第50話 カオルとノダと
「ちょ、ちょっと待てよ! ノダは死んでるんだ。15年も前に!」
「だから、生きてるって言ってるでしょ? 大体15年前なら10歳じゃない。そんな歳でラブドールを持てるわけないでしょ」
「え?」
[え?]
「……え?」
確認したところ、カオルの言う『ノダ』は焦げ茶色の髪をした25歳位の優男だった。……思い当たるのは1人だけ。
[それ絶対にソラだよね!?]
「あの野郎……ずっと偽名使ってたのか。よしコロス」
「いや殺すな殺すな」
聞けば、カオルはソラの営む『ノダ魔導機械店』に転がり込んで以来、長期間に渡り同棲していたそうだ。
「つまりノダ……ソラ? なら、リンナちゃんを修理できるってこと?」
「ああ。リンナを動けるようにしたのはソラだからな」
「よかったよおおおおお〜〜〜!!! リンナちゃんホントにごめんねごめんねごめんね!!!」
もしリンナが人間だったら、あの場にいた全員殺されてたんだろうなーと思い、今更ながらゾッとするカイだった。
「もしかして……なんというか、その変わった鎧もソラが作ったのか?」
それは軽鎧のようなのだが、鈍色に光る流線型のデザインは露出部分が多く、明らかにカオルのプロポーションの良さを意識して作られたセクシーなものだ。同色のタイツの上から装着しているとはいえ、一言で言えば『ビキニアーマー』である。
「そう。あの変態、アタシに手を出せないヘタレの癖に、こんなもん作ってやがったの。なんでアタシにピッタリなのよ、あのムッツリスケベ!」
「た、確かに鎧というには露出が多すぎるな……」
「なんでも『カオルの野生的な身のこなしを考慮した結果です』らしいわよ? 実際、すごく動きやすいし、これパワードスーツだから、かなり役には立ってるんだけどね」
「それパワードスーツなのかよっ!?」
カイが絶叫するのも無理はない。どう見ても露出が多いスケベ仕様の軽鎧なのだ。通常、パワードスーツは機械的に人体を強化する仕様上、ボコボコやゴツゴツな無骨なデザインになりがちだし、シャープなデザインのものはその分バックパックが大型化している。しかし、これでカオルの尋常ではない強さの理由が分かった。
「ま、まあリンナを動かしたソラなら……そのくらい作れるか。ってことはその剣も!?」
「うん。ソラに持たされた。切れ味が鋭すぎるから気をつけろって言ってたね」
「あいつ、もうなんでもアリだな!?」
魔力強化している剣なら、普通のナイフでは相手にならないわけだ。こんな危ない女にそんな武器持たせるなよ、と心の中で毒づくカイ。
「じゃあ、夜が明けたらソラの所に行くってことでいいわね? もちろん嫌とは言わせないけど」
「ああ。何をさておいてもリンナの腕を直さないとな」
「……ふ〜ん? へぇ〜? なるほどねぇ〜?」
「な、なんだよ?」
「べっつにぃ〜? いいんじゃない? そういう愛の形があっても」
「ばっ! だ、誰がっ!?」
慌ててリンナを確認するカイ。そう言えばさっきからやけにリンナが静かだが、話について来られなかったのか?
「……寝てるわね」
「……寝てるな」
リンナは右腕がないことなど気にならないかのように、スヤスヤと眠っていた。




