第56話 ヒントと闖入者と
[とうっ! リンナちゃん、ふっかーーーつっ♪]
「良かったよおおおおお〜〜〜ぅ!!! ごめんねごめんねごめんねモガッ」
「で、これからみんなはどうするんですか? 『禁忌の地』へ直行?」
謝り続けるカオルの口を塞ぎつつ、ソラが尋ねる。特にリーダーはいないようだしと、とりあえず全員に聞く。
「当然! ……と言いたいが、正直不安だな」
カオルに瞬殺されかけたことといい、禁忌の地にいるリンナを負かした相手といい。カイにしても不安要素だらけだ。
「だったら、今はみんなで飛行機を作りませんか?」
「「[は?]」」
ソラいわく。飛行機が完成すれば、禁忌の地の最奥であろうとほぼ安全かつ高速で移動できるはず。ドラゴンなどは怖いが、激走するリンナが踏破できたことだし、不可能ではないはずだ。それに出発前にリクを勧誘しにいけば強力な治癒師が味方に付くし、話の流れではリク経由で王宮のバックアップも得られるかもしれない。
「王宮な〜。どうも胡散臭くて好きになれないんだよな〜」
「……アンタ誰?」
いつの間にいたのか、口を挟む男にギョッとする一同。
「ん? ソラかカオルの知り合いじゃねーの?」とはカイの弁。
「俺か? 俺の名前はキド! 王都新聞の記者にして、未来の一流ジャーナリストだっ!!」
[キドさん! 久しぶりだね〜♪]
「おうっ! やっと追いついたぜ! リンナちゃん!」
キドは一瞬だけその場の注目を集める。が。
「それで、王宮が味方にはならないとしても、話くらいはできると思うんです。なぜリンナを追うのか? わかっていた方がこちらも動きやすい」
「まぁな。話に聞いてる『モンド』とかいうヤベーヤツが出てきても、こっちにはカオルがいるし、そいつも王宮の手下ってワケじゃなさそうだしな」
「そうです。少なくとも20人はいると思われる『勇者』達が、常に王都に滞在して王宮の警備をしているとは思えない。精々が昼は兵士、夜間はゴーレム兵と言ったところでしょう」
ソラの返事にカイが頷く。カオルも異論はなさそうだ。
「その程度ならまぁ、派手なドンパチは回避できそうだな」
「飛行機があれば空に逃げられますしね」
「お前は結局空を飛びたいだけだよなっ!?」
「おーい、お兄さん方〜? 無視しないでくれよ〜」
キドは再び注目を集めるも、皆の視線は冷たい。
「アンタ、何? リンナちゃんの追っかけかなんか? 邪魔だから帰ってくれない?」
「敵意も力もなさそうだが、こっちも命懸けなんでね。あんまりウロチョロするようなら……」
「王都新聞は購読していますが、まだ飛行機は取材を受ける段階に至っていないのでお引き取りください」
けんもほろろであった。
「あ、う……確かに俺は戦力にはならない! だが王宮の不正と、リンナちゃんの戦いの『真実』を世間に知らしめる役割があるんだ! あんた達の仲間に入れてほしい!」
真剣な眼差しで叫ぶキド。
[キドさん……!]と感激するリンナ。
「仲間に、って言われても……足手まといはいらないんだが」
「うぐっ!?」
「僕達は今、空を飛ぶために忙しいんです。お引き取りを」
「そ、そらっ!? 知ってるぞ! はぐれ魔導技師の『ノダ』ッ!!」
「……」
トドメを刺そうとするソラに、ここぞとばかりに食らいつくキド。
「人間が空を飛ぶための乗り物を作ろうとして、出資を募るも笑い物にしかならず! それが原因で同業者に迷惑をかけたからと魔導技師ギルドから除名された! ……のは表向きの理由で、本当は時代を何年も先取りした技術を安価で世に広めようとして、ギルドから弾き出された『ノダ』……ってのは偽名で、本名はソラ! マイナ村の出身にして『勇者ノダの弟子』を自称する男! アンタが本人かっ!!」
「ただの記者だと思っていたら、そこまで知っていましたか」
「こ、これでも記者なもんでね。それに、あんたには言いたいことがあったんだ!」
「……なんですか?」
キドは手近にあった飛行機の設計図(没案)を見つけると「やっぱりそうだ!」と言い、
「あんたは『空を飛ぶには鳥やドラゴンの様な翼が必要』だとこだわりすぎてるんじゃないか? 要は空を飛べればいいんだろ? だったらカタチにこだわる必要ないんじゃないか? 例えば、大量の魔力を噴出させてその勢いで宙に浮くとか、動くとかさ!?」
「なぁ……っ!?」
ソラは驚愕の目でキドを見つめ、すぐに宣言する。
「みんな、1日だけ時間をください! 新しい設計図を用意してきます! そして明日から製作にとりかかりましょう!」
「……この記者さんはどうすんだ?」
「お茶でも出しといてください。ではっ!」
言うと、ソラは自室にこもってしまった。
「俺、なんかやっちゃいました?」
「……ああ、やってくれたみたいだな」
───こうして、望まれぬ闖入者が、なし崩し的に仲間に加わった。




