第57話 完成と試験飛行と
……僕はノダを尊敬している。それは、ただ単に『この世界にはない異界の知識に詳しいから』ではない。彼は実質、リンナ以外に何も持たずこの世界にやってきた。そして、この世界で生きていくために必死で努力し、やがてそれは実を結んだ。更に彼は『この世界でしかできない夢』を持ち、その実現のために全力だった。もしノダが生きていたら、7年と言わずにもっと早くリンナを起動していたことだろう。そしてもっと沢山の発明をしていただろう。彼と一緒に飛行機を作りたかった。そして、みんなで大空を飛びたかった。
ノダはもういない。リンナは『ノダさんを生き返らせる』と意気込んでいるが、それがどういうことなのか、本当にわかっているのだろうか? 既にその肉体は火葬にされている以上、代替となる依代を用意して、そこに取り付けた遺骨を触媒に魂を呼び戻す……それが実質的にリンナと同じものとしての蘇生になることだと。
それでも、それがリンナの夢だと言うのならば最大限の助力をしよう。もしかするとその先に、また違った形の答えが見出せるかもしれないから。あるいは『リンナを負かした相手』こそ、真にノダを生き返らせる方法を知っているのかもしれないし。そんなものがあるとすればだが。
ノダにまた会えたらなんて言おうか。「おかえり」? ホント、なんて言おうかな。……よし、これで完成だ。
「出来た。これが個人用飛行機の試作型だ」
「これが飛行機か……」
「アタシが知ってるのとは大分違うけど、それが面白いわね」
「写真撮らなきゃ! ここにカメラはない!? ならスケッチしなくちゃ! これは特ダネの匂いがするぞ〜っ!?」
[これが……飛行機……!!]
【試作型個人用飛行機】
ソラ製作の飛行機。大小のプロペラと翼を持ち、その形状は個人用ヘリコプターに近いか。原動力は魔力充填式魔導機械を中心に、補助動力として搭乗者の魔力を併用し、メインエンジンから魔力を転換したエネルギーを噴出して推進力とする。なお、今回は試作型のため最低限の骨組みにコクピットを備え付けただけの簡易なデザインとなっている。
「じゃあ早速だが試験飛行と行こうか。カイ、頼んだ」
「え? 俺っ!?」
「僕よりも身のこなしが良さそうだからね」
「み、身のこなしならカオルに……」
「アタシはパス。あんまり機械は得意じゃないから」
[カイ、空の上からはどんな景色が見られるんだろうね〜?]
「く〜っ! 俺に運動神経があればな〜っ!?」
「お、お前ら……わかったよ」
全員の視線を一身に浴び、カイも渋々了承する。
「カイ、お守りだ」
「ああ、ありがとさん……ってコレ、ねーちゃんの写真じゃねーか! 持ってるよっ!!」
ソラに手渡されたリクの写真を『ペシンッ』とメンコのようにテーブルに叩きつけるカイ。
「カイのお姉さんの写真? どれどれ……ってコレ、聖女の写真じゃねーか! 冗談キツイぜ!」
[リクはカイのおねーさんだよ?]
「え? マジで? あの『聖女』の弟!?」
などと、キドとリンナの間ではお約束的なやり取りが繰り広げられる。
「ふーん。聖女の写真とか持ってたんだ。初めて聞いたわね。へぇ〜?」
「幼馴染ですからね。リンナと出会う前からの付き合いです」
[あたしとは動けるようになる前の付き合いだね〜]
睨むカオルに、涼しい顔で返すソラ。
そして。
「あー。ホントに飛んでるわねー」
[飛んでる! 飛んでるよ〜!!]
「す、すげえ! カメラがないのが惜しいぜ! これは歴史的瞬間だっ!!」
「か、か、風が気持ちいいけど着地がこええ〜〜〜!!」
「ノダ……遂に、空を飛ぶチャリを作りましたよ……」
───試験飛行は無事完了し、その後改めて人数分の飛行機を作り出すことになるのだった。




