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第58話/幕間 キドとジャーナリズムと


 ───それは今よりしばらく前の出来事。


「リ、リンナちゃん足速すぎだろ……」


 サイクツ村から編集長宛に『金色の低質鉱石』を送ったあと、リンナちゃんの後を追ったはいいものの、行けども行けども姿は見えず。

 ようやくウエストタウンにたどり着いた時に聞こえてきたのは『なんなんだあの魔女は!?』という居酒屋でやさぐれる捜索隊の愚痴だった。



「俺もね? 魔女を生け捕りとか無理だと思ってたんですよ? 口から火を噴くって言うし。それがなんですか!? 精鋭揃いなのに、素手のゴーレム相手に一瞬で全滅とか。しかもご丁寧に、全員ほぼ無傷で気絶させられてたという。そりゃ心を折られて逃げ出すヤツも出てきますよ!」


「そりゃ大変でしたね〜。あ、店員さん! この方におかわり!」


 ……とのことだ。


 逃げ出したヤツはもう放置して、残存戦力をもって再捜索……せずに一旦王都に帰還することにしたらしい。隊長も予想以上の『強さと気遣い』に戸惑っているので、一度お上の指示を仰ぐそうだ。道中の安全を考え、俺もしれっと同行させてもらうことにした。


 ………


「は?」


 王都に着いた俺達が聞かされたのは、これまたとんでもない話だった。


 前夜、猪のような勢いで王都の門に向かってきた『敵影』。それを食い止めようとした衛兵を手助けする『謎の男女』。しかし敵はあまりに強く、一撃で女は片腕を失う。かと思ったら、敵が女に抱きついて、そのまま男女と一緒に逃げ出したらしい。意味がわからない。


 ひとつ言えるのは『片腕を失いつつ、まったく出血の跡がない』女がリンナちゃんだろうということ。


 3人は最前線の方に駆けていったそうだ。リンナちゃんは最前線の先にある禁忌の地を目指していたはずだが、こんな早々に仲間連れ? 記憶もないのに? お、俺を置いてけぼりにしておいて〜。……と、私情はともかく、行き先はある程度絞り込める。リンナちゃんだけならともかく、他のヤツらは飲食が必要だろう。となると、最前線付近に点在する村のどこかに立ち寄るはず……よし、行動だ!




 と、いうことで『ゴミ捨て場(ダストタウン)』でリンナちゃん達に合流して現在。俺は彼らに仲間入り? し、飛行機を作る手伝いをしている。


 ……なんだこの状況? ジャーナリズムには客観性と公平性が必要だというのに、俺は私情にかられて入り込みすぎてはいないか?


 というか、笑う自律可動式人形(ゴーレム)に自称冒険者の暗殺者(アサシン)、リンナちゃんを作った(はぐれ)魔導技師に変な鎧(パワードスーツ)を着た異界の勇者様。更に王国一の治癒師(ヒーラー)を勧誘しようとしている連中の仲間になろうだなんて、今の俺には荷が重すぎた。


 ………


「いいのか?」と彼らを代表してカイが聞いてくる。コイツの腹の中は読めないが、一応は気にしてくれていると思おう。


「いいんだ。まぁそのうちまた合流するだろうけどな?」


「なら、また断るかもしれないけどな」


 カイが苦笑する。正直なヤツは嫌いじゃない。


「じゃあ、行ってこい! お前らの勇姿はしっかり記録して、いつか記事にさせてもらうぜ!」


「頼んだ、ブン屋さん」


「ではみんな、行きましょう! 魔導式飛行機、発進!」


 4人がエンジンに点火すると、低いうなり声を上げつつプロペラが回り、噴射口から魔力のようなものがドッと噴き出す。そして一定の高度まで浮上した彼らは、王都に向け連なって飛んでいった。鳥もビックリするようなスピードで。



 俺は一度頭を冷やして、少し距離を置いたところから彼らを観察し直したい。


 でも遠くない未来、腹をくくって覚悟を決めて、もう一度仲間に加えてもらえるようにアタックしてやる。



 なぜなら。


 俺の名前はキド!


 王都新聞の記者にして、未来の一流ジャーナリストだからだっ!!




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