第51話 ゴミ捨て場とにおいと
夜が明け、3人で出発する。
行き先は最前線にほど近い『ダストタウン』だ。そこにソラの店があるという。
ダストタウン。
そこは『ゴミ捨て場』と揶揄されることもあり、王国の手が届かない治外法権とされる。そもそもの成り立ちが、最前線からの逃亡兵達が作った隠れ里だと言うのだから、さもありなん。
カイは「なぜソラはそんなところに店を?」との疑問を持ったが、ソラほどの異常すぎる凄腕ともなれば、村を出た後どこへ行っていたとしても疎まれるだけだったのだろう。恐らく魔導技師ギルドにも属していないのだろうし。田舎からポッと出の若年の超技術者など、既得権益を守るのに必死な連中には厄介者でしかないだろうから。最近、ギルドに属さない野良魔導技師達の活動が活発だと聞いたことを思い出し、そう思った。
当然のように『イーストタウン』は迂回する。マントに隠れているとはいえ、片腕のないゴーレムはあまりに特徴的すぎる。
「ところで気になってたんだけど、リンナちゃんってあんまり、においしないね」
「はっ!?」
[えぇっ!?]
リアルなラブドールはにおう。『シリコン臭』『TPE臭』と言ったものだ。経年で多少は落ち着くものの、完成したてのラブドールお迎え時などは、部屋が独特のゴム臭で満たされて難儀するものだ。特にTPEの臭いは強い。
「ま、まぁ魔術強化されてるからだろうな」
[に、におい……クンクン]
「大丈夫だよ。『におわない』って話だし」
[と、ところでカオルとソラってどんな関係だったの〜?]
リンナは話を変えようとカオルに聞く。もちろん悪気などない。
「どんな関係も何も、あのヘタレはただの家主でっ! アタシはその居候よっ! それ以上でも以下でもないわっ!!」
急に不機嫌になるカオル。……かと思うと、途端にニヤリとして。
「じゃあリンナちゃんとノダはどんな関係だったの?」
[ど、どんなも何も、ただの人形と所有者で……]
「ふーん? で、今はどう思ってんの? ノダのこと、意識してないわけじゃないよね?」
[え、あ、え? そ、それは……]
「カオル。知り合ったばかりなのにしつこくないか?」
今度はカイが不機嫌になる。しかしカオルはどこ吹く風で。
「アタシはさ、待ちに待ったドールちゃんのお迎え前日にこの世界に無理矢理呼ばれたのよ? リンナちゃんとノダの話を通して、擬似的にドールライフ気分を味わうくらい、許されると思うけどな〜?」
チラッチラッとリンナを見るカオル。カイはそっぽを向いている。
[あ、あたしの話で参考になるなら……]
そしてリンナは、たどたどしく語り出した。




