第59話 暴れん坊聖女
「お、落ちるうううう〜〜〜?」
「カイ、慌てずに緊急パラシュートボタンを押してください!」
「お、おう!……うわっ!?」
途端にカイ機からプロペラの羽根がはずれ落下し、後に残る回転部中心からパラシュートが飛び出す。急降下していた機体はそれにより『ガクン』と動きを止め、ゆっくりと降下し始める。
「し、死ぬかと思った……」
「万が一には備えているからね。僕に抜かりはないよ」
「抜かりがないならそもそも故障させんなよ!!」
「無理だね。故障しうる前提でのパラシュートだ」
「い、言ってる意味がわからない……と、とにかく、生きててよかった……」
王都間近の草原に不時着した一同は、小川の近くで休息中だ。ソラは、ノダやカオルがいた世界で言うところの『マーフィーの法則』に備えていたのだが、突然の機械の故障が原因で命の危険を感じたカイにしてみれば、そんなことはどうでもよかった。
「それで? この飛行機はどうするんだ?」
「残念だけど、プロペラも捨てたし、もう使えない。解体して王都で売却しよう」
「他の飛行機は?」
「最寄りの森に隠して、王都までは徒歩で行こう。カイとリンナはカツラを忘れないようにね」
王都。教会前。
見れば、たむろする男達がシスターから注意を受けているようだ。
「皆さん、教会は悩み迷える全ての者達に解放されている場所です。とはいえ、いつまでも入り口を塞ぐように集まられていては、新たに訪れる悩み迷える者達が門を叩きづらいことでしょう。どうか、そろそろ移動しては頂けないでしょうか?」
シスターが男達に優しく語りかける。
「そ、そんなこと言わないでくれよ! 俺達は聖女様見たさにはるばる遠くから来たんだぞ! 仕事の邪魔してるワケじゃないし、もうしばらくここにいてもいいじゃねえか!!」
「なんだよ!? 噂の聖女様も心が狭いな〜! ガッカリだぜ!!」
「「「そうだそうだ!」」」
どうやらシスター=聖女リクを目当てに遠方から来たファン達の対応に困っているようだ。リンナ一行がシスターを助勢しようと思ったところ。
「ギャーギャーギャーギャーうるせぇな!? ここは本当に困ってる人達のための場所だって言ってんだろが!? お前ら、聖女様を信仰するならその辺もしっかり理解して来やがれ!!」
シスターがキレていた。
「せ、聖女様……?」
「大体、どいつもこいつも聖女聖女って人を天使みたいに呼びやがって! オレはそんなもんになったつもりはねーよっ!」
「オ、オレ……!?」
「今も昔もオレはオレだっ! 文句あるか!?」
「あ、いや……あれ? 聖女様ってこんなキャラなの?」
「お前らも聖女見たさにここまで来たんなら、ずっと突っ立ってくっちゃべってるだけじゃなくて、教会に寄付するなり手伝いするなり、せっかく来たなら何かして帰れよっ!」
聖女のイメージと現実のギャップでファン達に動揺が広がる中。
「こらっ! リクッ!!」
「ゲッ! 神父様ッ!?」
「お前はまた乱暴な言葉遣いをしおって!!」
「そんなこと言ってもよぉー?」
「だまらっしゃいっ!!」
「うへぇっ!?」
……神父による公開説教が終わった後、ファン達は『聖女様の言うことももっともだ』と神父の指示をあおいで教会の手伝いを始め、リクは懐かしい面々との再会を喜んでいた。
「なっつかしいなーっ!? 10年ぶりかぁ!? カイもこんなにおっきくなって!!」
「あの〜……ねーちゃん? 手紙の印象と全然違うんだけど……」
「ああ、手紙や文章は丁寧に書けって神父様に散々説教され続けてきたからな。ビジネスマナーってトコだ」
唖然とするカイ。やれやれと言った風なソラとカオル。
「久しぶりだな、リンナ。禁忌の地はどうだった?」
[え……?]
「ん? 神父様が言ってた場所に行ったんだろ? まぁ、無事みたいで良かったけど」
「リク、リンナは一部記憶が欠けているんだ。前にリンナと会った時に何があったか、教えてくれないか?」
ソラが横から助け舟をだすと、戸惑いつつもリクは語り出した。




