んなところに行き、多くの時間を共にした。恭介、澪とはもちろんだが、利奈さんの新しい一面も知ることができた。
学校が始まってからも仲良く出来るといいな……
四人でワイワイと話しながら、ウチまでの道を歩いていく。
「ねぇ、球技大会何やる?」
「んー、何あるんだっけ?」
「去年はバスケ、バレー、卓球、サッカー、ソフトボールとか。結構色々あるって聞いてたけど」
球技大会とか運動会とかに楽しい思い出はない。元々運動は得意な方じゃないし。
「俺はサッカーかな。楽しそうだし」
「私はバスケ。中学までやってたからね」
恭介と利奈さんはすでにお目当ての競技があるようで。
「圭は?」
「俺は、何でもいいかな……」
自信なさげな俺の返事と共に、俺たちは富樫家に到着した。
気が進まない球技大会も間近に迫っているが、きっと楽しい日々になるのだろう。新学期のスタートを祝うように、朝よりも強い日差しが俺たちを包み込んでいた。
最後までお読みいただきありがとうございました!
本日より第二章を更新させて頂きます。不定期更新になると思いますが、もし良かったらチェックしていただけるとありがたいです。
これからも『クラスで一番かわいい同級生が俺の曲をおすすめしてきた』をよろしくお願いいたします。




